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irxs様nmmn作品
ご本人様に関係✕
嘔吐表現○
地雷さん🔙
N「……あ、お疲れ。遅れてごめん……」
スタジオの重い扉が開くと同時に、掠れた鼻声が室内に響いた。
マスク姿で入ってきたのはないこだった。いつもなら「お待たせ!」と元気に場を明るくするはずのリーダーが、心なしか肩を落とし、見るからにぐったりしている。
メンバーたちは、それぞれスマホをいじったりストレッチをしたりしていたが、一斉にないこの方を見た。
I「ないこ、おつー。渋滞はまってたんだって?」
S「高速すごかったらしいね」
初兎とIfがいつも通りのトーンで声をかける。
今日のスタジオは、たまたま普段使っている場所よりもかなり遠い場所にあり、全員移動に苦労していた。特にないこは、ここ数日ずっと風邪気味で、熱こそないものの体調を崩し気味だったのだ。
N「うん、まじで動かなくて……。ごめん、遅くなった……」
ないこはそれだけ言うと、自分の荷物を床に置く。だが、そのまま立ち上がることができず、壁に背中を預けたまま、その場にズルズルとしゃがみ込んでしまった。
L 「……ないくん?大丈夫?」
さすがに異変を察して近くにいたりうらがないこに駆け寄る。
ないこは膝に顔をうずめるようにして、小さく呼吸を繰り返している。もともと彼は、乗り物や画面でも簡単に酔ってしまうタイプだった。
L「体調悪い?どうしたの?」
りうらが心配そうに覗き込むが、ないこは力なく首を振った。
N「……大丈夫…。でも、吐きそう……」
H「吐きそう?」
ほとけが目を丸くする。
I「もしかして、タクシー?」
Ifの問いかけに、ないこはマスク越しに小さく「うん……」と頷いた。
初兎がすっと近くに寄って、ないこの背中をゆっくりとさすり始める。
S「袋、いる? 今スタッフさんに貰ってこようか」
N「……大丈夫、ありがと。ちょっと……じっとしてる……」
メンバーはそれ以上無理に話しかけず、静かに見守っていた。
スタジオの中には、初兎が背中をさする衣服の擦れる音と、ないこの少し苦しそうな呼吸音だけが静かに響いている。
数分が経過した頃。
ないこが、ゆっくりと深く息を吐き出しながら、なんとか顔を上げた。マスクから覗く目は、少し潤んでいて本当に辛そうだ。
N「……ごめん。ちょっと、吐いてくるわ……」
掠れた声でそう言い残すと、ないこはフラつきながらも立ち上がり、口元を片手で押さえながら、急ぎ足でスタジオの部屋から出て行った。
H「…ないちゃん、大丈夫かな」
Y「ま、一回胃の中の物出しちゃった方が楽になるやろ。戻ってくるまで、俺らだけでできるところ確認しとこか」
スタジオのドアを閉めた瞬間、ないこは強烈な吐き気に襲われ、視界がぐにゃりと歪んだ。
N 「う、……っ、やば……」
壁に手を突き、なんとか身体を支えながら廊下を歩き出す。だが、今日のスタジオは初めての場所でどこに何があるのか、さっぱり分からない。
N「トイレ……どこ、……」
鼻が詰まっているせいで呼吸が浅くなり、頭痛までしてくる。冷や汗がだらだらと首筋を伝った。
角を曲がっても、見えるのは自販機とほかのスタジオのドアだけ。完全に迷ってしまった。
胃の底からせり上がってくる不快感に、ないこは口元を強く押さえ、その場にうずくまりそうになる。
限界寸前の理性を振り絞り、もう一度ふらつく足で廊下の奥へと進む。
すると、視界の端に「TOILET」の文字と見慣れたピクトグラムが飛び込んできた。
N「あった……」
ないこはトイレのドアを押し開け、一番手前の個室へと駆け込んだ。
ガチャン、と鍵を閉めるのと同時に便器の前に崩れ落ち、マスクを荒々しく剥ぎ取る。
「うッ、……げほっ、ゲホッ……!」
込み上げてきたものを堪えきれず、激しく嘔吐した。
タクシーの車内の匂いや、高速道路のあの独特な揺れが、今更になって胃袋を容赦なくかきむしる。何度も激しくむせ返りながら、胃の中のものを全て吐き出していった。
N「はぁ、っ……げほ、……う、ぅ……」
しばらくの間、静かな個室の中に、ないこの苦しそうな呼吸音と、水が流れる音だけが虚しく響いていた。
しばらくして、ないこはフラフラとした足取りでスタジオへと戻ってきた。
さっき全てを吐き出したものの、胃の不快感と頭のクラクラ感は消えておらず、顔色は真っ白なままだ。
I「……ないこ、おかえり。大丈夫か?」
