テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
柘榴とAI

441
#没入感フィクション
柘榴とAI

391
柘榴とAI

298
「相手のサポーターは、この状況でも間違いなく私を監視してるよ! そっちも気合入れてよー!?」
『無茶言わないで下さいよスリー! 私なんかに白川さんと同じサポート能力を求めないで下さい! 貴女の速度に合わせるだけだってヒーヒー言ってるんですから!』
ウチの担当サポーターからは、相変わらず悲鳴の様な声が聞こえてくるが。
やっばい、シックスは本当にヤバイ。
中身があのゆるふわ小動物みたいな夢月ちゃんだとは思えない程、ビリビリと肌で危険な雰囲気を感じ取ってしまう程。
さっき接近出来たのだって、初見だからどうにかなったに過ぎないのだ。
というか、初見でも対処されてしまったと言って良いだろう。
更には追撃したところで、こっちが撃つ前に銃を蹴っ飛ばされるし。
それでも追いかけてみた結果は、その場で思いついたとは思えない程の反撃。
私の事前資料は相手に伝わっているのは承知していたが、まさか本番一発目で対処されるとは思わなかった。
どんなに情報があろうと、一対一ならほぼ“初見殺し”が出来る。
そういう自信を持っていた程、このキャラ……3daysにはステータスを振っているのだ。
感覚が追い付かなかろうと、ゲームだからこそ“失敗さえ予測した状態”で動き続ける。
これが出来ていたからこそ、キャラクターを扱えていないと思われる事無くここまでやってきた。
此方の感覚が追い付かない所を補助する為に、運営から専用装備を作って貰ったくらいだ。
“強化外骨格”とも言える、全身に取り付けるメカメカしいサポート装備。
思いっ切りファンタジーだし、普通こんな物を付けたら速度なんか出ないでしょうって話なんだけど。
そこはゲームという事で、これまで以上に私のキャラは強化された……筈だったんだけどなぁ。
「まさか出会ってほんの数秒の相手が、ちゃんと狙った反撃してくる上に。まさかの二手目にはキル取られる所だったとか……やっばいねぇ、ムッツキーちゃんは。こりゃウチの旦那が絶賛する訳だ」
『え、え? さっきのシックスからの攻撃、受けてたら終わってた感じですか? 此方から見ていると、とにかく乱射した様に見えましたけど……』
「ちょっとー、ちゃんと見なよ~。反射的に構えたってのに、サイトを通してシックスが真っすぐこっちを見てたのが分かったよ? 本気でゾッとしたわ」
むしろ銃を正面に持ってくる前から分かった。
回避行動、そして反転。
再びシックスに向かって駆け込もうとした私に対して、相手は……既に、真っすぐ此方を見つめていたのだ。
行動予測、そして次の一手を予め決めていたとしか思えない。
それくらいに、相手の行動が早かったのだ。
その瞳を真正面から受け止めた瞬間……「あ、これは銃を向けられる前に逃げないと不味い」って思った程だ。
この選択がもう少し遅ければ、多分あのまま数発は貰ってその場に倒れていた事だろう。
『ほ、本当にあの女の子なんですよね? 謝恩会に居た、あの小っちゃい可愛い子なんですよね?』
「うははっ、だよねぇ。私も今おんなじ感想だわ」
思わず冷や汗を流しつつ、なるべく足音を立てない様にして移動。
本気のダッシュは、相手を見つけてから。
ただただ走り回るだけじゃ、相手に居場所を教え続ける様なモノだから。
なので、慎重に建物内を進んでいくと……。
え? うそ。
向こうの足音が、めっちゃ聞えて来るんですけど。
「これ、どう思う?」
『シ、シックスは隠密装備と言う訳ではありませんから……もしかしたら、環境と装備が合わなかったとか……そういうのでは?』
「いや、それは無いねぇ~。そんなミスをする子だったら、ここまで生き残ってないよ。というか、そんなの“あのサポーター”が許すはずない」
普通のプレイヤーなら、十分にあり得る事だろう。
しかし今私が戦っているのは、賞金首の6番目。
何度相手の戦闘映像を見ても、私には理解出来ない事が多かった。
どうして今そんなことするの? 何故そんな恰好で、しかも何故こんなに生き残っていられる?
