テラーノベル
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暗く湿った部屋。
まただ。本戦を翌日に控え、学園の宿舎で深いまどろみに落ちた俺の意識は、再び過去の底へと引きずり込まれていた。
父親からも、屋敷の者たちからも、そして双子の兄ルシアンからも、「魔力スカスカのハーフ」「出がらしの落ちこぼれ」と捨て置かれていた幼少期。
誰も俺を見ようとせず、誰も俺に何も期待していなかった。
「魔力(破壊力)の大きさ」だけが正義の魔界において、魔力の湧かない俺の存在は、ただの「ヴァルネ家の恥」でしかなかったからだ。
だが――ただ一人だけ、俺を冷ややかな眼で見なかった男がいた。
◆
『何を腐っている、クロード』
血と硝煙の臭いが染みついた、地下の秘密鍛錬場。
膝を折り、吐血しながら床に伏せる幼い俺の頭上から、師匠――人間界の泥臭い暗殺戦術を俺に叩き込んだ男の低い声が降り注いだ。
『誰も……俺に何も期待してない……。魔力がないハーフの俺なんて、生きてる価値もない……っ』
爪が割れ、血の滲む拳を床に叩きつける俺を、師匠は蹴り飛ばしも、慰めもしなかった。
代わりに、男は解体された拳銃のパーツを俺の目の前へ無造作に放り投げた。
『魔力がない? 結構じゃないか。大雑把で派手な力に頼る奴らは、その力が奪われた瞬間にただの木偶の坊になる。……だがな、クロード』
師匠は俺の前にしゃがみ込み、その力強い手で俺の細い肩をしっかりと掴んだ。
その瞳に宿っていたのは、哀れみでも冷笑でもない。恐ろしいほどの**「熱」**だった。
『お前には、奴らには絶対に真似できない素質がある。極小の時間干渉を見切る精密な洞察力。死線の中でも決して狂わない冷徹な思考力。そして何より――生き残るために手段を選ばない執念だ』
『……そんなの、魔法の破壊力の前には……』
『違うッ!』
師匠の喝声が地下室に響き渡る。
『魔王の強さとは、ただ派手に街を吹き飛ばす力のことではない! あらゆる戦場で生き残り、敵の喉元を確実に撃ち抜く「絶対の勝利」のことだ!』
師匠は俺の手を握りしめさせ、冷たい鋼鉄の弾丸を掌に押しつけた。
『奴らに期待されないことを誇れ。見下されている今こそ、お前が牙を研ぐ最高の時間だ。……見せてやれ、クロード。人間の作った冷徹な技術と、お前の磨き上げた知略こそが、この歪んだ魔界を統べる**「真の魔王の資質」**なのだと』
◆
「――ふぅ……」
静かな呼吸と共に、俺は目を覚ました。
窓の外は、まもなく夜が明けようとする群青色の空。
額を伝う汗を拭い、俺はベッドの上で静かに身体を起こした。
幼少期の悪夢。だが、今朝の目覚めはいつもと違っていた。
胸の奥に渦巻いていたのは、嫌な不快感ではなく、静かに、そして苛烈に燃え盛る漆黒の炎だった。
「……師匠」
俺は枕元に置いてあったホルスターを持ち上げ、愛用の拳銃を確かめる。
スライドを引き、弾薬が薬室に装填される重厚な金属音が部屋に響いた。
誰にも期待されなかった落ちこぼれ。
だが、あの男だけは俺の中に眠る「魔王の素質」を信じ、その牙を研ぎ澄ませてくれた。
父親たちの期待を背負った「完璧な天才」ルシアン。
あいつが誇る絶対的な熱操作魔法――圧倒的な破壊力の前に、人間の冷徹な知略と泥臭い準備がどこまで通用するか。本当の「強さ」が何なのかを教えてやる時が来た。
「……そろそろ時間か」
俺は外套を羽織り、安全装置を解除した拳銃を懐に収めた。
歓声と熱気が遠くから地鳴りのように響いてくる。
全魔族が固唾をのんで見守る、本戦トーナメントの巨大コロシアムへ向けて、俺は迷いのない足取りで扉を開けた。
n a ♡︎︎ *
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蒼月
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グリルタ
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コメント
1件
ああ、これは熱い回だった……! 師匠の「期待されないことを誇れ」って台詞、ガチで刺さったわ。魔力スカスカの落ちこぼれが、人間の技術と知略で這い上がるって設定、めっちゃ好み。幼少期のトラウマを力に変えて拳銃抱えてコロシアムに向かうクロードの背中、かっこよすぎる。ルシアンとの本戦、マジでどうなるんだろう。続きが待ち遠しい🔥