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夏風が頬を撫でる。生ぬるく嫌に感じる風さえも今は優しく感じる。今日は休み、その上遊びに行くとなった。嫌になる熱気さえも跳ね返すほどの感情が頭の中を渦巻く。なんたって遊びに行く人は現在進行系で僕が恋している人なのだ。
音が鮮烈に響く。ゆらゆらと揺れる陽炎と対を成すように。生命を薪に燃やす音はこんな音なのだろうな、と短編小説にもならないことを考える。これを小説にするとしたら僕の腕では駄作も駄作。お目汚しも程々にしろとブーイングが来るだろう。
まぁ小説自体は大好きだ。僕の不器用さも汚れきった感情さえも言葉に押し込んで飾り付ければ立派な作品だ。僕の中に巣食う今の関係を全て壊して社会的に死んでもお釣りが来るほどの愛。これは執着と言ったほうが良いかもしれない。そんな苛烈な感情の手綱を握るために僕は今日も小説を書く。
僕の初恋は男性だった。案外悪いものではなかったと思う。病まない失恋、というのだったか。僕の親友とも言える女友達と彼は付き合った。両片想いだったもんだから僕は彼らをくっつけるキューピットになってやったりもしたし結婚式の友人代表スピーチもした。僕の初恋は友情に捧げたのだ。
そこに葛藤がなかった訳はない。僕はこの荒れ狂う恋情を収めるにはあまりにも未熟だった。それでもこのままでいれたのはひとえに他の同士たちの体験談によるものだろう。告白して引かれて話せなくなったり広められたり。挙句の果てには家族からも拒絶されるという始末。ここまでいくと怖くて仕方なかったのだ。こんな風になりたくない、拒絶されたくない。それでも苦しくはあった。少したりとも息が吸えないような、そんな地獄だった。…その地獄は今でも続いている、という笑えない現実があることには目を瞑らせてくれ。
まぁこの気持ちに蓋をして婚期がなんやかんやのことから逃れて今を過ごしている。いつまで経っても僕は結婚出来ないししたいとも思わない。この恋が冷めるまでは誰かを愛するってことは、出来やしないだろう。