色々と疑問に思う事ばかりだったが、それでもソレ等の行動は全て“結果”に繋がっていく。
偶然、そんな風に思えてしまう様な場面ですらかなり多かったのに。
しかし運だけでは説明のつかない実績を、6keyは残し続けているのだ。
だからこそ、コレは何かの合図。
そもそも近接戦や暗殺の得意な賞金首が、こんなにも派手な足音を立てる筈が無い。
コツンコツンと革靴の踵が地面を蹴る音、それが静かな廃工場内に響き渡っているのだから。
「誘ってる、間違いなく」
『何かしらトラップを仕掛けたって事ですかね……すみません、今回はフィールドカメラが少なくて。私の方では大した確認が取れません……これは、相手も同じ条件の筈なんですけど』
だとすれば、まだ相手が私を捉えているとは考え辛い。
だからこその、この“誘い出し”なのだろう。
一応PV撮影用の戦闘だし、やっぱり派手に戦う為にも……ここは、向こうの誘いに乗った方が面白いんだろうけど。
でも、今のシックスの装備でトラップ?
それこそ爆発物なんかを簡易的に仕掛けたとかなら分かるけど、先程私の速度を見せたばかりだ。
だとすれば、そんな安易な方法で攻めて来るとは思えないのだが。
などと、思考を巡らせていれば。
「マジかぁ……やってくれますねぇ」
今度は何やら金属を叩く様な音が、工場内に響き渡って来る。
もうこれは完全に、“出て来い”と言っているな。
誘っている云々ではなく、真正面から戦おうと伝えて来ている証拠。
嘘でしょ……確かに向こうも近距離特化だけどさ。
スピードはこっちの方が圧倒的に上、しかも現状シックスの装備はハンドガンを二丁。
9mmと50AE。
これで真正面から勝負を挑んで来るとか……本気?
音のする方向へと進み、チラッと覗き込んでみると。
「かぁぁ……度胸あるわぁ、あの子」
『か、完全に罠じゃないですか!』
さて、それはどうかな?
相手は工業機械の密集地のど真ん中に突っ立っていた。
しかも今度は壁際、つまり逃げるならまた左右の隙間。
それでは先程と同じ結果になるでは? それとも走り抜けるという行動をアレで封じたつもりでいる?
いや、まさか。
此方もプレイヤーだと分かっているからこそ、そんな単調な作戦を考えている訳がない。
私の身体能力と、この装備の能力を把握しきれていない可能性だってあるけど。
だが今の私なら、もしも左右どちらかに飛んで逃げた所で、後ろの壁に着地しながらすぐに追撃する事だって出来るのだ。
なのでやはり、予想出来るのは……正面からの、一騎打ち。
小難しい作戦を練ったところで、自分の戦闘範囲が安定しないと分かったからこそ。
実力全てを使って真正面から倒そうとして来た……という感じかな?
きっと、先程こっちがすぐに回避行動を取った事により、攻撃さえ出来れば次のチャンスは来ると思ったのだろう。
確かに、さっきと同じ状況になったらそうする他ないかもねぇ~。
けど。
「次で決めるよ」
『本気ですか!? 相手、めっちゃ無表情で近くの機械を銃で殴ってますけど! 怖い怖い怖い! 対面するとシックスってこんなに怖いんですか!?』
私の視界さえも共有されているサポーターからは、そんな悲鳴のような声が上がるが。
向こうが“ソレ”を望んでいる上に、この真正面からの勝負は映像としては美味しい。
更に言うのなら……私にも、小賢しい戦法が取れないというのも確か。
とにかく駆け込んで、一気に片を付ける。
それだけを続けたスプリンターだからこそ、対処するのなら“瞬間的に目の前で”行動を起こすしかないのだ。
これで伊丹妻です、とか言うと性格違いすぎだろってサポーターの皆さんには笑われたけど。
でも私自身、そういう戦闘スタイルの方が好きなのだ。
良いよ良いよ、その誘いに乗ってあげるよ。
今時の若い子が何を考えてこの状況を作ったのか。
それを確認するって意味でも、私としては“美味しい”と言えるのだから。
だからこそ。
「行くよ! シックス!」
思い切り叫んでから、銃を構えて突っ込んだ。
距離は100mも無い。
普通なら致命的な遠さだけど、ゲーム内の私なら大した距離じゃない。
ほんの数秒、それだけで詰められる。
思い切り姿勢を下げつつ、威嚇射撃しつつ。
とにかく、相手に向かって突き進んでみると。
「…………」
不思議な事に、相手は特別な行動を起こさない。
というか、回避さえしない。
防弾スーツを引っ張って頭を守りつつ、此方を見もしないでハンドガンでの威嚇射撃。
え、え? ここに来て、本当のヤケクソ?
