テラーノベル
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その日の夜、元貴はベッドに入ってもなかなか眠りにつけなかった。スマホを手に取り、滉斗の連絡先を開く。
まだ何もメッセージは送られてきていない。どうしようかと迷っていると、ピコン、と通知音が鳴った。
『今日はありがと!ゆっくり休んでね』
たった一言のメッセージだったが、元貴の心臓は大きく跳ねた。すぐに返信しようと指を動かす。
『こちらこそ、ありがとうございました。滉斗さんこそ、昨日ソファで寝てたのでゆっくり休んでください』
送信するとすぐに既読がつき、またすぐに返信が来た。
『ソファ、意外と快適だったよ笑 明日、会社で会えるの楽しみにしてる』
その言葉に、元貴の顔はカッと熱くなった。楽しみにしてる、なんて。まるで恋人同士みたいな会話だ。
元貴:僕も楽しみにしてます。
たった数文字の返信だが、元貴は精一杯の気持ちを込めた。
それからも何回かメッセージのやり取りが続き、他愛もない会話が深夜まで繰り広げられた。
疲労困憊だったはずなのに、不思議と眠気はなかった。
翌日からの会社での日々は、一変した。
今まで営業一部と二部は、部署は同じなもののフロアが違うので、ほとんど交流がなかった。
しかし、今は違う。すれ違うたびに、滉斗と元貴は自然と目が合い、軽く会釈を交わすようになった。
時には涼ちゃんも加わって、部署の垣根を越えた雑談が交わされることもあった。
ある日のランチタイム。
『元貴、今日一緒に飯行かない?』
滉斗からLINEが届いた。元貴は少し驚きながらも、すぐに返信した。
『はい! ぜひ!』
営業二部のフロアから、営業一部の滉斗の席まで向かう。滉斗はもうランチの準備を終えて待っていた。
「お疲れ様。行こっか」
二人は連会社の近くの定食屋へと向かった。
他部署の社員が、珍しそうに二人の後ろ姿を見ていたが、二人は気にする様子もなく、楽しそうに話しながら歩いた。
ランチ中も、二人の会話は尽きなかった。仕事の愚痴から、最近ハマっているゲームの話、休日の過ごし方まで。
元貴は、滉斗との会話がこんなにも楽しいものだとは、思ってもみなかった。
特に、滉斗が自分の話を真剣に聞いてくれて、時に鋭いツッコミを入れてくれるのが心地よかった。
「そういえば、今週末、何か予定ある?」
食後のコーヒーを飲みながら、滉斗が尋ねた。
「いえ、特に…」
元貴が答えると、滉斗は少し考えるような素振りを見せた。
「もしよかったらなんだけど、俺の家で映画とか見ない? この前、話題になってたやつ、配信始まったんだ」
滉斗の誘いに、元貴は心臓が大きく跳ねた。週末に、滉斗の家。それは、先日一泊したばかりの、あの部屋だ。
「えっ…」
「もちろん、無理にとは言わないけど。ただ…」
滉斗は少しだけ顔を近づけ、元貴の目を見つめた。
「元貴と、もう少しゆっくり話したいなって思って」
その一言に、元貴の顔はカッと熱くなった。滉斗の真剣な眼差しに、元貴は何も言えなくなる。断る理由など、どこにもなかった。
「…行きます…っ!」
元貴は精一杯の声を絞り出し、頷いた。
滉斗は嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔は、まるで幼い子供のように無邪気で、元貴の胸を締め付けた。
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このペア見てるだけでほっこりする