Ifがいち早く気づいて声をかける。りうらが「水、ここ置いとくね」と、買ってきた冷たいペットボトルを差し出してくれた。
N「……ありがと。でも、今水飲むとまた吐きそうだから、後でもらうね…」
ないこは力なくスタジオの壁際に力なく座り込んだ。
スタジオ内では、メンバーたちがこれから始まる振り入れの動画をチェックしたり、ストレッチをしたりして準備を進めている。いつもならすぐに中心に立って指揮を執るないこだが、今の状態では立ち上がることすらままならない。
S「ないちゃん、今日の振り入れは一旦見学にしとき。俺らで先に流れ確認しとくから」
N「ごめん……ありがと……」
ないこは壁に頭を預け、目を閉じた。
胃の気持ち悪さもさることながら、もう一つ彼を苦しめていたのが、さっきからずっと止まらない鼻水だった。
N「……ずっ、……」
静かなスタジオの中で、ないこが鼻をすする音が響く。
ここ最近ずっと風邪気味で、今日も家を出る前にちゃんと薬を飲んできたはずだった。それなのに、全く鼻水が止まらない。
(あー……、薬飲んだのに、なんでこんなに出んの……)
ずるずるとすすり続けるのも限界で、早く鼻をかみたかった。
しかし、そのカバンがあるのはスタジオの反対側の隅っこ。
今のないこにとって、そこまで歩いて往復するだけの体力は残っていなかった。少しでも身体を動かしたら、せっかく落ち着きかけた胃がまた暴れ出しそうで、どうしても動きたくない。
「……ずずっ、……うぅ……」
ティッシュを取りに行きたいけれど、遠すぎて動けない。
そうしてしばらくそのままでいると落ち着いていたはずの頭痛が再びぶり返してきた。
N「……あー、頭痛い……」
ないこは片手で額を強めに押さえながら、痛みに耐えるように眉間にしわを寄せた。
鼻をすすってるせいで頭がガンガンと脈打つように痛むし、タクシー酔いの気分の悪さもまだ尾を引いている。
(あ、そうだ……薬……)
ふと、カバンの中に入っている市販の頭痛薬の存在を思い出し、ないこは力なく視線をカバンへと向けた。しかし、すぐに自分の記憶を呼び起こして、小さくため息をつく。
(……いや、ダメだ。ついさっき、タクシーの中で飲んだばっかりじゃん……)
時計を見ると、車内で頭痛と体調不良に耐えかねて薬を口に放り込んでから、まだほとんど時間が経っていない。
どんなに頭が割れそうに痛くても、規定の時間を空けずにそんな頻繁に薬を飲むわけにはいかなかった。これ以上飲めば、ただでさえ荒れている胃をさらに痛めてしまうだけだ。
Y「……ないこ? どした、頭痛いん?」
悠佑が、ないこが額を押さえたまま動かないのを心配そうに見ている。
N「……うん…。薬飲みたいんだけど、さっきタクシーの中で飲んじゃったからさ…」
鼻声でポツリと溢れたないこの言葉に、Ifが「あー、そりゃ無理は禁物やな。胃もやられるし」と静かに頷いた。
S「とりあえず、今日はもう絶対に無理せんといてな」
初兎の言葉に甘えるように、ないこは「ありがと……」とだけ返し、再び壁に頭を預けて深く目を閉じた。
「じゃ、片付けも終わったし、そろそろ撤
収しよか」
悠佑が荷物を肩にかけながら、スタジオの出口へ向かう。
トイレで吐いてすっきりした部分もあるが、体力的にはもう限界をとうに超えている。
(あー……やっと帰れる……。早く帰って早く寝よ…)
そんなことを考えながら、這うような足取りでメンバーの後を追っていると、スマホでスタッフからの連絡を確認していたIfが、ふと思い出したように口を開いた。
I「あ、そういや今日の帰りなんやけど。ここ場所遠いからって、スタッフさんがロケバス手配してくれたらしいで。もう下に着いてるって」
その言葉が耳に飛び込んできた瞬間、ないこの足がピタリと止まった。
N「……え?」
ないこの顔から、さらにスーッと血の気が引いていく。
N「ロケバス……?」
I 「そうそう。こっから駅まで行くのも遠いしな」
嫌そうなオーラが全身からこれでもかと滲み出ている。
それもそのはず、ないこは行きのタクシーですら、吐くほど酔ったのだ。
これから乗るロケバスなんて、タクシーよりも車体が大きく、独特の揺れやシートの匂いがある。
N「……まじで言ってる……? 嘘でしょ……」
マスク越しでもはっきり分かるほど引き攣った顔で、ないこはあからさまに嫌悪感を露わにする。
L「あ、……そっかないくん、今日乗り物酔いヤバいんだった」
りうらがハッとしてないこの顔を覗き込む。
