5
れんは、泣きじゃくる彼らを見下ろすでもなく、寄り添うでもなく、ただその場に立っていた。
そして、静かに口を開いた。
「たまには思いっきり泣いてみなさい。」
声は大きくないのに、はっきり響いた。
「ここまでよく頑張ったね。偉いよ。」
その言葉は慰めじゃなかった。甘やかしでもなかった。
ただ、事実として告げられた言葉だった。
「きっとみんなに良い将来が待っているさ。
これからも何事も挑戦。
何事も否定ばかりじゃなくて、たまには受け入れてあげて。」
泣き声と呼吸の音だけがその場に溶けていく。
「なんでも最初から諦めるんじゃなくて。
最後まで、本気でやってみたら?
なにか変わるかもよ。」
冴も、凛も、潔も、蜂楽も、玲王も、凪も、千切も、黒名も、カイザーも、ネスも。
誰一人、言い返さなかった。
できなかった。
れんはただ同じ高校生。
制服も同じ。
体格も普通。
特別な光も持っていないはずなのに―――
言葉が、胸の奥に直接落ちた。
心の一番しんどかった場所に、そっと触れられた。
れんはみんなの頭から手を離し、最後にゆっくりと微笑んだ。
その瞬間、風が吹いた。
髪が揺れて、隠れていた顔が見えた。
目も、頬も、まっすぐ。
とても優しくて、
とても暖かくて、
まるで太陽がそこに立っているみたいな微笑み。
泣く理由なんて、もうわからない。
でも涙は止まらなかった。
れんは言葉も足さず、ただ。
微笑んでいた。







