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124
蒼月
766
グリルタ
72
コロシアムへ続く地下通路を進むにつれ、頭上から降り注ぐ大観衆の歓声と地鳴りのような熱気が、肌をビリビリと麻痺させていく。巨大な魔道映像格子(モニター)を通して、この『魔道王闘技会』本戦の模様は魔界全土へリアルタイムで中継されている。王都の貴族から最果ての貧民街に至るまで、今この瞬間、全魔族の視線がこのコロシアムに集まっているのだ。
「――さあ! 次世代の魔王を決める本戦トーナメント、いよいよ開幕です!」
実況の魔法音声が響き渡り、巨大な魔道掲示板にトーナメント表と対戦カード、そして公認闇賭博の最新オッズが大きく映し出された。
コロシアムの影からふと見上げた俺の視線が、自分の名前に留まる。
【第一試合】
カミラ・フォン・シュタイン(単勝:1.2倍)
vs
クロード・ヴァルネ(単勝:350.0倍)
「350倍、か」
思わず口元から短い乾いた笑いが漏れた。
一番人気のルシアンやセリスどころか、対戦相手であるセリスの側近・カミラにすら絶望的な大差をつけられている。サバイバル予選を勝ち残ったとはいえ、魔族どもにとって俺は「たまたま運良く生き残ったハーフの不法者」でしかないらしい。
「観客の9割九分が、俺がカミラの岩石魔法に押し潰されて肉塊になる方に金を賭けているわけだ」
「……随分と呑気ね、クロード」
氷のような冷気と共に、背後の陰からセリスが歩み寄ってきた。本戦の装束に身を包んだ彼女は、掲示板の350倍という数字と俺の横顔を交互に見比べ、複雑そうに美貌を歪める。
「カミラの『岩石障壁』と重圧魔法は、並の攻撃魔法じゃ傷一つつけられないわ。予選で使ったような小細工や罠が使えないこのコロシアムで、アンタに勝ち目なんて――」
「勝ち目がないから、350倍なんだろ」
俺はセリスの言葉を途中で遮り、外套の下で拳銃の弾倉(マガジン)の装填状態を指先で確かめた。重厚なカチリという金属音が、静かな地下通路に鼓膜を打つ。
「あいつらは『魔法の火力』に金を賭けている。だが、勝負を決めるのは火力の大きさじゃない。……相手の喉元をどっちが先に穿つか、それだけだ」
「っ……」
「セリス、お前はいくら賭けた?」
「な、なんですって……!? 私がそんな下品な賭け事なんてするわけ――」
動揺して目を泳がせる異母姉を横目に、俺はゆっくりと光の射すコロシアムのリングへと足を踏み出した。
「ハンスに頼んで、自分の全財産を俺の単勝にブチ込んでおいた。……350倍の払戻金で、ハンスから買いたい最新兵器が山ほどあるんでな」
「――狂ってるわ、アンタは……!」
背後で絶句するセリスの声を置き去りに、俺は大歓声とブーイングが渦巻くコロシアムの真っ只中へと躍り出た。
「出たぞ! 予選を姑息な手で生き残ったハーフの落ちこぼれ、クロード・ヴァルネだーっ!」
「引っ込め出来損ない!」
「カミラ様! 一瞬で踏み潰してやってくれ!」
正面には、全身を難攻不落の岩石鎧で包んだカミラが、冷笑を浮かべて巨大な魔導槌を構えて立っている。
観客の嘲笑、圧倒的なアウェイの空気、万に一つの勝ち目もないと踏んでいる350倍のオッズ。
(――上等だ)
俺は深く被ったフードの影で、冷酷に口角を上げた。
大雑把な魔法に酔いしれる脳筋どもに、人間の作った「鉛の弾丸」と「0.1秒の絶対殺す知略」の恐ろしさを叩き込み、胴元を破産させてやる時間が始まった。
コメント
1件
やばやばやば!!第13話、熱すぎて震えたんですけど!!🔥🔥 クロード、単勝350倍とか笑うわ…完全に舐められてるじゃん😭💦 でも「火力じゃない、喉元を穿つ」って台詞がマジでかっこよすぎて叫んだ!! 全財産ブチ込むとか狂人すぎて逆に推せる!! カミラの岩石魔法にどう立ち向かうのか、鉛の弾丸と0.1秒の知略ってワードに胸熱すぎる…次回が待ちきれないよ!!😭💕