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ことおと
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nmmn注意
🦊👓️🦊
左右非固定相手固定
ご本人さまには関係ございません
捏造注意
番外編です!
時系列は出逢いと初恋はかみさまの間。
svさんがでてきます
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よみがえる
すっきりとした冬晴れの朝。境内の掃除をしていると、桜の木の隙間からぴょんと緑色のなにかが飛び出してくるのが見えた。
それは人のかたちをしていて、口から覗くギザ歯と黄緑色の髪を持ったイケメンだった。彼には見覚えがある。
「もしかして……シヴァさん!? 久しぶりだね、元気だった?」
「やっほーどぬちゃん、久しぶり~。元気元気! どぬちゃんこそ、前より元気そうじゃん」
脱力感のあるその声に、懐かしさすら覚える。最後に会ったのが……八十年前? 気まぐれで神出鬼没な蛙だから、もしかしたら俺の気づかないところで俺のことを見ていたのかもしれないけど。俺はそのことを覚えていないけれど、シヴァさんは俺が人間だった時からの付き合いらしいから。
「そっか、それはよかった! でも、なんで急にここに?」
「そりゃもちろん、どぬちゃんの雰囲気が変わったからね~」
シヴァさんは少し変わった蛙で、生まれつき半妖の体を持っている。だから人ならざる者にのみ、その真の姿が見え、人間にはただの蛙に見える。
この世には妖怪も半妖もたくさんいるけれど、シヴァさんは特に、変化を捉えるのが上手なのだ。
「雰囲気変わった? そうかなぁ……でも、シヴァさんが言うならそうなんだろうね」
「変わった変わった。あ、もしかしてどぬちゃん最近人間と話した?」
何の脈略もなく言い当てられて、ひやっとする。もしかして本当に見られていたのかもしれない。
「えっ、な、なんでわかったの!?」
「いやー、どぬちゃんからめちゃめちゃ濃く人間の香りがするから。ほら、蛙って鼻いいし」
「え初耳なんだけど……。まあ人間には会ったけどさ、そんなにべたべたくっついたりは──」
俺の頭にはもふくんが来てからの記憶が思い起こされていく。
神社ツアーと銘打ってもふくんを恋愛成就の木へと連れていった時。手を繋いだ。
もふくんが人間の世界にある色んなものを持ってきてくれた時。嬉しくなって、抱きついた。
もふくんがバイトと大学とで忙しくて、寂しかった時。頭を撫でられた。
これでベタベタしていないというのは、無理にも程がある。
「……ベタベタしてるかも」
「してるの!? えっ人間と? どんなやつ!?」
シヴァさんが血相を変えてぐいっと詰め寄る。いつも穏やかな彼がそんなに感情的になるなんて珍しい。仕方なく話すことにした。
「もふくんっていう、黒髪で紫色の目をした、メガネかけてる頭よさそうな人……」
「……」
「いやシヴァさんから聞いたのに無反応!?」
あまりにもシヴァさんが何も話さないので、思わずツッコミを入れてしまう。途端、にやにやとしはじめた。……嫌な予感。
「なるほどねぇ……? どぬちゃんはそのもふくんって人間が好きなんだ?」
「なんでそうなるの!?」
もふくんのことは好きだけど……!! シヴァさんの言ってる好きはそういうのじゃない気がする。
「あまりにも濃すぎるもふくんの香りに隠れてたけど、どぬちゃんからほのかに恋の香りもするんだよね~」
「なんでそこまでわかるの……??」
正直ちょっと引く。香りでわかってしまうというのなら、俺の今の気持ちも、何もかも筒抜けではないか。ふと、シヴァさんは柄にもなく真剣な顔になって、俺に語りかける。
「ねえ、どぬちゃん。大切な人のことは、自分で思い出すんだよ」
「……え?」
目をしばたたかせる。大切な人? 人間だった頃の話だろうか。シヴァさんは、今まで俺に過去を思い出せとは言ったことはなかった。
今、思い出さなければならないのだろうか。過去を。
「一つ、教えてあげるとね」
シヴァさんは前を向いている。俺はその横顔を、じっと見つめるしかできなかった。
「俺はどぬちゃんと別れてから、しばらく黄泉の国に行ってたんだ。用件は秘密だけどね」
黄泉の国。死後の世界、と呼ばれる物。シヴァさんが、あそこに? 首をかしげる俺をちらりと見てから、シヴァさんが言葉を紡いだ。
「そこで最近、黒髪で紫色の目をした人が転生したらしいよ」
ーー
「……」
夜空は月明かりすら見えないような、厚い雲に覆われている。境内で、一人恋愛成就の木の下に座った。そこはなんだか暖かくて、優しくて、どこかもの悲しくて。俺にやすらぎを与える。
あのあと、シヴァさんはすぐにいなくなった。なんでもかなり忙しいらしい。彼のあの高い能力は神々の目に留まり、休む暇もなく仕事に追われているそうだ。
「そんなに忙しいなら、来なくてもよかったのに」
そこまでしても、俺に伝えたかったのだろうか。
シヴァさんに言われたことを頭の中で反復する。大切な人のことは、自分で思い出す。黄泉の国で、黒髪で紫色の目をした人が転生したらしい。
「……わかんない」
わからない。人間だった時のことなんか、覚えているはずもない。もふくんが、何か関係しているのかな。知っているのは、ずっと前からあったこの桜の木だけ。
知らなければ、ならない。
「お願い。教えて、恋愛成就の木」
少しだけ力を籠めて、桜の幹にそっと触れる。刹那、記憶が流れ込んできた。
「その瞳、綺麗だね」
俺の知っている彼より少し幼い彼が、笑いかけた。
「へえ、どぬくっていうんだ。おれはもふ! よろしく、どぬくさん」
差し出された手を、取った。
「どぬちゃんどぬちゃん! みんなで遊ぼ!」
手を繋いだまま、俺を引っ張ってくれた。
「好きだよ、どぬちゃん」
少し大人っぽくなった声で、告白された。
「……散歩でも行こっか」
優しい眼差しで俺を見つめ、隣に立ち、そっと車道側に回った。
「……」
そして、何も言わなくなった。言えなくなった。赤、赤、赤。全てが赤黒く染まって、世界が色を失った。
「あああ……」
うめき声に近い、掠れた声が漏れる。どうして忘れていたんだろう。どうして、どうして忘れることができるのだろうか?
忘れたくなかった。君とのおもいでを。
忘れたかった。俺の罪を。
シヴァさんが今まで言わなかったのはきっと、俺を傷つけないようにするためだったのだろう。でも、これはいつか思い出さなければならなかった。そのいつかが、今だったのだ。
俺が、縛りつけてしまった。絆を、作ってしまった。もう、後戻りはできない。俺が言うか、もふくんが気づくか。知られたら、きっと俺は嫌われてしまうのだろう。もふくんの初恋も、俺の恋も、終わる。それなら。
「それなら、せめて嫌われるその時までに、もふくんを諦めてしまおう」
だから、今だけは。今だけは、君を想って泣くのを許して。
ーー
番外編:よみがえる 完
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