テラーノベル
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ーー正常値、異常なし。
白い。
何度見返しても、この研究所は白い。
床も、壁も、天井も。
汚れが存在してはいけない場所みたいに、
全てが均一で、無機質だった。
mm 》 慣れれば、平気になりますよ。
そう言って笑ったのは、
長い髪を靡かせながら歩いてきた、
めめんともりさんだった。
落ち着いた声。理屈の通った説明。
ここが 「 正しい場所 」 だと
疑わせない話し方。
mm 》 此処は研究所です。
》 被験体は居ませんけどね。
》 でも、私たちは管理する側なので。
その言葉を、誰一人として
否定することはできなかった。
廊下を歩くと、ガラス越しに
いくつもの部屋が見える。
監査室では、レイマリさんが
モニターを睨んでいた。
映像の切り替えが、やけに早い。
sr 》 ・・今の見ました?
mz 》 何がですか?
聞き返すと、彼は一瞬だけ黙って、
sr 》 気の所為です。
とだけ言った。
医療区画では、薬品棚の前に立つ、
一つの影があった。
lt 》 処方量・・本当にこれであってる・・?
それは誰に向けた言葉でも無い。
それでも、手だけは止まらなかった。
記録室に戻ると、机の上には
新品のノートが置かれていた。
目を凝らして見ると、
表紙に何か書いてある事に気がついた。
【 監視ログ:No.07 】
mz 》 番号で呼ばれるのって、
》 なんか変な感じですよね・・。
ie 》 まぁ管理する分には
》 その方が楽なんじゃ無いですか・・?
まぁそれはそうか、と納得してしまう
自分が何処かに居た。
休憩スペースで、足を止める人影があった。
tyk 》 ねぇ、
小さく手を振って、近づいてくる。
この研究所では、浮いてしまうほど
柔らかい表情だった。
tyk 》 妹ね、外で待ってるんだって、
》 “ すぐ帰ってきてね ” って。
「 外 」 。
その言葉が、頭の中で引っ掛かる。
lk 》 面会の予定、今日ありましたっけ?
一瞬だけ、視界が揺れた。
tyk 》 無いので、大丈夫です!
その言葉を、此処では信じてはいけない。
此処では外部の接触は許されていない、という
暗黙のルールがあるらしい。
誰が言い始めたかなんて知らないが。
夜。研究所は、昼よりも静かだ。
研究室でログをまとめていると、
モニターの表示が一つ、
欠けていることに気がついた。
《 面会区画B : ーー 》
ログを開く。
| 面会対象 : 菓子
| 状態 :入室
| 同席者 :
その瞬間、背後で電子音が聞こえた。
mz 》 ・・ロック?
扉が、内側から施錠されていた。
モニターが自動で切り替わる。
面会区画B。
白い部屋、椅子が二つ。
一つには、小さな影。
足が床に届いていない。
もう一つは空席。
・・いや、
椅子の下に、立っている陰。
画面の端に、数値。
【 情緒反応値 : 急上昇 】
インカムが鳴る。
up 》 観測者、応答してください。
mz 》 今、面会区画Bが・・
up 》 ロックは解除出来ません。
up 》 手動操作も無効です。
mz 》 どういう事ですか・・。
少し空いて、声が返る。
up 》 研究責任者の許可が必要です。
mz 》 研究責任者・・?
それ以降、返答はなかった。
机に戻ると、
ノートの最後のページが開いていた。
自分の字で、書いた記憶がない一文。
| 本日、被験体の状態は安定している。
その下に、赤いスタンプ。
《 観測継続 》
インクは、まだ乾いていない。
何処か遠くで、短い警報音。
誰かの名前が呼ばれる。
・・名前は、ノイズで聞き取れない。
でも、何故かわかった。
此処には、いないはずの被験体が居る。
それも一人じゃない。
研究はもう、始まっている。
next → 気まぐれ 。
フォローして待っててね。(?)
コメント
4件
初コメ失礼します !! 書き方の上手さと日本語力の高さに目を惹かれました🤚🏻 見るからに神作のオーラ纏ってますね…👀✨️ 愛読 & fw失です🙌🏻🌷