若い子だったら、確かにあり得ない事では無いけど。
でもあのシックスが、接近してくる相手さえ見ずに防御?
なんて思っている間にも、本当にすぐ近くまで辿り着いてしまった。
手にしているショットガンを捨て、此方もハンドガンを抜いてから。
後はもう懐に飛び込み、相手の至近距離から撃ち抜けば終わり。
そんなありきたりな結末を予想出来てしまった……次の瞬間。
スッと、ほんの少しだけ。
シックスが、横にズレた。
見てもいないのに、本当にギリギリで特攻を避けたというのも驚きだが。
でも、甘い。
この距離は、完全に私の射程距離。
装備を使ってすぐにでも急反転して、タックルする勢いで相手に取り付けば私の勝ち――
「え?」
その単純な行動が、出来なかった。
急に私の身体が固定されたみたいに、動けなくなった。
それどころか、視界端にあるHPゲージはグングンと減少して行き。
ゴリッと音を立てながら、後頭部に押し付けられる銃口。
意味が分からず、視線を下げてみると。
「なるほど、ね。こっちから“見え辛い”を作る為に、面じゃなくて“点”でトラップを敷いたかぁ……」
私のお腹に、壁から生える細い鉄の棒が突き刺さっていた。
こんな廃工場だ、建物自体もかなりボロボロ。
柱の腐食している部分に対して、コレを無理やりぶっ刺していたのが……さっきの鉄を叩く音か。
そんでもって、真っすぐ突っ込んで来た私は。
シックスの身体で視界が遮られ、この存在その物に全く気が付く事が出来なかった。
退いた先にコレがあっても、人間の視界ってのは全体を捉えるもの。
人間の指程度の太さの、棒の切っ先だけが見えた所で……誰であろうと、間違いなく反応が遅れるだろう。
トラックなんかが棒状の物を積載する時、絶対赤い旗を付けないといけない理由がまさにコレだねぇ……。
なんて、思わず感心してしまったのだが。
「私の勝ちだ」
動けないでいる私に対して、賞金首の6番目は容赦なくトリガーを引き絞るのであった。
乾いた銃声と共にブラックアウトする視界が、確かな敗北を知らせて来る。
けど……。
「すっご! 夢月ちゃん凄い! あんなの即席で思いついたの!? 動き回る相手なら、止めちゃえば良いって。あんな形で脚を止められたの、初めてなんですけど!」
『わ、わぁ……さっき串刺しにされた人が、今度は元気な声上げてるぅ……』
キャラがリスポーンされるまでの間、私は興奮状態でサポーターへと声を上げ続けるのであった。
ヤッバ! あの子、見た目に反して容赦ないわ!
というか、物凄く頭良い上に冷静だわ!
そりゃシックスっていう賞金首が強い訳だよ……瞬間的な発想力が化け物レベルだ。
コメント
1件
もうめっちゃ熱かった!!スリーの「次で決める」からのシックスの罠、まさかの“見えにくい棒”で串刺しにしてから後頭部に銃口って……頭良すぎるだろ!!しかもあの距離で回避しながらトラップに誘導するとか、シックスの戦闘センスがガチで化け物なの分かったわ。リスポーン後のスリーが興奮して褒めてるのも最高に好き。次回が待ち遠しい🔥