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ウグイのティガを送り出したナッキは、カーサとサムを伴って『メダカのお城(改)』へと戻り、年長のメダカやカエルの殿様や幹部たち、法整備中だったモロコたちやカジカ大臣を集めて聞いた。
「僕の仲間たちが僕を探してくれたせいで困ってしまっているんだ、僕より大きな銀鮒が二十匹くらいなんだけど…… ねえ、どうだろうか、皆さえ良ければここに住ませてあげたいんだけど、駄目かい?」
予想通り、集まった面々はこの問いに対して一様に歓迎の言葉を返すのであった。
シンプルに大歓迎と言う者が大半であったが、中には『更なる抑止力ゲットだぜ』とか『こりゃ覇権国家も夢じゃないな』等という珍しい言葉も聞こえていた、カーサとサムの二人からである。
兎も角、全員がギンブナを迎え入れる事に賛意を示してくれた事を受けて、ナッキは胸を撫で下ろしながら言う。
「良かったぁ、ありがとうみんな! これから来る若鮒の中には僕の親友で、僕よりずっと大きくて強いヒットってフナもいるんだよ! そうだっ! 彼らが来たらヒットに王様を代わって貰ったりすれば大安心だよ! どう? 名案でしょ?」
おおっ! とどよめきが上がる中、いつの間にか集まって周囲を埋め尽くしたメダカ達が例の如く声を揃える。
『メダカの王様はナッキ様』
「え?」
『メダカの王様はナッキ様』
「……」
『メ・ダ・カ・の・王・様・は・ナ・ッ・キ・様』
いつに無く強い口調に珍しく無表情を揃えるメダカたちの前に黙り込む一同。
「わ、判ったよ、僕がメダカの王様だよ、それで良いの?」
ナッキの言葉に返事は無く、代わりに全てのメダカがニッコリと微笑んだのである。
メダカの王様を交代しない事を条件に、ギンブナ達の受け入れは、満場一致で許容された。
まあ、ヒットの立派な様を目にすればメダカも納得するだろう、内心でそんな風に思うナッキであった。
二日が経った。
この間、懐かしい仲間たちの到着を今か今かと待ち続けていたナッキは、城の上を行ったり来たり同じ場所をグルグルと泳ぎ続けてばかりいたので、事情を知らない魚が見れば、ノイローゼか何かの症状に見えてしまった事だろう。
幸い美しヶ池にいる魚もカエルも事情はバッチシ把握している、殿様はナッキの近くでカエル泳ぎをしながら声を掛ける。
「王様ぁ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよぉ! 落ち着いて待ちましょうよ、ほらっ、昔から言うでしょう? カエルは無事帰る、カエルだけに、なんつって、とか言いますよぉ」
ナッキはグルグル回ったままで答える。
「それってカエルにしか対応してないじゃない! ギンブナは無事ギンブナとかウグイは無事ウグイとか意味為してないよね? なんつって、とはならないよ! あああぁぁ、不安だぁー、あああぁぁぁ」
殿様は深い溜息と共に返す。
「まあそれは確かにその通りですけどね、だからと言ってそうやってグルグル回っていたって仕方ないじゃありませんか…… 子供達の情緒的にも良くありませんよ、ご覧になってくださいよ、あそこのおたまじゃくしと子モロコの姿を」
「ん?」
殿様が泳ぎながら指し示した先を、グルグル回りながら見るナッキ。
そこには、『アーフアンダー』と連呼しながら輪になって泳ぎ続けている、二日前に孵ったばかりのおたまじゃくしと小さなモロコ、それを囲んで馬鹿笑いを続けるこちらも小さな子メダカ達の姿があったのである。
「お、おほんっ!」
咳払いと同時にピタリと泳ぎを止めるナッキ。
いつに無く赤らんだ顔に向けて殿様は不思議そうな声を掛ける。
「それにしても一体全体、何がそれ程心配だって言うんです? あれでしょ? 大きくて旅慣れた感じのウグイ、ティガさんがついているんでしょう? 大丈夫ですって、心強くて安心じゃないですか?」
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