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真希氏はしばらくパソコンに向かい、いい賭け事が見つかったようで、夕食の時に「あのねあのね」と報告してくれた。
「競馬がよさそうなの」
{競馬か。しかし、競馬場は遠いのではないか?}
彼女は外出だけで疲れてしまうのに?
しかし、心配しなくてもよさそうだった。
「あのね、競馬場に行かなくてもネットで全部できてね、ネットなら賭け金無制限なの。一発で3億円つぎ込めるの」
{なるほど。それはいい}
「ウマ娘っていう、競馬をかわいい女の子に擬人化したゲームが流行っててね、競馬はネットでできるってなんとなく知ってたから、調べてみたらドンピシャだったの! 明日の朝イチのやつを買おうと思って」
{うまくいくことを願っている}
彼女が喜んでニコニコしているのを見るのは好ましい。うまくいくといいが。
真希氏はその日は寝てしまい (彼女の就寝時間は19時、12時間眠るのだ)、朝7時に起きて、朝食のハムエッグトーストを頬張りながらワクワクと話してくれた。
「三連単っていうのが一番当たらなそうなの。1位2位3位の馬を全部当てるやつ」
{そんなものがあるのか、馬券には}
「うん。で、大穴っていうのがビリっぽいからそれを1位にして、あとは穴っていう2番目にビリっぽいのを2位にして、3位は特に何も印ついてない馬……特に期待されてない馬のことなんだけど、それを3位にすればいいかなって」
{なるほど。よいと思う}
「じゃ、さっそくやっちゃおっと!」
真希氏は朝食をすませ、身繕いして着替えてから、さっそくパソコンに向かった。
「よし! 買えた!」
その時部屋のドアがバーンと開いて、座敷童子氏が赤い着物の袖をひるがえして飛び込んできた。
[あたちがいる限りこの家は意地でも栄えさせるのだ、できる限り当ててやるのだ!]
「えっ」
そうか、賭け事と言うのは当たる可能性もあるのだった!
座敷童子氏は「何買ったか見せるのだ!」と真希氏のひざによじ登り、馬券を確認したらしく言った。
[あっ、これならあたちが何もしなくても大丈夫なのだ]
「ええっ」
[お菓子をよこすのだ。勝つ様を見物してやるのだ]
「え? 何? これ勝っちゃうの!?」
真希氏は困惑している。
「ヤダーッ! 使い切ってやろうと思ったのに!!」
{ま、まあ、ひとまず結果を待ってはどうだろうか?}
「そ、そうよね、勝つとは限んないしね」
頷く真希氏の膝から座敷童子氏はぴょいと降り、[練乳がクソ入ったミルクティーもよこすのだ!]と叫んだ。
「はいはい、今作ったげる。ヤカ、厨房からお菓子いろいろ持ってきてくれない?」
この部屋には水道もケトルも冷蔵庫もあり、お茶やコーヒーくらいならその場で淹れられるのだ。なので、私は厨房の食料庫へ行き、菓子盆をクッキーやチョコレートで満杯にして座敷童子氏に差し出した。彼女はお菓子をもしゃもしゃ食べつつ言った。
[レースいつ始まるのだ?]
「そのうち……ネットで見れるから見よっか」
[大勝ちさせてやるのだ]
「ううー……」
そしてレースが始まった。馬同士が鍔迫り合うように走り合う中、真希氏は拳を振り上げて大騒ぎした。
「ウワーッ! ドベ! ドベになれ! あーっなんでどんどん追い越しちゃうの!? うわっ他の馬どんどん離されてる! ウワーッ独走!? ウワーッ!!」
およそ競馬にあるまじき叫び……。負けたくて競馬をする人も、そうはいないだろうな。
結局、1位も2位も3位も見事に的中してしまい、真希氏は頭を抱えていた。
「ねえアホほど増えたんだけど……何!?倍!? ウソでしょ!?」
[3億もポンと買ったから、オッズが低くなっちゃったのだ。次はもっと計画的に買うのだ]
「いやもうしない! 二度としない!!」
真希氏は首をブンブンと横に振り、私に「ねえどうしよう……」と、半泣きでうめいた。これだけ大勝ちして困る人も、そうそういないだろうな……。
{その……不本意だとは思うが、汚い金ではないので、増えた分は人の役に立つことに使うのはどうだろうか?}
「そうしよっかな……あっでも全額使うのはダメだわ、増えた分所得税かかるし。でも1億円くらいはいけるかな……どこに寄付しよっかな……あっ寄付控除もあるのか……」
真希氏はつぶやいてから、また頭を抱えた。
「何、1億円くらいって! 大金よ1億は! あーもう金銭感覚がマヒしてくるー!!」
彼女が荒ぶっているので、私はなだめた。
{大丈夫だから、何も困ったことは起きていないから、落ち着いて考えてほしい。紅茶を淹れてこようか?}
「ありがとう……あー、今日はもう、どこにどれだけ寄付するか決めるのに使うかな……」
真希氏は、ぐったりして背中を背もたれに預けた。
{あまり無理はしないでほしい、急ぐことではないのだから}
私は、真希氏の体力が心配である。
「そうね、でもちゃんとしたところに寄付したいから、ゆっくり調べるわ」
真希氏は、やっと微笑んでくれた。
コメント
1件
うわぁこの話めっちゃ好き!😭💕 真希氏、負けたくて叫んでるのに「ドベになれ!」とかもう競馬ファンから怒られそうで笑ったwww しかも座敷童子が「何もしなくても大丈夫なのだ」って余裕かましてるのが神すぎる…! そして「もう二度としない!」って言いながら増えたお金の使い道真剣に考え始めるの、ほんと優しい人だなぁってじーんとしたよ🥺💖 ヤカさんの「紅茶淹れてこようか?」も優しくて癒し…。