テラーノベル
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これはあるキメラの女の子の話。
ここは、人間と他の動物を合体させる方法を見つけ出す研究施設。
残虐な研究をしていることで問題になっているが、政府はなかなか手を出せない。
何故なら、関わった瞬間実験対象にされるから。
なので、人々は怯えながら過ごしているのである。
その研究施設には、あるキメラがいた。
それは、実験が成功したキメラ。通称K.1
K.1は痩せ細っており、与えられた食べ物もろくに食べない。
「うーん…ほら、食べろ。K.1! 」
罵声を浴びせられて、今日も鞭で叩かれる。
鞭で叩かれても、叫び声などは出さない。
もう、慣れているからだ。
「はぁ…絶対食べるんだぞ!K.1!」
そう言い、スタスタと去っていくのを見届けたあと、K.1はこの牢獄を脱出した。
こんな古びた牢獄を脱出するのはk.1にとっては朝飯前である。
『はぁっ…はぁ…っ 』
少し歩くと、パタッと倒れてしまう。
息が苦しくなりながらも、起き上がり、アスファルトの道を歩いていった。
だが、またパタッと倒れる。
目を閉じると走馬灯が流れた。
大した思い出もないが、唯一残っているのは母との記憶。
『たのし、かった…な』
母の元へ逝こうとしていたその時、目の前に黒猫が現れた。
「貴方が死ぬのは勿体ないわ。生きなさい」
そう言うと、細い指に金の指輪を器用にはめさせた。
「お願い…彼らを助けてあげて」
その言葉を耳に残したのを最後に、K.1は意識を失った。
「あるじ…さま、さま…主様」
寂しそうな声が聞こえる。
まぶたをこすって起き上がると、目の前に美しい男性がいた。
「よかった…お目覚めになられたんですね」
安心したように目を細める。
その色は、透き通った桜色だった。
『おまえ…だれだ?だれ…?あ、だれ、ですか? 』
口調をころころと変える。
「えっと…ベリアン・クライアンと言います」
少し戸惑った素振りを見せたが、名前を言った。
『あ、ベリアンさんって言うんですね。オレはK.1って言うんだ!よ、よろしく』
口調を変えるK.1に違和感を持ったのか、多重人格なのかを聞かれた。
『そうなんです…わたくし三人の人格を持っているんです』
そう言い、これまでの半生を説明した。
人間の肉体の私をベースにライオンとヘビとヤギを合体させたキメラということ。
虐待をされていたこと。
その他被虐的なことを全部吐き出した。
『オレ、これからどうなるんだ?ベリアン』
目尻には、涙が溜まっていた。
目の前のベリアンは、眉を下げ、悲しそうな表情をしている。
「大丈夫ですよ主様。私達が…いえ、私が…たくさん、たくさん幸せを教えてあげますから」
そう言い、ぎゅっと抱きしめた。
優しい匂いがして、少しだけ紅茶の香りがする。
そんなベリアンにすぐに安心を感じた。
『ありがと。ベリアン』
精一杯の笑顔を見せた。
ベリアンに安心させてもらうため。
すると、思惑通りベリアンも嬉しそうだった。
『あの、ベリアンさん…わたくしの名前が欲しいです』
急に自分の頭に名前を付けてほしい欲求が、最高潮に達していた。
すると、最速で名前をくれた。
「ケイネ・クライアン」
嬉しいことに、ベリアンの姓をくれた
名前が欲しいと言ったが、まさかそこまでくれるとは。
本当に…嬉しすぎるプレゼントだった。
『本当に…名乗っていいんだな?クライアンって!』
「ええ、いいですよ。主様」
控えめな笑顔が、可愛らしく見えた。
『あたしこんなに嬉しいの初めて知った。あ、ありがと。ベリアン』
「ふふ、こちらも感謝していますよケイネ様」
その優しい声が、匂いが、心を癒していった。
この嬉しさは、永遠に覚えているだろう。
そう確信した一日だった。
コメント
2件
こりゃまた面白くなりそうな予感........。