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僕には好きな人がいます。
彼女は小谷 未央奈。
優しくて明るくて綺麗な彼女はこのクラス、いや、この学年の高嶺の花です。
僕はずっと彼女に思いを寄せていました。
彼女が笑うと花が咲くようです。
日によってその花の色は変わります。
赤色、黄色、オレンジ、ピンク…。
彼女は色とりどりの鮮やかな花を僕に見せてくれます。
僕もそんな花に近づきたくて話しかけたことがありました。
僕なりに勇気を振り絞って話しかけたのですが、その行為が罰当たりな事でした。
僕は彼女のことが好きなクラスの中心的人物に虐められるようになりました。
最初はパシられたり、お金を取られたりしただけだったのですが後々殴る、蹴るなどの暴行をされたり、階段から突き落とされたりしました。
日に日に僕の怪我は増えていきます。
僕はそんなに悪いことをしたのでしょうか。
僕が悪いのでしょうか。
毎日、毎日、痣が増える一方で痛くて苦しくて辛いです。
とある日のことでした。
その日僕は昼休みにいじめっ子に呼ばれ屋上へ行きました。
僕と、彼等で言い合いになります。
そして抵抗をしても無駄なのでした。
その日から彼女の笑顔はぱたりと消えてしまいました。
綺麗に咲く色とりどりの花が見られないのが残念です。
彼女にはいつも笑っておいて欲しいです。
僕では無理なのでしょうか。
放課後になり、夕日が差し込む教室に彼女がひとり、僕の席に座っています。
机に突っ伏して小さな声で泣いています。
気になってしょうがないです。
話しかけたいのですがまた彼等に虐められると考えたらその気が失せてしまいます。
すると彼女の泣く声が段々やんできます。
「好きだよ。ゆうまくん。」
そう言って彼女は僕の名前を呼びます。
両思いです。
そして僕も彼女に、僕もだよ と伝えます。
けれど彼女は僕の方を向いてくれません。
無視をしてるのか、はたまたからかっているのか。
僕は君が好きでしょうがないのに。
そんな風に毎日が過ぎていきます。
彼女は僕の名前を呼び好きだと毎日伝えてくれます。
僕も彼女に好きだと何度も何度も伝えます。
けれど彼女がこちらを向くことはありません。
伝わらないのに必死に好きを叫んでも無意味だと気が付き僕は彼女に好きを伝えるのをやめてしまいました。
そうやって彼女を見守ることを始めてかなりの時が経ったと思います。
僕達は進級し3年生になりました。
僕は彼女と同じクラス。それも隣の席なのです。
毎日僕の方を見ておはようと言う君。
僕も君におはようと返します。
周りはそんな僕達をなんとも言えない不思議な表情で見ています。
なぜそのような顔をするのですか。
彼女が隣にいるため僕は授業に集中できません。
横目でちらりと彼女の方を見ると真剣に黒板とにらめっこをしています。
その眼差しが美しく綺麗でつい、見とれてしまうのです。
そうやって見惚れていると彼女は僕の方を見てにっこり微笑みます。
けど、その微笑みには切なく悲しい思いが込められているように見えます。
いつになれば君に好きだと伝わるのですか。
今日もいつもと同じ日々。
今日は格別に天気のいい晴天です。
太陽がジリジリと照りつけまるで夏のようです。
けれど僕は暑さや寒さなど感じないのです。
とうとう感覚すらも狂ってきました。
彼女の方を見ると前を向き美しい姿勢で板書をしています。
額から一滴、透き通った汗がつーと彼女の頬をつたり首元に落ちました。
とても、美しいのです。
その日の夕方。
暑さなど無くなり心地よい温度に変わりました。
教室ではいつもと同じように夕日が教室を照らしています。
彼女はいつもと同じように僕の席に座り悲しんでいます。
けれど今日はどこか違うのです。
いつもよりも絶望し、苦しみ足掻いている人間の泣き方なのです。
そしていつものように彼女がぽつりと言葉を発します。
「ゆうまくん、大好きだよ、。」
何故でしょう。
ずっと前にやめてしまった好きというのを今日だけは、今回だけは何故か言わなくてはならないような気がします。
僕は彼女の前に立ち目を閉じました。
そしてゆっくりと目を開き深呼吸をします。
「みいなちゃん。僕も、僕も好きだよ。」
「君が大好きだ。」
すると彼女が始めて僕の方を向いてくれたのです。
「ゆうまくん、?ゆうまくん?ゆうまくんなの?!」
僕の方に叫ぶ彼女。
まるで僕を久々に見たとでも言うかのように。
「そうだよ。片桐 優真だよ。」
そういうとまた彼女は泣きじゃくります。
「ごめんね、。守ってあげられなかった、、。」
守る?なんで謝るの?
僕には理解ができません。
「謝らないで。」
「ごめんね。ゆうまくん。」
すると彼女は僕の唇に優しいキスをしました。
そして少しづつ記憶が戻ってきます。
僕は死んだのでした。
あれは丁度一年前。
今日のように晴れた日でした。
僕はいじめっ子に屋上へ呼ばれ内心不安でそこへ行きました。
すると彼等は僕を拘束しサンドバッグ代わりとし順番に殴るのです。
意識がもうろうとしていきます。
何が何だかよく分かりません。
すると彼等は僕の頬を叩きながら言います。
「おーい、死んだー?」
死んでないと言いたかったのに言葉が出ません。
すると彼等は焦ったようにどうするか話し始めます。
すると主犯格がこう口にしました。
「屋上から放り投げて自殺にすればいい。」
ふざけるなと心の中で唱えながら必死に体を動かそうと試みました。
すると彼等はそうしようと納得したように頷き合います。
そして僕の拘束を解き、僕を数人で持ち上げました。
僕は最後の気力を振り絞って手足をばたつかせました。
すると彼等は「おい!生きてるぞ!」といい僕を掴む力をより強くしました。
「後々なんか言われたら面倒だしもう投げちまえ。」
そう主犯格は言います。
こいつらは狂ってる。
僕は蚊が飛ぶぐらいの声で「ふざけるな!」と言います。
彼等は黙れと僕を殴ります。
必死に抵抗をしたのに結局僕は落とされてしまいました。
落ちる時最後に思い出したのはみいなちゃんのことです。
彼女が幸せになってくれればと願うばかりで地面を目の当たりにしたのを覚えています。
はっと我に返った僕は彼女の頬を撫でキスをしました。
僕の机をよく見ると美しい花が飾ってあります。
そこには綺麗に咲いたピンクの花があります。
この花はカリン。
この花の花言葉は「唯一の恋」です。
僕と君の唯一の恋心なのです。
僕は君に好きだと伝え君を見つめていると少しづつ意識が遠のいていきます。
目の前が霞んで見えなくなります。
君が何かを叫んでいるのが聞こえます。
最後にうっすら久々に君の全力で笑った顔が見れた気がします。
その笑顔はまるでピンク色の花が咲いたように美しかったです。