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「…」
はぁ…うまくできない…
都月様に頼まれて強力な結界を張ろうとしているんだけど…なかなか上手くできなくて…
「せっかく役に立てると思っていたのに…」
魔法は私の得意分野なのに…
私は彼岸花。マジカルシークレット魔法科教官。その正体は、数十年前に悪魔に魂を捧げた人間の少女。その時のことなんて、私は全く覚えていないけれど。今は幽霊だし。
「過去のことを聞いても、彩様は教えてくれないし…」
どうしてだろう。あ、そうだ。
過去を見る魔法があったような。なかったような…
でも、やるしかない。私は詳しく知りたい。どうして魂を捧げようとしたのか、どんな願いと引き換えに…
「えいっ!」
今から数十年前。
「はぁ…今日全然大野くんと話せなかった…」
私は女子高生。同じクラスの大野くんに恋をしています。すごい一方的な片思いだけど…
第一私は地味だし可愛くないし無口だし…目立たないし。きっと大野くんの眼中にも入ってないんだろうな。
「こんなに好きなのに…どうして…」
それに、大野くんの近くには、可愛い子…梅沢さんがいるし。きっと大野くんも、梅沢さんみたいな人が好きなんだろうな。
「ねぇ。あなた。今恋をしているわね」
「えっ」
誰?
と、後ろを振り向いたら、紫色の長い髪で、瞳が赤い女の子がいた。とても綺麗だ。怪しい雰囲気も纏っている気がする。
きっとモテるんだろうな…
「私の質問に答えてくれないかしら」
「えっ、あ…まぁ、はい。恋してますけど」
「私がその恋を助けてあげるって言ってんの。あなたこのままだと告白もせずに終わるわよ、この恋」
「べっ、別に…今は大野くんを見てるだけでいいもん…」
「そんなんだと、時間ばかり過ぎていくわよ。その大野って子だって、彼女できるかも。いいの?」
「そ、それは…」
ちょっと…嫌だなぁ。
「私は甘愛彩。悪魔よ。あなたが私に魂をくれるんだったら、私はあなたの恋を応援してあげる。絶対叶うわ」
「え…」
魂を、わたす…?
それって死ぬってことだよね?じゃあこの恋が実っても意味ないんじゃ…
「まぁ時間はたっぷりあげるわ。そうね…明日、またこの時間にここへくるわ。その時返事聞かせて。じゃ」
「…」
行っちゃった…
え?さっきの人、悪魔だったんだ…そういえばなんだか、聞いたことがある気がする。
この世には、魔法を使えない『こちら側』と魔法の使える『あちら側』の人がいるって…
あの人はあちら側の人なのかな…?
「…どうしたらいいのよ…もう…」
そりゃあ、この恋が実ってほしい。でも、死ぬのはやだ…
「ねぇ大野ぉ〜、今日の放課後空いてる?」
「え?梅沢、何急に」
「別に〜?用事ないならさ、放課後校舎裏来てくれないかな…?」
「え?」
え?これってもしや梅沢さん、大野くんに告白しようとしてる…?
「別に今日は部活もないし…いいよ?」
えっ。
「まじ?じゃ、そゆことで」
ど、どうしよう…
このまま梅沢さんが告白して、大野くんと付き合っちゃったら…
私知勝ち目は完全になくなる…なんて。
見にいくしかないっ!!
放課後。
「どう?決心ついた?」
「えっ、昨日の…」
いつのまに…
「わかってるかもだけど、あの子、大野って子に告白する気だよ。いいの?」
「嫌だよ、嫌だけど…」
「臆することはないのよ。さぁ、どうしたいの?」
私は…
「大野くんと付き合いたい!この恋が叶ってほしい!!」
「交渉成立ね。じゃあ、ここで一緒に見てましょう」
「う、うん…」
どうしよう、私、悪魔に魂を…
いいや、これでいい!私は大野くんと付き合いたい…たとえ命に変えてでも…!!
「用事って何?」
きたっ!
「あのさ、私…ずっと、大野のことが好きだったの!!」
わっ。
「…付き合って、くれないかな…?」
沈黙。
「…ごめん」
「…だよね。ありがと」
そう言い残し、梅沢さんは走ってどこかへ行った。泣いているようだ。ごめんね。
「あ、えっと…」
「あっ!ごめん大野くん、ずっと見てて…あの、私…」
「…」
「ずっと大野くんのことが好きだったの…」
「え…じ、実は俺も…」
嘘っ!り、両片思いだったってこと!?
まるで夢のようだ。嬉しい。すごく嬉しい。
それから私と大野くんは付き合うことになった。とても幸せだった。
あの日が来るまでは。
「屋上で食べるお弁当最高ー。風も涼しくていいなぁ…」
「そうだね。たまにはいいかも」
私は屋上で大野くんとお弁当を食べていた。幸せだなぁ…
「あっ!」
お弁当を包んでいた布が飛んだ。やばい…っ!
「まって…って、きゃっ!」
どうしよう、屋上から落ち…
「あなたの魂、貰っていくわね。ありがと、短い間だったけど、楽しませてもらったわ」
「あ、あなたは…!!」
嫌だ。死にたくない。嫌だ…!!
「駄目よ。約束を破られたら困るわ。さぁ…」
嫌!!
それで、意識は途絶えた。
「…」
初めて知った。ずっと忘れてたんだ。
私はしばらくぼーっとしていた。
この後に起こることを、何も考えずに。