テラーノベル
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その日一日、元貴は仕事中もどこかふわふわとした心地だった。
滉斗のぶかぶかだったTシャツの感触や、朝食を囲んだ温かい時間、そして連絡先を交換した時の滉斗の嬉しそうな顔が、何度も頭の中を駆け巡る。
(まさか、あんなことが起きるなんて…)
デスクワーク中、ふと顔を上げると、営業一部のフロアが視界の端に入る。
彼が同じ会社にいるという事実が、元貴の心をじんわりと温かくした。
一方。
滉斗もまた、仕事の合間にスマホをちらりと見ていた。
元貴の連絡先が登録された画面を見るたびに、自然と口元が緩んでしまう。
涼ちゃんにからかわれた頬の熱は、まだ少し残っている気がした。
(元貴さん、今頃仕事してるかな…)
定時を過ぎ、残業をする社員がちらほらといる中、元貴は早々に退社準備を始めた。もう終電で眠りこけるようなことは避けたい。
スマホを手に、エレベーターで1階まで降りる。その時、隣のエレベーターの中から滉斗が出てくる姿が見えた。
元貴は思わず立ち止まる。
「あ、滉斗さん!」
元貴が声をかけると、滉斗も驚いたように元貴を見た。
「元貴! お疲れ様。もう帰るのか?」
「はい、今日はもう限界で…滉斗さんもですか?」
「うん、俺も今日は早めに帰ろうかと。飯でもどう?」
滉斗の突然の誘いに、元貴は目を丸くした。
「えっ…!?」
「あ、もちろん、疲れてるなら無理しなくていいけど。昨日のお詫びに、ちゃんとしたご飯でも奢らせてほしいなって。」
滉斗は少し照れたように笑う。元貴は、その言葉に胸が高鳴るのを感じた。
「い、いえ!お詫びするのは僕の方で……。 ぜひ! ありがとうございます!」
元貴は、Tシャツを着た時のように頬を赤らめながらも、嬉しそうに頷いた。
会社の近くで晩御飯を済まし、二人は連れ立って駅へと向かう。昨日と同じ終電ではなく、まだ人の多い時間帯の駅だ。
「そういえば、あのTシャツ、どうしますか?」
元貴が遠慮がちに尋ねると、滉斗は楽しそうに笑った。
「ああ、あれね。別に返さなくてもいいよ。元貴が着てくれるなら、嬉しいし」
「えっ…でも…」
「…冗談だよ。でも、また今度、飯でも行こうよ。その時でいいから」
滉斗の言葉に、元貴はホッとしたような、少し残念なような複雑な表情を浮かべた。
駅の改札を通り、電車に乗り込む。
昨日とは違い、二人は隣同士に座り、他愛のない会話を交わした。
仕事の話、休日の過ごし方、好きな食べ物の話。共通点が多いことに驚き、笑い合う。
電車が最寄り駅に到着し、二人は並んで改札を出た。なんと家の最寄り駅まで一緒という共通点が見つかった。
「じゃあ、今日はありがとうございました。また明日、会社で」
元貴が頭を下げると、滉斗は優しく微笑んだ。
「うん、また明日。気を付けて帰ってね」
それぞれの家路につきながら、二人の心は、昨日とは違う温かさで満たされていた。
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本当にありがとうございます……2000て…すごい数ですよ😭😭
これからもよろしくお願いいたします🎶
コメント
4件
わー!!おめでとうございます‼️ これからも楽しみにしてます😽😽
えぇ!!すごいです!! ほんと尊敬しかないです! いつもこんな最高な作品書かれていて私ほんと毎回たのしみにしています!! これからも頑張ってください!