S「ロケバス、あの匂い独特やもんなぁ。今のないこにはキツいか」
初兎が苦笑いしつつも、同情するように肩をすくめた。
N「嫌だ……まじで乗りたくない……。でも、こっから自力で帰る体力もない……」
鼻声で本気で嫌そうにブツブツと呟きながら、ないこは頭を抱えた。
あからさまにテンションが地の底まで急降下したリーダーの姿に、メンバーたちは「酔わなさそうな席譲ってあげるから」「速攻で寝な」と、苦笑しながらも温かい言葉をかけるのだった。
ロケバスが夜の道路を走り出して、しばらく。
車内は電気も消され、メンバーたちも疲れて静かに眠りについていた。
だが、前から2列目の席に座るないこだけは、一睡もできずにいた。
(……ダメだ、気持ち悪すぎる……っ)
ないこは乗車直後からずっと目を閉じていた。しかし、ロケバス特有の大きな縦揺れと、シートから漂う独特な匂いが、ないこの三半規管と胃袋を容赦なく痛めつける。
風邪の鼻詰まりで息苦しいのも相まって、吐き気は増す一方だった。
N「……っ、……んう゛っ……」
喉の奥までせり上がってくるものを必死に飲み込む。
だが、ついに耐えきれなくなり、ないこの口から苦しそうな音が漏れた。
N「げほっ、……ぅ、おぇ゛、…」
L「……ないくん?大丈夫……?」
隣の席でうとうとしていたうつらうつらとしていたりうらが、跳ね起きるようにして目を開けた。暗闇の中でも、ないこが尋常じゃないほど肩を震わせ、苦しんでいるのが一目で分かった。
N「……っ、……ぅ、……」
ないこはもう、りうらの問いかけに答える余裕すらなかった。
パニックになりそうな頭で、Ifに渡されていたビニール袋を震える手で広げる。そして、片手でマスクを耳から手荒く引き剥がすと、そのまま袋の口へ顔を深く埋め込んだ。
N「はぁ、っ、はぁ……っ、……ぅ、え゛…っ」
袋の中に籠もる、ないこの荒い呼吸音と、必死に嘔吐を堪える苦しげな呻き声。
りうらは他のメンバーを起こさないよう配慮しつつも、すぐにないこの背中に手を当て強張ったその背中を、優しくゆっくりとさすり始めた。
しかし運悪く、帰り道も高速道路はなかなかの渋滞にはまっていた。
ノロノロと走るロケバスの不規則な揺れは、限界を迎えていたないこの胃袋に、最後の一撃を与える。
N「……っ、……げほっ、……ぅ!」
ないこはついに耐えきれなくなり、袋の奥深くへと顔を押し込んで激しく嘔吐した。
N「う、……っ、げほっ! ゲホッ……、おえぇっ」
いくら喉を震わせて飲み下そうとしても、身体の拒絶反応には抗えなかった。
L「ないくん……、大丈夫、大丈夫だからね……」
隣のりうらは、他のメンバーを起こさないよう、ささやき声で優しく声をかけながら、必死にないこの背中をさすり続けた。
後ろの席のメンバーたちは、日中の激しいダンスレッスンの疲れもあって、まだ深く眠りについている。静まり返った暗い車内には、ないこの苦しげな嘔吐音と、袋が擦れるカサカサという音だけが小さく響いていた。
ひとしきり吐き終え、ないこが袋を口元に当てたまま、ぐったりとシートに頭を預けて荒い息を吐き出す。
その時、前方の運転席から、バックミラー越しに様子を伺っていたマネージャーが、静かなトーンで声をかけてきた。
「ないこさん、大丈夫ですか? ……ちょっと、窓開けますね」
マネージャーは車内の空気を気遣い、静かに運転席側の窓を少しだけ開けてくれた。
隙間からスーッと流れ込んできた夜の冷たい新鮮な空気が、ロケバス独特の籠もった匂いを和らげ、ないこの熱くなった頬を優しく撫でていく。
N「……っ、……す、……ありがと、ございます……」
ないこは掠れた鼻声で消え入りそうに感謝を呟いた。りうらは、ないこが少しでも楽になるようゆっくりと夜の高速道路を進むバスの中で彼の背中をさすり続けた。
(完)
𝓷𝓮𝔁𝓽→→→→ ♡500⤴︎
コメント
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あー、読んでてこっちもなんか気持ち悪くなってきたわ……。乗り物酔い+風邪のWパンチ、マジで地獄だよね。ないこの「吐いた後のすっきり感より、まだ気持ち悪い」っていうループがリアルすぎて辛いっす。メンバーたちが静かに気遣ってる感じも良かった。特に初兎が背中さすったり、りうらが水差し出したりするところとか、みんな優しいな〜ってジーンときた。ただ、最後のロケバス地獄で「終わった…」感が半端なかった。連載続くなら、ないこ無事に家帰れてるといいなあ…。