この作品はいかがでしたか?
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雲一つ無い快晴で空が青々と煌めく中、私は大きな手荷物を持ち路地へと歩を進めていた。この両手が塞がるほど多くの荷物を見れば、私がショッピングモール帰りなのは誰もが一目で分かるだろう。
まるで大きな手枷をしているのでは無いかと錯覚するような重さに、夏の猛暑も重なってここは地獄なのかと一瞬考える。
そうだ、帰ったら自分のご褒美にアイスでも食べる事にしよう。
共に同居しているナチスとイタ王の分の衣類や雑貨も買っているんだ。
2人に秘密でアイスの一つくらい食べてもバチは当たらないだろう。
そう決めると私はこの地獄から抜け出す為に、ショッピングで消耗しきった残り少ない体力を振り絞って走り出すのだった。
路地にある家に着くと一旦右手の荷物を置き、鍵で扉を開けようとする。
が、鍵を鍵穴にいれると戸が閉まっていない事に気づく。
今日家を出る時は確実にかけた筈だ。
きっと2人のうちのどちらかが外出した時に閉め忘れたのだろう。
俺は特段気にする事なく玄関へと足を踏み入れた。
「おーい!ナチス!イタ王!荷物運ぶの手伝ってくれ〜!!」
家中どこに居ても聞こえるような声量で呼んだが反応はない。
もしかしてどっちも外出中か?
家に誰もいないのに開けっ放しとはなんとも不用心極まりない。
仕方ないと小さくため息を吐き、そのあまりに重い荷物をリビングへと運ぶのだった。
重労働を終えた所でテレビをつけ愛しのアイスを精一杯に頬張る。
蒸し暑さのせいで滝のように流れ出ていた汗もエアコンのお陰でだいぶ収まったことにより、体の気持ち悪さも無くなり至福の時間を堪能していた。
バンッッッ!!!!!!
突然耳元で銃声のような音が聞こえた。
驚いて辺りを確認すると、世界が真夜中のような漆黒に包まている事が分かった。
それと同時に鼻をつん裂くような血の匂いに襲われる。
辺りを見渡してみても銃が撃たれた痕跡は無いし誰もいない。
自身の体をくまなくチェックしたところで、見つけたのは2日前につけたかすり傷一つだけだった。
さっきまで真昼間だったのにも関わらず突然太陽が消えてしまったとではと錯覚するほどの暗闇に、耳元での銃声音。
急な出来事で判断能力が鈍っているのを自分でも感じた。
とりあえず何があったか確認しなくては。
急いで家の全部屋を探す。
まずは風呂場やトイレ。次に私の自室。その次にイタ王の部屋。
探したところで強盗に入られた形跡が無いし、そもそも部屋の持ち主すらいない。
最後の部屋はナチスの部屋だった。
もうとっくに安心しきっていた私は特段ここも何も無いだろうとたかをくくっていた。
ドアを開けると共に、目の前に広がる光景に信じられず金縛りにあったかのように体が動かなくなった。
そこにはおそらく死んでいるであろう2人の姿があった。
死体は無惨にも四肢を引き裂かれ、乱雑に切られ一部分が無くなっている。
また〇〇されている事から拷問されたであろうことも容易に想像できた。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで………
2人を直視すると猛烈な吐き気が襲ってくる。
我慢出来ずに吐いた俺は吐瀉物と血生臭さの中で意識を失った。
意識を失う直前、微かに
「なんでお前だけ生きているんだ。」確かにそう聞こえた気がした。
ピピピ…ピピピ…
今日もその無機質で妙に頭に響くアラーム音に叩き起こされる。
起きるとそこは自室のベットの上でカーテンから差し込む光に当てられ、今日も清々しい朝がやってきた事が分かる。
だがそれとは裏腹に私の気分は最悪のものであった。
体は汗でびっしょり濡れており、目の下のクマは日に日に色濃くなっている。
少なくともこの悪夢を見始めてから睡眠の質が著しく低下している事は否定しようがない事実であった。
私は良く同じ悪夢を見る。
大体1年前。その辺りからこんな地獄のような物を週に1回くらいの頻度で見るようになった。
お陰で睡眠時間は激減。
もちろん夢を見て起きてしまうと言うのもあるが、何よりそれを見るのがあまりに怖くて寝る前に睡眠薬を大量に飲んでも、体を横にすると目が覚醒し動悸が早くなってしまう。
毎日びっちりと埋まった予定を見て休まなければならない事は分かっていても、どうしても心休まる時間が少ないのが事実だ。
起きたばかりで酷い顔をしているだろうから、冷たい水で顔を引き締めようと思い、未だに震えている腕を納めてから部屋から出て洗面台へと向かった。
鏡を見ると予想は的中。まるで高熱があるのではないかと思うほど青ざめた顔と、顔中から滴り落ちる汗を見るに私の気分が悪いのは一目瞭然だった。
朝の氷水なのではないかと疑うほどの冷たい水道水を顔に打ち付け汗を流す。
青ざめた顔はファンデーションを塗ってなんとか誤魔化す。
後は私が1番得意な偽物の笑顔を貼り付けると、あの酷い顔が嘘だったかのように見違えた。
私には心配をかけたくない奴らがいる。
そうして私はその大切な奴らが居るリビングへと足を進めた。
リビングに行くといつもの明るい声で話しかけてくれる。
(おはよ〜日帝!ねぇ聞いて〜?さっきテレビ見てたんだけど朝のニュースキャスターがさー!)
(朝からうるさいぞイタ王。日帝は寝起きなんだ、静かにしろ。)
(寝起きだからこそioが目覚ましとして覚醒させてあげようと思ったの!)
「元気なのは何よりだが大丈夫だ、もうしっかり覚醒している。」
(だってさ。と言うことで静かにしておけ。)
(はぁ…もーしょうがないなー!ioは優しいからね!静かにしといてあげるよ!)
(その返事もうるさいんだが…)
2人の元気な声を聞くとこっちまで元気が出てくる。
もう随分と気分が落ちていたから助かった。
でも声だけなのも少し寂しいな…
家族とも呼べるほど仲の良かった ナチス・ドイツとイタリア王国 2人の姿は見えない。
2人は一年前にこの世を去った。
ナチスもイタ王も家の中に入ってきた殺人鬼によって殺されてしまった。
犯人は話題沸騰中の今世紀最大の地獄からきた悪魔と言われている連続殺人鬼であった。
人が死ぬ間際の苦しむ姿に興奮し、人肉を好んで食べるカニバリズム思考のイカれサイコ野郎だ。
第一発見者は私だった。
事件が起きたのは3人が共同で住んでいた一軒家。
その日私はショッピングモールで3人が暮らすのに必要な日用品から皆で楽しむための嗜好品まで多くのものを買いに来てた。
出掛けていた時間帯は昼の11時から夜の8時まで。
私が家を開け、呑気に買い物をしていたその時間。
決して短いとは言えない9時間の間に2人は_____
この事件の後から私はあの悪夢にずっと囚われている。
そうそして私は2人を殺した犯人を突き止めるため、探偵になったのだ。
コメント
19件
ちょっ…えっ… 枢軸仲良く探偵だと… わぁわわぁ…(?)
ハッハハハハッハハハジャジャァアァァァアァl(((殴 なんで早くこの作品を見つけられなかったんでしょうか!?