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「…ヘリか?」
暗くて外はよく見えないが、窓から感じる風圧と音圧でヘリコプターが近づいている事には変わりないだろう
それに微かに声が聞こえる
だけどモーター音に全て塞がれて何も聞こえない。聞き取ろうとしても、ほぼ無理に等しい
「ッ…」
この手錠と足枷を外せれば外の様子がもっと分かる、どちらとも別に新品という訳じゃない
頑張れば壊せるだろうか
だがそれでアイツらに気づかれたら元も子も無い。
それに隣で眠るこの人を起こしていいのだろうか。
もちろん、この人だってそこまでのタフでは無いし、命が助かるなら起こして欲しいだろう
「…ごめんなさい、とおこさん」
1番最初に出てきた言葉はこれだった
アイツらが俺たちやこの街をどこまで知ってるか知らないが、この人は俺のせいでここに居るんじゃないかと思ってしまう
まぁ、その言葉もヘリコプターの騒音に飲み込まれてしまう。正しい言葉を並べられたのかも怪しいまま、言葉が終わる
ピュンッ!
「ッ、!」
不意に放たれた銃の音にビクリと肩が反応する
となりのヘリからピシリと嫌な音がする。
ならあのヘリは警察、救急隊、鴉のどれかと言う事だ。
惜しい事をした。もしかしたらいま助かったかも知れないのに
だが大声は出さなくて正解だったらしい。
大声を出していれば、今頃あの銃弾はオレの体の中だろう
だんだんと銃を交わす音やヘリの音が大きくなってくる
恐らく本確的な抗争に入ったのだろう
窓の外からパラパラとホコリや瓦礫が舞い散る
「危なっかしいな…」
「ぅ……ぅぁ…」
「あ、やっべ」
流石にこれだけの騒音がしたらこの人も起きちゃうか、と思った矢先に目がパチリと合う
瓦礫や流れ弾から守ろうとしてた為、
覆いかぶさっている様に見えなくも無い
「ぇッ」
「あー違うんすよ?外で抗争始まったからーその…ッスー……」
「ぁ…ありがとうございます」
「でもその一旦…戻りましょうか?」
「ハイ……」
顔が燃える様に熱い。恐らく顔は真っ赤だろう
そして目の前のとおこさんも同様に顔が赤い
こんな事を考えている暇も無い。
気まずさを無くす為に焦りながら元の体制に戻る
バキッ…
「「え」」
曲がり方がおかしかったのか、手錠が音をたてて折れる。そして俺達の折れかかっていた心を持ち直す
「やったぁ…!」
「よっしゃ……ッ!」
これで両手は自由だ。後は足枷を外せばいい。
さっきの手錠からして足枷も脆くなってる部分があるはず。
しかし流石にそんなに上手くいく訳もなく、ガチャガチャと金属のぶつかり合う音だけを鳴らす
「チッ…さすがに無理か…」
「どうしましょぉ……」
手錠で繋がれていた手首が赤赤と腫れ上がっている
動かす度にズキズキと痛む
「…葛葉さん」
「ぇ”ッ、なんすか」
「…っ」
不意に左手が暖かくなる
熱いという訳でもなく、人肌ぐらいの温かさ
俺の顔はそれと比べ物にならないくらい熱いだろう
「と、とおこさん…?!」
「怖いので、しばらくこうしててくれます?」
「今日は休みましょ?ね?」
子供が駄々をこねるような、子供を寝付かせる親の様な、優しく幼い声でそんな事を言われる
たまにこの人は俺が貴方に弱い事を把握しているのではないかと思う
さっき手首を痛めた事を把握しているのか手はちっとも痛くない
流石に救急隊と言ったところ
「ほら、寝ますよ!」
「このうるささで寝れますかね…」
「ぅっ…でも寝なきゃ明日……」
「ははッ…そっすね」
外から聞こえてくる仲間か犯人か部外者か
誰かちっとも分からない怒号と機械の騒音が響き渡る
寝れる現場では無い
だがそれを上回る精神的な疲れと肉体へのダメージ。
眠りに付く、と言うよりかは気絶に近い形で俺は意識を手放した
ピュンッ!バンッバンッ!
パキーンッ!
「ッぁ……?」
銃弾で何かを弾く音でパチリと目が開く
窓から差し込む太陽の光で俺達は眠りについた事を知らせてくれる
隣ではまだとおこさんがすやすやと寝息を立てて寝ている。目はなぜか赤く腫れている
「…ごめんなさい」
まだ外では銃を交わす音が聞こえる
ここも危ない
とおこさんも居るし、ここからは逃げた方がいいだろうと思い寝ているとおこさんを抱えて立ち上がる
カラン…
「え」
そういえばなんで立ててるんだ俺
昨日の時点で足枷は外れてなかったはず…
「…あん時か」
目が覚めた時、銃弾がなにかを弾くような音がした
恐らくそれは銃弾が足枷を壊した音だろう
とおこさんの足枷は外れていないが俺が外れただけでだいぶデカイ
と言ってもここからどうやって脱出しようかなんてひとつも考えていない
「…」
だが俺の頭の周りの速さを舐めないで欲しい
「…一か八かやってみるか」