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クールキッドは、ゆっくりとセブンの腕から離れた。
その動きは、小さいのに決定的だった。
「……パパと、いっしょにいたくない」
静かに言う。
セブンの手が、空を掴む。
「クールキッド」
呼ぶ。
でも——
クールキッドは、振り返らない。
「……お兄ちゃんと行く」
はっきりと。
迷いなく。
拒絶。
セブンの表情が、固まる。
「……何言ってる」
低く、押し殺した声。
クールキッドは、エリオットの方へ寄る。
「パパは」
一瞬、言葉を選ぶ。
「……ぼくのこと、きめるから」
その言葉が、突き刺さる。
セブンの息が、止まる。
「だから、やだ」
完全な拒絶。
エリオットが、優しく言う。
「……今すぐ決める話じゃない」
そのまま、ゆっくり立ち上がる。
「今日は、とりあえず俺の家に泊まろう」
クールキッドの視線が上がる。
「お兄ちゃんの家?」
「うん」
セブンの視線が刺さる。
でも、そのまま続ける。
「しばらくは仕事もできないし」
火事。
現実の理由。
それだけじゃない。
セブンは、何も言えない。
止める言葉が、出てこない。
エリオットが手を差し出す。
「今日は、うちで落ち着こう」
クールキッドは少しだけ考えてから、
その手を取る。
「……うん」
セブンの胸の奥に、冷たいものが落ちる。
“拒絶”が、形になった。
⸻
ドアが閉まる。
二人の気配が、消える。
静かな部屋。
セブンは、その場に立ち尽くす。
何もない空間を、見ている。
「……」
ゆっくりと、息を吐く。
頭の中に浮かぶのは、
さっきの光景じゃない。
もっと前。
もっと、深いところ。
Noli。
あいつのやり方。
あいつの“執着”。
「……諦めるわけない」
ぽつりと、呟く。
会ったことはない。
でも、知っている。
一度狙ったものを、
あいつは絶対に手放さない。
時間なんて、関係ない。
何年でも。
何十年でも。
待つ。
潜る。
侵す。
「……」
セブンの顔が、曇る。
嫌な想像が、浮かぶ。
あり得る未来。
最悪の形。
「……まさか」
呟く。
でも、すぐに。
首を振る。
「……ない」
否定する。
強く。
「……あるわけがない」
それでも。
不安は、消えない。
⸻
——夜。
エリオットの部屋。
簡素なベッド。
クールキッドは、眠っている。
静かに。
小さく、呼吸を繰り返す。
エリオットは、その隣に座っている。
少しだけ、身をかがめる。
そっと、頭に手を置く。
優しく、撫でる。
「……ごめんな」
小さく、息を吐く。
「3人で一緒に暮らせなくて」
眠っているから、返事はない。
それでも、言う。
「……だって」
少しだけ、苦く笑う。
「ばれちゃうだろ?」
静かな部屋。
時計の音だけが響く。
エリオットの目が、ゆっくり細くなる。
その表情は、
昼間とは違う。
もっと、冷たい。
もっと、深い。
「なぁ」
囁く。
「c00lkid」
呼び方が、変わる。
「ちゃんと主役にしてやるよ」
そして——
静かに、笑う。
「ショーの幕開けだ」
⸻
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