赫
その日は、雪が降っていた。
両親と兄ちゃんと俺で出かけた時に、ブレーキが効かな くなった車が突っ込んできた。
両親は俺らをかばった。
降り続く雪の中、真っ白な地面に、鮮やかな紅が飛び散っていた。
まるで静かな世界に、不意に落とされた悲しみの色。
冷たさに染みこむように、血は雪へと溶けていった。
救急車を待つ間、俺と兄ちゃんは一生懸命に声をかけた。
そして、救急車が来て、病院に着く前に亡くなった。
俺は正直何が起きたのかその時は、理解できなかった。
理解したくなかった。
両親が死んだ――その事実だけが、あれの心の中で深く渦を巻いていた。
家に帰れば、幼い弟達がいる。
大好きな弟達ですらも、鬱陶しく感じた。
俺と兄ちゃんは、両親のことを弟に伝えなかった。
ここからの生活は酷いものだった。
両親の遺産があったからまだ良かったものの、親戚の人などからもお金を貰わないと生活が維持できないようになった。
その度に、土下座をし、殴られ、蹴られる。
正直、死んでしまったところで変わらないと思った。
それでも、弟達を守るためにも俺と兄ちゃんは誰かのサンドバッグにならないといけなかった。
物心が着いた弟たちに、 両親のことを話すと、前から何となく悟っていた。そう答えた。
俺たちが知らない間に、弟たちは成長していたようだった。
両親が死んで、3年が経った頃だった。
兄ちゃんが、倒れた。
原因は、過労と睡眠不足だと聞いた。
俺は兄ちゃん病院のベッドに残し、家に帰り家事をした。
今まで、兄ちゃんに頼っていた部分を自分で何とかできるようになりたかった。
そんななか、コロナが世間で流行りだした。
俺もその感染症にかかってしまった。
他の兄弟たちは、対策をしっかりさせたためかからなかった。
正直、未知の病気だったために治療法が分からず、死んでしまうのではないかと怖くなった。
咳が止まることはなかった。
頭痛や吐き気も、止まらなかった。
もちろん、熱も一向に下がらなかった。
2週間たって、 ようやく熱が下がった。
それでも咳は続いているため、家族は心配し俺に家事をさせなかった。
思えば、それが原因だったのかもしれない。
元々、外で遊ばずに中で家事をしたりしていることが多かったりして体力はあまりなかった。
小さい頃、インフルエンザにかかることが多かったりして俺は気づけば喘息を持っていた。
両親はそれを教えてくれなかった。
それを知ったのは、コロナになり自分の母子手帳を久しぶりに見た時だった。
そんなこともあってか、俺の体力や免疫力はほとんど無くなっていた。
家の中を歩くだけで、息を切らした。
外に出るなんて、もってのほかだった。
兄弟たちは、そんな俺をみて心配そうな顔をしていた。
その顔を見るのも、怖かった。
これが、中学3年生の俺の物語だ。
コメント
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神…!! めちゃくちゃ最高っすね!!!