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もう夜がふけていて、藍色に染まりきった背景に薄い雲がかかり、そのまた奥にほのかに光を放つ三日月が静かに存在していた。
視線を下げると少し遠くのほんのりとした灯りの下で誰かが佇んでいる。
翠『 誰だろ 。 』
俺は小さくそう呟いて、シンと静まり返った町の中にある唯一の光へ歩いた。
自身の足音以外には顔の隣をそよ風が通過する音しか聞こえなかった。
翠『 らんらん ? 』
翠『 らんらん ! 』
近付けばその人物の背中に見覚えのあった。
俺の好きな人だった。
俺は彼を二度呼び、彼はそれに気付いたようで俺の方向に身体を向けた。
明るく笑う彼の表情は何故か暗いように見えた。
桃『 __ 、 』
らんらんがなにかを発そうと口を開いた。
ドンッという音がした。
血が流れた。
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翠『 は ッ 、… … 。゛ 』
強く身体を叩きつけられた感覚がした後、理解が追いつかないまま突然目を覚ました。
少しだけ開かれた窓の外から微かに小鳥の鳴き声が聞こえ、薄いレースのカーテン越しに差す太陽光が朝であるということをすちに気付かせた。
翠『 あれ … 、朝 … 。なんで 、ベッド ? 』
手を動かすと、その手はふかふかとした掛け布団を握っていた。
すちは身体の節々からダラダラと汗が吹き出ていて手や足は未だ小刻みに震えたままである。
息も絶え絶えであったが、すち本人はその原因である夢の内容を一切として憶えていなかった。
翠( 床 で 、らんらん と 寝てたはずじゃ 。 )
翠( あれ 、らんらん は ? どこ 。 )
すちには床に就いた記憶などなく、何故今ベッドの上に自分がいるのか理解のしようがなかった。
すちは自分のことを考える前にらんのことを考える悪癖が出て必死に部屋を見回した。
翠『 ふ ッ 、゛は … 、らんらん ? 』
すちは視線を彷徨わせて自身の額に手を近づけるらんの存在を認識した。
らんも戸惑っているらしく右往左往していた。
桃『 大丈夫 ? めちゃ 魘されてたかんじやったけど。 』
翠『 ぁ っ 、え 、大丈夫 だよ … 。大丈夫 。 』
直前まで気が動転していたとは思えない程にすちはいつもの表情を貼り付けた。
らんはいつものすちの表情を見て安心したようで堅かった表情を緩めた。
そんならんを見て、すちは未だ震えが止まらない手を隠した。
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黄『 すちくん どうやった ? 』
翠『 え なにが ? 』
黄『 ぉえ っ !? 覚えてないん !? 』
黄『 折角 の 機会 やったんにな − 。 』
らんとすちはリビングに入って、らんは朝食の準備を始めた。
隙を見てみことはすちに小さく手招きをしてリビングから少し離れた廊下にすちを招いた。
翠『 ちょ 、どういうこと ? 』
翠『 説明 を 求める 。 』
黄『 ぇ っと な ぁ ~ っ … 。 』
すちは困惑したように首を傾けて口を開く。
その後降参したような、手をあげるポーズをしてみことに説明を求めたがみことは両人差し指をイジイジと動かすだけで明確な返答をしない。
そんなみことに痺れを切らしたようにすちは身体を前のめりにさせて声を上げようとした。
桃「 ぉ − ぃ ! 二人とも どこ行った − !? 」
桃「 朝食 出来たんですけど − !! 」
少し離れたリビングから聞こえてきたらんの声ですちの発言は遮られた。
らんの怒りの入った声色が二人を焦らせ急ぎ足でリビングへ戻った。
その最中、すちは『 あとで 説明してね 。 』とみことに耳打ちし、みことはその言葉に首を縦に振らざるをえなかった。
翠『 ごめん 、らんらん … 。 』
黄『 ごめんなさい っ ! 』
黄『 ぇ っ 、一人 で 全部 やったん ? お皿 運ぶん とか 呼んでくれたら 手伝ったんに ! 』
桃『 だいじょ − ぶ 、別 に それくらい 俺 一人 で できるし − 。 』
らんは軽く舌を出して無邪気に笑った。
すちは目を見開いてすぐに後ろ髪を掻いて顔を逸らす。
白い肌を赤く染める原因は考えればすぐにわかることだった。
みことは普段とは違いらんと向かい合わせに座って、半強制的にすちをらんの隣に座らせた。
桃『 じゃ − 、手 合わせて ? 』
黄桃『 いただきます ! 』
翠『 ぇっと … 、いただきます … 。 』
すちがお箸を取る間にみことは皿を持ち食べ物をガツガツと勢いよく小さな口いっぱいに頬張った。
とても美味しそうに頬張るみことを見てらんは困り眉をして愛おしい物を見るように優しく笑った。
そしてすちもそのらんを見て小さく微笑んだ。
黄( じ − っ 、
桃『 ? どしたん 、みこちゃん 。 』
みことは目を大きくさせてその光景を目に焼き付ける。
少し不自然な行動にらんは頭上にハテナを浮かべ目を丸くさせた。
みことはらんの言葉に答えるように二人をジッと見ながら言葉を発した。
黄『 なんか 父さん と 母さん 見てるみたい 。 』
その言葉を聞いて二人の頭に雷が落ちたような衝撃がした。
すちは目を点にさせ、次に白黒させて顔を酷く紅潮させた。
翠『 っ そうなの ? 』
黄『 ぉ ん っ ! 』
言葉を詰まらせながらもすちは平然を装ってみことに疑問を問いた。
みことは大きく胸を張って肯定の意を示した。
黄『 そうやんな ! らんらん っ ! 』
桃『 ぁ ぁ 、うん 、そうだね 。 』
確認を求めるみことに応えたらんは首を縦に振った。
和気藹々とした空気の中、片隅で強く拳を握るらんを知る人物はこの場の誰一人としていなかった。
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コメント
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みぅ🤍🥀ですっ。 12話、読ませてもらいました……。 うわあ、すちくんの悪夢、すごく怖かったです……。あの「ドンッ」って音と血の描写で、心臓が止まるかと思いました。起きてからも震えが止まらないのに、大丈夫って笑顔を作るところ、すごく切なくて。 みこちゃんが「お父さんとお母さんみたい」って言った後の、らんらんの拳を握るシーン……何かを隠してる感じがして、すごく気になります。日常の温かさと、その裏にある影の対比がたまらないです。 次が楽しみです……🌙