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夕方。
スコットランドの家の前に、小さな車が停まった。車から降りたふたりは、どこか名残惜しそうに、でも確かな足取りで玄関へ向かう。
仏「……久しぶりだったね、二人きり」
英「……はい。正直、少し落ち着かなくて……でも、楽しかったです」
仏「そっか。僕もすごく嬉しかったよ。なんか……恋人っぽかったじゃん?」
英「な、何を今更……っ」
フランスはくすくすと笑いながら、インターホンを押す。
ピンポーン。
しばらくして扉が開き、スコットランドが出迎えてくれた。
スコ「おかえり。ふたりとも、良い顔してるねぇ」
英「……そんなに変わりますか?」
スコ「ふふ、少なくとも、朝よりずっとやわらかい顔してるわ。よし、じゃああの子、呼んでくるね」
スコットランドが軽やかに奥へ引っ込むと、しばらくして、小さな足音とともに、
「ミャアッ!」
と鳴きながら白いもふもふが勢いよく飛び出してきた。
英「ミル!」
仏「おーい、こっちだよ!」
ミルはまっすぐイギリスに飛びつくと、そのまま胸にスリスリと顔を押しつける。
イギリスは少しよろけながらも、慣れた手つきでその背を撫でた。
英「……寂しかったんですか? ちゃんといい子にしてましたか?」
仏「僕たちの方が寂しかったよ。ね、ミル」
ミルはにゃあとひと鳴きして、今度はフランスの足元に擦り寄る。
フランスはしゃがみこんで額を指先でつつく。
仏「……今日はね、いい子で待っててくれたご褒美に、君の好きなちゅ〜る用意してあるんだ。帰ったら一緒に食べようね」
英「……甘やかし過ぎでは?」
仏「だって一番頑張ってくれたの、ミルじゃん。お留守番、ありがとう」
スコットランドがにこにこと様子を見守る中、ミルはふたりの間でご機嫌そうに尻尾を揺らしていた。
スコ「……またいつでも預かるからね。遠慮せず、またデートでもどうぞ」
英「……ありがとうございます」
仏「その時はまた頼っちゃうかも。今日は本当にありがとう」
帰り道。
後部座席でキャリーケース越しにまどろむミルを時々覗きながら、ふたりの手が、そっと触れ合った。
仏「……ね、次はどこに行こうか」
英「……あまり遠出はしない方が、いいかもしれませんね。ミルも、一緒に」
仏「……そうだね。じゃあ、次はミルも楽しめる場所にしよっか」
今日も、小さな家族の時間がまた、少し深まった。