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「こんにちは…」
「蒼くんちょうどいいところに来てくれたっ!」
「えっ?なんですか?」
本部の扉(といっても壊れているから裏口)を開けたら、急にひらりさんが駆け寄ってきた。
「君の先輩が来てまーす。年も近いんじゃないかな」
「へぇ…?」
先輩?年の近い…?
なんかまたクズ系じゃないといいんだけど…
「えっと、初めまして。田中遥人、普通科です」
あ、なんか普通そうな人きた。安心。
「凪野蒼です」
「うん。よろしく…」
なんか普通すぎて反応に困るんですが…いやでも屑とか女好きとかじゃなくてよかった…
普通科の人は名前の通り普通なのかな…?
「よろしくやってくれたまえー!私は都月さんから新人教育の仕事をもらってるからね。あとは頼んだー」
「え…」
待って二人きりにしないで!!気まずいって!!
話すことないし、どんな人かよくわからないし…やばい人だったらどうしよう…
「凪野、でいい?」
「あ、はい」
「わかった。お前ってさ…この組織の人…特に教官達ってすごい個性的だと思わないか?」
「え?」
「いや、俺のいいたいことはな…」
「?」
急に何…?反応に困るんだけどぉぉ…
確かに個性的だとは思うけどさ。それ言っちゃう?
「だって掃除科さんはもうやばいし、拷問科さんはサイコパスだし、殺人科さんは近寄りがたいし…魔法科さんは無口だし、誘惑科さんはなんか…ちょっと…うん。普通科のひらりさんは普通っぽいんだけどねー…」
「めちゃくちゃ喋るんですね…」
いやまぁ、そんな感じは…ちょっとわかるけど。ちょっと何人か近くにいる人いるけど、まさか聞こえてないよね?
「だーれがやばいだってぇ?あぁ?」
「誰か近寄りがたいですって?」
「悪かったわねっ!」
「ごめんなさい。喋ることはめんどくさくて…」
「火炙りと水責めどっちがいい?」
ほらっ!!
でもトップの都月さんは何故か常識人(な気がする)なんだよなぁ…
どうしてだろう?
「あれ?そういえばトップの…なんだっけ?」
「都月さんのこと?」
「そうそう。教官の人には内緒で、もし侵入者が入った時のための訓練を、これからするって言ってなかったっけ?」
「え?そうなんですか?」
「うん。確かそのトップの人が侵入者のフリして入ってくるって…」
「え?」
「多分これぐらいの時間に…もうすぐ…」
そんな訓練するんだ…でもなんで教官達には内緒で?あ、後輩をどうやって守るかとか?そういう?
「彩、何してるの…?」
「え?岸、ターゲットがさぁ、カレーが好きとか言ってたからちょっと作る練習ーまた片付けよろしく。掃除科でしょ?」
「前にも言ったけどそういう意味の掃除じゃないんだよ…」
彩さんは岸さんと会話しながら大きな深い鍋の中に、切った食材を入れていく。
そしてぐつぐつと煮込んで…変なもの入れてるし…魔女の鍋だ…怖ぁ。
「なぁ…凪野。あれ、カレーを作ってるんだよな?」
「た、たぶんそうだと思いますけど…」
「ターゲットの人可哀想…」
「でももともと殺す人だから大丈夫なんじゃないですかね…」
これはちょっとターゲットの人可哀想。
次の瞬間。
『緊急!緊急!本部内に侵入者!!繰り返す!緊急!緊急!本部内に…』
「!!」
彩さんと岸さんがはっとする。すぐに二人は戦闘体制に。さすが。
「凪野、田中、一応防御魔法を張っていろ!!彩は火を切って…」
「もう切ってる!!彼岸花、リリー先輩は…」
「下を見てくるわ」
「了解!!」
彼岸花さんとリリーさんが階段を飛び降りる。物凄く判断が早い。さすが教官。でも都月さんが侵入者役なんでしょ?え?大丈夫かな…半殺しにされないといいけど。まぁ、トップだからなぁ…
「凪野くん後ろ!!」
いつの間に、後ろに侵入者…いや、都月さんが。
俺はすぐに離れる。で、次の瞬間…
「えーい!!」
「あーっ!!」
彩さんがカレーの入っている大きな鍋を侵入者に向かってばーんと…投げ…て…
見事侵入者に直撃。床はカレーまみれ。
都月さんどんまい…あれ火傷してないといいけど…
「あちち…彩、合格。だけど…このやり方はちょっと後始末が面倒かな…」
「嘘っ!都月様!?どうしよう…私…思いっきり投げちゃった!!」
「いや、いいんだよ、これ、訓練だし…教官たちの動きを見ていて、大丈夫だなと思ったよ。さすが。だから怒らないよ…う、うん…」
いやなんかすごい無理してる感じ…??
「いや、でも、なんとお詫びしたら…」
「都月さんが許しても私は許さないからね…これ片付けるの私なんだから!!」
「ごめーん」
「軽っ!」
「じゃあ訓練はこれにて終了。この片付けは彩と岸よろしく。あと彩は…」
「私?」
「こんど料理教室を開いて料理を教える必要がありそうだね…仕事に支障が出かねない…」
「えっ。でも、あのメイドも一緒ですかー…?」
「うん。たぶん」
メイド…?誰のことだろう。
「凪野。都月さんも大変なんだな…個性豊かすぎる教官たちに振り回されて」
「うん…」