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bebe おただいま
<ぺいんとside>
怒涛の展開が襲うメデューサ号から脱出し、自由を手に入れた俺たちはアジトで衝撃の事実を知った。
「「……え?」」
残り一口になったケーキが、フォークから離れて皿に落ちる。
tr「あれ?ジョンさんと会わなかった?」
トラゾーがハテナを浮かべた顔で問うてくる。
sn「イヤイヤ、会う訳ないじゃん……僕たち空飛んでんだよ?」
しにがみが上を指差して、俺たちは同調するように頷く。
tr「いや~実はさ、エリトラを持って救助して貰う予定だったんだよね!」
「もしかしたら、入れ違いになったのかもしれないけど」
そう言ってトラゾーは、ビートルートスープに口を付ける。
……本当に食い合わせ悪いな、このメニュー。
kr「だから着地地点に向かうって言ってたんだ…」
pn「…いや、それでも遅いけどね?」
俺はそうツッコミつつも、髪を少し伸ばすように触る。
さっきの爆発のせいで髪の毛 絶対『へ』の字に曲がったよな?
……いや、正確に言えばギリ『く』か?
何とか『し』位に直せないかな……
sn「……、!じゃあ道化師がそれを使って生き残ってる可能性があるかも、……。」
その言葉にハッとする。
出来ないことは無い。俺たちが脱出しても、すぐに船が落ちた訳じゃない。
室内の温度が変わったようにひんやりとする。
それを察したトラゾーが、落ち着かない様子で指先を絡ませつつも、気まずそうに口火を切った。
tr「……そういや、帰って来て直ぐで悪いんだけどさ、すっかり探偵団に依頼が来てるんけど……」
そう、俺たちは裏の顔で盗賊のPKST団として活躍しているが、表向きには謎をすっかり解き明かす探偵として活動している。
しかしどちらもそこまで頻繁に動くことはなく、平和な世の中に合わせて日常組という活動者も行っている。
戻ってきたトラゾーが机の引き出しからガサゴソと取り出した数枚の書類を受け取り、ざっと目を通す。
pn「森の奥にある古い洋館……、?孤児院……それにしては人里離れてるけど」
俺の頭にはまず検索画面が表示される。
そこに入力するのはもちろん。
・湿気:強─天パダメージ【大】
・食事:貧相─精神ダメージ【大】
この通りだ。間違いない。この手の古い洋館は指の数を越えてる!
カスカスのパンと時々盗んで食べる生の魚とか……思い出すだけでも酷いものばかりだ。
今回も同じような感じなんだろう。
kr「ぺいんと……聞いてる?」
突然項垂れた俺に、クロノアさんが心配そうに顔を寄せる。
(今すぐあの金色の衣に包まれて、プリプリのエビが……)
顔を上げて悲しげな顔を隠そうともせずに、ポツリと呟く。
pn「揚げたい……」
kr「ぇ、誰に?」
面倒になって頬杖をつくと、相当参ってると思われたらしい。
「……何を託したいのか分からないけど、君が居ないと何もならないし……探偵としてぺいんとは、」
俺はそれを無視した。
<しにがみside>
tr「実はさ、ぺいんと達が帰って来たら息抜きに旅行でもしようと思ってさ、予定してた旅館のオーナーについて調べてたんだけど」
スッと出された新聞を見やると、華やかな装飾を身にまとった見覚えのある人物が立っている。
kr「……これ、ラコロンドじゃない?」
sn「ホントだ……あの時とは顔が違うけど、衣装からして、!」
13年前……サーカスの劇団員が数名と孤児の子供も参加していたらしい。
tr「……この屋敷の現状調査をして欲しいって依頼。」
「匿名で。」
トラゾーさんの後ろにある空気が揺れたのを、僕は見逃さなかった。
「不自然だったのは……俺が調べ始めた直後に依頼が来たってことだな。」
「いや~、有名人って大変よねー。こんなにタイミングが良いとむしろ景気がいいね!」
手渡された新聞記事を読み進める。
森の洋館についての内容と、 それを取り上げた記者の瞳の色についての記述にも一通り目を通した。
─Cameron Taylor─
この記事を書いた人であろう女性の写真と名前がプリントされている。
kr「トムの妻の名前と同じだ、。」
<トラゾーside>
sn「……、!ホントだ!!確かルビーでしたよね?宝石!、本人かな?」
tr「???…何々?ルビー?知り合い?」
「それでその人結構有名な記者らしくって、この屋敷について話を聞きに行ったんだけど……」
彼女は死刑宣告された時のように、恐怖と諦めを浮かべた表情をしていた。
「屋敷に訪れた記者が次々と行方不明。もしくは自殺とか事故死って噂が立ってる。」
「要するに、『揉み消されている』ってことだ」
飲み終わったスープを置いて、資料を纏めていく。
「俺が偵察に行くから、一週間ぐらい経っても戻って来なかったら準備だけしといてよ」
「……まぁ、その前に着いたらすぐ手紙を送るけどさ。」
机でトントンと紙を揃えて、空気を変えるように明るく言った。
「何もなかったら終わったあとで旅行にでも行こうよ!」
tr「まぁ、とにかく今日はゆっくり休んでよ。命からがら逃げ出して来たから、トラソの絵画とダイヤの馬の置物、消失したんでしょ?」
呆れを含ませた口調で問いかけると、ぺいんとは図星のように頭を下げた。
──すぐに顔を上げて叫ぶ。
pn「ぅ”、生きて帰って来れたんだし!結果オーライよ!」
撮影に関してはトラゾーが撮り溜めていた動画を投稿してくれてたお陰で、変な騒ぎにはなっていないようだった。
それから少しの間の期間は、動画を撮ることに専念した。
ようやく日常組としての歯車が、ゆっくりと動き出した。……筈だった。
フッと意識が戻って目を開くと、閉鎖的な空間が広がる。
pn「……は。」
寝起きの頭でも分かった。此処は牢屋だ。
周りを見渡すとネームタグが見えるので、いつもの三人だろう。
トラゾーは、多分例の森の洋館に偵察に行ってて捕まらなかったんだろう。
……つくづく運の良い奴だな。
俺が考え事をしていると、看守の巡回の足音が聞こえてきた。
▽
「ようやくアジトに戻ってきた三人。」
「いや、二人だけで盛り上がってないで、ルビーって何なの!??」
13年前の記事に書かれていた、怪しい情報と悲劇の昔話……
「じゃ、俺は偵察行ってくるから!ちゃんと待ってろよー!」
「日常がようやく戻ったかと思ったら、え?もう捕まっちゃったの!?」
好奇心と期待、不安がせめぎ合う心情の中現れたのは……
次回
「昨日までの死者。」
~俺と手の平でshall we dance?~
NV:トラゾー
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