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マジカルシークレット

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マジカルシークレット

21 - 第21話 忘れていた記憶

♥

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2024年09月08日

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「…」

はぁ…うまくできない…

都月様に頼まれて強力な結界を張ろうとしているんだけど…なかなか上手くできなくて…

「せっかく役に立てると思っていたのに…」

魔法は私の得意分野なのに…

私は彼岸花。マジカルシークレット魔法科教官。その正体は、数十年前に悪魔に魂を捧げた人間の少女。その時のことなんて、私は全く覚えていないけれど。今は幽霊だし。

「過去のことを聞いても、彩様は教えてくれないし…」

どうしてだろう。あ、そうだ。

過去を見る魔法があったような。なかったような…

でも、やるしかない。私は詳しく知りたい。どうして魂を捧げようとしたのか、どんな願いと引き換えに…

「えいっ!」


今から数十年前。

「はぁ…今日全然大野くんと話せなかった…」

私は女子高生。同じクラスの大野くんに恋をしています。すごい一方的な片思いだけど…

第一私は地味だし可愛くないし無口だし…目立たないし。きっと大野くんの眼中にも入ってないんだろうな。

「こんなに好きなのに…どうして…」

それに、大野くんの近くには、可愛い子…梅沢さんがいるし。きっと大野くんも、梅沢さんみたいな人が好きなんだろうな。

「ねぇ。あなた。今恋をしているわね」

「えっ」

誰?

と、後ろを振り向いたら、紫色の長い髪で、瞳が赤い女の子がいた。とても綺麗だ。怪しい雰囲気も纏っている気がする。

きっとモテるんだろうな…

「私の質問に答えてくれないかしら」

「えっ、あ…まぁ、はい。恋してますけど」

「私がその恋を助けてあげるって言ってんの。あなたこのままだと告白もせずに終わるわよ、この恋」

「べっ、別に…今は大野くんを見てるだけでいいもん…」

「そんなんだと、時間ばかり過ぎていくわよ。その大野って子だって、彼女できるかも。いいの?」

「そ、それは…」

ちょっと…嫌だなぁ。

「私は甘愛彩。悪魔よ。あなたが私に魂をくれるんだったら、私はあなたの恋を応援してあげる。絶対叶うわ」

「え…」

魂を、わたす…?

それって死ぬってことだよね?じゃあこの恋が実っても意味ないんじゃ…

「まぁ時間はたっぷりあげるわ。そうね…明日、またこの時間にここへくるわ。その時返事聞かせて。じゃ」

「…」

行っちゃった…

え?さっきの人、悪魔だったんだ…そういえばなんだか、聞いたことがある気がする。

この世には、魔法を使えない『こちら側』と魔法の使える『あちら側』の人がいるって…

あの人はあちら側の人なのかな…?

「…どうしたらいいのよ…もう…」

そりゃあ、この恋が実ってほしい。でも、死ぬのはやだ…


「ねぇ大野ぉ〜、今日の放課後空いてる?」

「え?梅沢、何急に」

「別に〜?用事ないならさ、放課後校舎裏来てくれないかな…?」

「え?」

え?これってもしや梅沢さん、大野くんに告白しようとしてる…?

「別に今日は部活もないし…いいよ?」

えっ。

「まじ?じゃ、そゆことで」

ど、どうしよう…

このまま梅沢さんが告白して、大野くんと付き合っちゃったら…

私知勝ち目は完全になくなる…なんて。

見にいくしかないっ!!


放課後。

「どう?決心ついた?」

「えっ、昨日の…」

いつのまに…

「わかってるかもだけど、あの子、大野って子に告白する気だよ。いいの?」

「嫌だよ、嫌だけど…」

「臆することはないのよ。さぁ、どうしたいの?」

私は…

「大野くんと付き合いたい!この恋が叶ってほしい!!」

「交渉成立ね。じゃあ、ここで一緒に見てましょう」

「う、うん…」

どうしよう、私、悪魔に魂を…

いいや、これでいい!私は大野くんと付き合いたい…たとえ命に変えてでも…!!

「用事って何?」

きたっ!

「あのさ、私…ずっと、大野のことが好きだったの!!」

わっ。

「…付き合って、くれないかな…?」

沈黙。

「…ごめん」

「…だよね。ありがと」

そう言い残し、梅沢さんは走ってどこかへ行った。泣いているようだ。ごめんね。

「あ、えっと…」

「あっ!ごめん大野くん、ずっと見てて…あの、私…」

「…」

「ずっと大野くんのことが好きだったの…」

「え…じ、実は俺も…」

嘘っ!り、両片思いだったってこと!?

まるで夢のようだ。嬉しい。すごく嬉しい。

それから私と大野くんは付き合うことになった。とても幸せだった。

あの日が来るまでは。

「屋上で食べるお弁当最高ー。風も涼しくていいなぁ…」

「そうだね。たまにはいいかも」

私は屋上で大野くんとお弁当を食べていた。幸せだなぁ…

「あっ!」

お弁当を包んでいた布が飛んだ。やばい…っ!

「まって…って、きゃっ!」

どうしよう、屋上から落ち…

「あなたの魂、貰っていくわね。ありがと、短い間だったけど、楽しませてもらったわ」

「あ、あなたは…!!」

嫌だ。死にたくない。嫌だ…!!

「駄目よ。約束を破られたら困るわ。さぁ…」

嫌!!


それで、意識は途絶えた。


「…」

初めて知った。ずっと忘れてたんだ。

私はしばらくぼーっとしていた。

この後に起こることを、何も考えずに。

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