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コメント
1件
素敵😊お父様からのプレゼントですね。
──メッセージに書かれていたように家の裏手に彼と二人で回ると、蔦の絡まる煉瓦塀に囲まれた場所があって、上部が丸い木の扉が取り付けられていた。
家を開けたのと同じ鍵を鍵穴に差し込むと、キィー…っと小さく軋むような音を立てて扉は開いた。
中の光景に思わず目を見張る──。
そこには──色鮮やかなツツジや匂い立つ沈丁花、カラフルなポピーやクロッカスなど、春の花々が一面に咲き乱れていた。
「…綺麗…」
中へ足を踏み入れると、たくさんの花が美しく咲く庭園の奥には、背の高い木が一本植えられていて、空へと大きく広がる枝に純白の花が満開に咲き誇る様は、まるで結婚式で白無垢に合わせる綿帽子にも見えるようだった。
咲く花を踏まないようにして木の近くへ寄ると、色の褪せたプレートが立てられているのが目に入った。
プレートには木蓮という花の名と、彼の名前と生まれた日付けとがお父様の手書きで記されていた。
「これ、記念樹ですね…」
口にして、傍らを見やると、
「ええ…きっと、私の生まれた時に、父が植えたのだと……」
青い空に真っ白な花を一斉に咲かせてそびえる木を、彼は眩しげに仰ぎ見た──。