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麗ちゃん激重い😭🥲🥲🥲🥲🥲 頑張りすぎています 本当に報われて下さい🙏🤯🤲🫵🙏😭
痛い、痛い。
走る度、張られた頬と蹴られた脇腹が風に触れてジンジンと痛む。
それでも、走らなければならない。
頭上から降り頻る細雪が少女の髪裾を濡らし、冷たく澄んだ空気は肺を強ばらせる。
家まで、あと少し。
「はぁ、はっ、はぁっ─────あ、っ」
そう思った瞬間、何かに躓いて転んでしまった。幾つものパンやインスタントラーメンがサイズの余ったダッフルコートの中から滑り落ち、ガラガラとアスファルトに転がる。
少女は暫し痛みに顔を歪めたが、はっと慌てて食料を腕に掻き集め、辺りを見回した。
良かった。誰も居ない。
人気のある道を通るな。
目立つ動きをするな。
涙も怯えた顔も見せるな。
少女は歯を食いしばり、再び帰路を駆け出した。
「Молодец. 麗。」
少女の母親は溜息混じりに煙を吐きながら茶髪を掻き上げ、そして冷たい手で娘の腫れ上がった頬を撫ぜた。
母親は手をあげない。罵倒しない。けれど愛すこともしない。
父親からの「調達」の命令に抵抗する度傷を増やす少女に、いつも母親は同情など無く、寧ろ無感情な様子で言う。
「Бедный жеребенок. Если завтрашняя морковка ценна, лучше быть немного бпослушным. 」
哀れな仔馬。明日のニンジンが惜しいなら、もう少し従順になるべきだ。
皇麗は、ひどく汚れた籠に生を享けた。
両親は手に職を付けず、窃盗と違法取引でその日を暮らす毎日。窃盗に至っては未だ幼い彼等の子供達も強制的に躾けられ、馬車馬の如く扱われる始末だった。そして少しでも拒否しようものならこの姿だ。
当時10歳。麗は、今日もその小さな身体いっぱいに罪を抱えて帰ってきた。
絶望しそうな程に汚れた籠の中でそれでも少女が絶望せず居られたのは、守りたくてやまない存在があったからだ。
四つ下の、命という妹がいた。
「お姉ちゃん、いっしょに雪だるま作りに行こう!」
無邪気で素直で、こんな環境の中でも、盗みが下手だと腹を蹴られても、命は自分のように笑顔を失わない。麗は罪悪感の味のするパンなんて美味しいと思えないし、いつ近所の人に見られるか分からない外遊びなんて少しも楽しくなかった。けれど命は「普通」の子供のように美味しい、楽しいと頬を染めて笑う。
それが哀しくて、憐れで。
こんな家に産まれ着いた所為で、私よりも幼くしてその真白な心に罪を背負わされた、かわいそうな妹。
「晩ごはん取ってきてからね。
今日、姉ちゃん当番だから」
妹だけはどうか、いつか普通の生活を送れたら。
麗は命の笑顔を翳らせない為だけに、生きていた。
幼かったその当時は。
命は、もういない。
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