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#文芸アクション
大正
4,228
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長く触れるだけのキスを交わし、高揚した状態で見つめ合う。ぐっと抱きしめられ、睦月君の柔らかい息遣いが耳元をくすぐる。
「先生、好きだよ。大好き……」
今……なんて……言ったの?
胸が高鳴り体が震える。
「む、睦月君……」
「さっきは水嶋さんに嫉妬して、みっともないところを見せちゃったけれど、…先生が好きだから、あいつと親しくしているのに、なんか、むかついてつい……ごめんなさい」
「す……好きって……ほんとに?」
「うん、僕、先生が大好き。だから、先生も僕を好きになって」
もう一度キス。睦月君の想いが伝わってくるような、情熱的なキスだ。初めての時やさっきの時とはぜんぜん違う。こんなキス、知らない――
「ふっ……んんっ……」
自分でも知らないような声が漏れる。脳髄が痺れて頭に霞がかかったようにぼんやりとする。
されるがままになっていると、ぐっと奥深く舌を絡めさせてきた。気持ちいい……。
息苦しくなったところで唇が離された。名残惜しいと思ってしまうのはどうして……。もしかして、私も睦月君のこと……?
わからない。こんな急展開に、私の心はぜんぜんついていかない。
「先生も折り紙も、僕が守るから。だからお店を休むなんて言わないで。いいアイディア持ってきたから、一緒に作戦を練ろう」
甘い雰囲気から一転、ビジネスモードの睦月君に切り替わった。きっとたくさんの女性と関係してきただろうから、切り替えも早いんだろうな。私はキスするだけで、こんなにドキドキしているのに!
「作戦ってどんな?」
年上の威厳を保つためにも冷静を装った。
「折り紙をwebで宣伝する。今、SNSを使った動画配信ビジネスもたくさんあるんだ。ユイチューバーなんかがこぞって大食いの店に食べに行ったり、コラボしたりするんだ」
「へえ……」
なにもピンとこなかった。SNSは危険という認識しかない。ユイチューバーがなにをやっている人たちなのか、ぜんぜん知らない。
「折り紙が日本一の食堂だってこと、僕が証明してみせるよ。お店を流行らせる。どんどん宣伝しちゃうから。いいよね?」
「そ、それはもちろん! 嬉しいよ。ぜひ宣伝して欲しい」
「手始めにTENGAのスタッフを使うよ。いい仕事するんだ。おいしいご飯作ってくれたら、すぐ宣伝してくれるよ。あと、おいしいお弁当を作って欲しい。これは大型スーパーで売り出す。マルヨーの特産品と一緒に」
「スーパーで取り扱ってもらえるの?」
「僕が手配する。任せておいて!」
きりっとした睦月君の姿に再び胸が高鳴った。
「早速明日から作れる? オーソドックスにだし巻き弁当がいいかな。もう1点くらい欲しいけれど、できる?」
「おまかせ弁当でもいいかな? 日替わりみたいにして」
「いいよ。それでいこう。マルヨーで材料手配するから、先生はお父さんと一緒にお弁当作ってくれる? 食堂経営がだめなら、一旦はお弁当を売ればいい。辞めてしまわない限り、考えひとつで経営は立て直せるんだ。だから心配ないよ」
にっこり笑ってくれる7歳も年下の旦那様の、なんと頼りになること!
「じゃ、買い出しに行こうか」
「えっ、今から?」
「そうだよ。善は急げ。仕事ができる人間っていうのは、行動力がものを言うんだ。明日やろうと思ったことを、明日始めるのは普通でしょ。今日から、すぐやらなきゃ。先延ばしにするなんてもってのほかだよ」
「そうだね。睦月君の言う通りだわ」
「お弁当を急に作れって言われても、まずは容器がないよね? 印刷は超特急で間に合わせられる会社を知っているから、すぐにレイアウトを依頼するよ。お弁当のデザインは任せてくれる? パッケージ案はスーパーデータから算出して、まずはAIでパターンをいくつか作るからその中から選んで、それから――」
睦月君は一気に仕事の話を詰めてきた。早すぎてついていくのがやっとだ。
要約するに、明日からお弁当作りを開始するので準備が必要。100人前の容器、お弁当用の醬油やソース、ケチャップなどを購入したい。マルヨーさんなら結構この辺のものが揃いそうだ。
あとは肝心のお弁当の材料。
「一緒に買いに行こ。僕じゃ欲しいものまでぜんぶわからないから、先生と一緒に」
「ええ。ありがとう。じゃあ、私は明日頑張ってお弁当作るね」
「僕のぶんもひとつ、作って欲しいな。愛妻弁当を」
愛妻弁当……!
思わず睦月君を見つめた。目が合うとニコっと笑ってくれたので、ドキっとした。
「楽しみにしてるね、奥様」
期待されているなら、頑張らなきゃ!
コメント
1件
うわっ、第42話! ついに睦月君が「好き」って言ったね…! しかもキスが前回と全然違って、先生が「知らないキス」って感じてるのがエモすぎる。でも先生の「わからない…」って戸惑いもめっちゃリアルで、急展開すぎて読んでるこっちも一緒にドキドキしちゃったよ。あと、甘いムードからビジネスモードにすぐ切り替える睦月君、7歳年下なのに「行動力がものを言う」って頼もしすぎる。愛妻弁当って呼び方、ずるいわ…これはもう恋人同士って認めちゃいなよ、先生!次が待ち遠しい🔥