あれは、俺がまだ小さかった頃。お盆に従兄弟や親戚がみんな家に集まって、焼肉をしていた時だった。
俺は当時まだ幼くて、年上の従兄弟たちと夕飯まで外で走り回って遊んでいたから、すごく腹が減っていて、目の前の肉を食いたくて仕方がなかった。
生肉だということなど全く気にせず、俺は無心で目の前にあった変な色をした肉にかぶりついた。
そのときだ。
「蒼!!何してるんだ!」
いつもはあんなに優しくてニコニコしているおじいちゃんが、珍しく血相を変えて俺を怒鳴った。びくっと驚いた俺は、咄嗟にごくんと肉を飲み込む。
「ごめんなさ…」
「飲み込んだのか!?あの肉を!!」
そのあとは、もう何も覚えていない。
思えば俺はそのあと、インフルエンザが流行して家族全員がインフルエンザになっても、俺は全く具合が悪くなく元気なままだった。それに、一度交通事故に遭って本当なら骨折をしていたはずなのに、轢かれたあとすぐに立ち上がって走れた。
あの肉を食べた後から俺は、確実におかしいほど体が頑丈になっていた。
やっぱりあの時俺が食べたのは…
「俺の話を聞いて、何か思い出したか?」
「…!」
「俺たちは永遠に死ぬことができない。この世界で2人ぼっちだ。だから俺はこの作戦を考えた」
「え?」
「俺の能力は影と闇を操るものだ。俺たちは、永遠に殺し合おう。どんなに怪我をしても、すぐ治る。死ぬことはない。なら戦わないのは勿体なくないか?」
「何を言ってるんだ?」
「そうか。理解が追いつかないか。なら…」
彼が何かをしようとした。
俺は彼が持っていた分厚い本を奪い取り、咄嗟に頭を狙ってー…
「待てお前!その本はー…」
「この本がなんだっていうんだ!みんなを元に戻…」
「その本は、禁忌魔法が載っているんだ!!その内容の中には、不老不死の者だけが使える、魔法が載って…」
「興味無…」
「蘇生魔法、強力な治癒魔法…種類は様々だが、それは医者から奪い取った…」
「蘇生魔法!?」
蘇生魔法…?それなら、みんなを生き返らせることができるんじゃないのか?!
「その魔法なら、みんなを生き返らせることができるのか…?」
「この地球全体か…?可能だが、それを使ってどうするつもりだ?」
「当たり前だろう。みんなを生き返らせるんだ」
「馬鹿!その魔法を使えば、お前の不老不死の力は無くなるんだ!ちゃんと読め!」
「別にそれでも良いんだ。俺は、永遠の時をたった1人で過ごしたいわけじゃ無いし。このままの世界は、嫌だ」
「力がなくなれば、病に倒れることになるかもしれない、死んでしまうんだぞ!それでもいいのか!」
「俺は人間だ。それでいいんだ」
そう。それでいい。
いっそ、知らなかった方が良かったかもしれない。でも、知らなかったままなら、50年後ぐらいにわかるんだろう。歳を取らないことに疑問を持った未来の俺が。
なら、この力は今使う。それしかない!!
「呪文はー…」
「待て!よく見てみろ!注意書きを…」
「え?」
『ここから先に載っている、不老不死のみが扱える魔法の副作用
・不老不死の能力は、こちらに記載されている魔法の1つを使えば消えます。
・不老不死の能力の他には、もうこちらの魔法を使われた方は二度と魔法を使えなくなります。
・他にも、こちらの魔法を使うと、どんな副作用が起こるかこちらも把握しておりません。
くれぐれも、自己責任で。』
「…」
「お前がこの魔法を使えば、お前は二度と魔法を使えなくなり、どんな副作用がまっているか分からない。それでもいいのか」
「あなたは、俺にこの魔法を使って欲しく無いんですか?」
「勿論だ。それを使えば、マジカルシークレットの奴が生き返るだろう」
「でも、あなたの部下も全員死んでます。何も感じないんですか…?自分が殺したようなものなのに…」
「ああ。俺はあいつらのことを、使い捨ての駒のようにしか思っていないからな」
「酷い…そんな…」
「あいつ…都月は違うかもしれないが。あいつは生まれた時から特別で、種族も違い、強く、優しく…俺なんかとは正反対のやつだ…だから嫌なんだよ!全てが恵まれている都月が!!」
「…わかりました。じゃあ、こうします」
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