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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第七十七話 新しい挑戦
写真展が終わってから、数日が経った。
湊の中には、今までとは少し違う気持ちが生まれていた。
自分の写真を誰かに見てもらう。
その経験が、思っていた以上に大きかった。
展示された写真の前で立ち止まってくれた人。
じっと写真を見つめていた人。
小さな声で感想を話していた人。
直接言葉を交わしたわけではない。
それでも、自分の写真が
誰かの時間の中に入っていったような気がした。
大学の講義が終わったあと。
湊はいつものようにカメラを持って街を歩いていた。
ふと、駅前で小さなイベントのポスターが目に入る。
「地域の人々を撮影する写真プロジェクト」
写真を通して、地域の魅力やそこで暮らす人たちの日常を残す企画らしい。
湊は立ち止まった。
「……やってみたい」
今までなら、
自分からこういう企画に応募することはなかった。
でも、今は違う。
写真展で感じたことを、
もっと広げてみたかった。
その夜。
湊は紬に電話をかけた。
「もしもし?」
「紬、今大丈夫?」
「うん。どうしたの?」
「新しい写真の企画、見つけた」
湊は今日見つけたポスターのことを話した。
「それ、やってみるの?」
「うん。応募してみようかなって」
「いいじゃん」
紬の声が明るくなる。
「写真展の次の挑戦だね」
「そうなるかな」
「湊、最近変わったね」
「え?」
「前は、写真を撮るのは好きだけど、自分から何かに挑戦するのはちょっと迷ってたじゃん」
湊は少し考えた。
確かにそうだった。
失敗するのが怖かった。
自分の写真を評価されることも、
自分の夢を口にすることも。
でも、写真展を経験して分かった。
失敗しないことより、
やってみることのほうが大切なのかもしれない。
「……紬のおかげかも」
「私?」
「うん。いつも背中押してくれるから」
電話の向こうで、
紬が少し笑った。
「じゃあ、これからも押すね」
「ほどほどにしてよ」
「嫌?」
「……嫌じゃない」
二人で笑う。
それだけで、
不思議と勇気が出てきた。
翌日。
湊は応募用の写真を選び始めた。
一枚。
二枚。
三枚。
けれど、なかなか決められない。
どの写真にも、
それぞれの思い出がある。
そんな中で、
一枚の写真に目が止まった。
夕方の商店街。
店を閉める準備をしている人。
買い物をする人。
家へ帰る人。
特別な瞬間ではない。
でも、そこには確かに、
その街で暮らしている人たちの日常があった。
湊はその写真を選んだ。
タイトルを書く。
「いつもの場所」
説明文には、
写真を撮ったときに感じたことを自分の言葉で書いた。
「特別な景色ではなくても、そこに暮らす人にとっては大切な場所がある。何気ない日常にも、その人だけの物語があることを伝えたい。」
書き終える。
そして、応募ボタンを押した。
「……よし」
また一歩。
今度は、
写真展に選ばれるためだけじゃない。
自分が見つけた「写真の意味」を、
もっと多くの人に届けるための挑戦だった。
その日の帰り道。
湊は夕暮れの商店街を歩きながら、
カメラを構えた。
シャッターを切る。
新しい挑戦を始めた今日の景色。
これもきっと、
いつか大切な一枚になる。
📷 Photo.077「いつもの場所」
撮影日:10月18日
特別な景色だけが、
心に残るわけじゃない。
何気ない日常の中にあるものを見つけること。
それが、湊にとっての新しい写真だった。
――次回、第七十八話「それぞれの忙しさ」へ続く。
コメント
1件
わあ〜第77話、読み終えたよ!!🌸 湊くんがまた新しい一歩を踏み出してて、もう本当に感動しちゃった😭💕 写真展で「自分の写真が誰かの時間に入っていく感覚」を掴んで、次は地域のプロジェクトに挑戦しようとする姿、めっちゃかっこよかったよ…! 「いつもの場所」っていうタイトルも、日常の中にある物語を大事にする湊くんの優しさが詰まってて、すごく好き。 紬との「嫌じゃない」のやり取りにもキュンが止まらなかったし、2人の関係性がじわじわ温かくなってる感じがたまらん!!💞 次回「それぞれの忙しさ」も楽しみにしてるよ〜!!!