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ろと。
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kurara
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研究所は崩れ始めていた。
警報がなり、 火花が飛ぶ。
どこかで崩落音がなる。
長年積み重ねられた狂気が、音を立てて壊れていく。
最深部。
榊は壁際まで追い詰められていた。
目の前には涼架。
その隣にはF-01。
逃げ道はほとんどない。
それでも。
榊は笑った。
「終わりじゃない」
その声に、涼架の表情が曇る。
榊はポケットから小さな装置を取り出した。
手のひらに収まるほどの大きさ。
赤いランプが点滅している。
F-01の顔色が変わった。
「それは……」
榊は笑う。
「保険だよ」
装置の画面に文字が表示される。
《研究所自壊システム》
涼架の目が見開く。
「まさか」
「全施設同時崩壊」
榊は静かに言う。
「データが失われるなら、施設ごと消す」
遠くで轟音が響く。
研究所全体が大きく揺れた。
天井の一部が崩れる。
涼架が歯を食いしばる。
「何人いると思ってるの」
研究員も。
実験体も。
まだ中に残っている。
榊は迷わなかった。
「必要な犠牲だ」
その一言で。
涼架の中の何かが切れた。
⸻
次の瞬間。
涼架は榊の前にいた。
誰も見えなかった。
一瞬だった。
榊の手から装置が弾き飛ばされる。
床を滑る。
F-01が反射的に確保する。
榊だけが立ち尽くしていた。
涼架は怒鳴らない。
ただ静かだった。
それが逆に怖かった。
「……また、それなんだねぇ」
榊が顔を上げる。
「何」
「必要な犠牲」
涼架の声は震えていた。
怒りで。
悲しみで。
「誰かを犠牲にする理由を探して」
「正しいことみたいに言う」
榊は反論しようとする。
だが。
言葉が出ない。
涼架は続けた。
「モトキも」
「ヒロトも」
「レイも」
「F-01も」
「みんな生きてる人だよ」
静寂。
研究所が軋む音だけが聞こえる。
「数字じゃない」
「データでもない」
「研究結果でもない」
涼架は真っ直ぐ榊を見る。
「生きてるんだ」
その言葉に。
榊は初めて目を逸らした。
⸻
その頃。
上階では、
モトキ達が実験体達を避難誘導していた。
「こっち!」
ヒロトが叫ぶ。
理性を取り戻した獣人達が出口へ向かう。
レイも一人ひとりを助けていた。
誰かを守るために動いている。
昔なら考えられなかった。
その時。
研究所が大きく揺れた。
レイが振り返る。
『りょうか』
胸がざわつく。
嫌な予感。
⸻
最深部。
榊は崩れ落ちた。
力が抜けたように。
何も言わない。
何もできない。
長年追い続けた夢が終わった。
F-01は静かに近づく。
榊を見る。
怒りはある。
恨みもある。
でも。
それ以上に疲れていた。
「終わりだよ」
榊は答えない。
ただ。
目を閉じた。
⸻
その瞬間。
天井が崩れた。
巨大な瓦礫が飛び散る。
落下する。
「っ!」
涼架が反応する。
F-01も。
だが。
間に合わない。
瓦礫は榊へ向かっていた。
榊は動かなかった。
逃げなかった。
その時。
涼架が飛び出した。
F-01が目を見開く。
「何してる!」
涼架は榊を突き飛ばす。
次の瞬間。
天井が落ちだ。
土煙が上がり、 轟音がなる。
視界が真っ白になる。
⸻
「涼ちゃん!!」
遠くでモトキの声が響いた。
研究所全体が崩れ始める。
F-01は必死に瓦礫をどける。
榊も呆然としていた。
そして。
土煙の向こう。
崩れた柱の下。
白い髪が見えた。
モトキが駆け寄る。
「涼ちゃん!」
手を伸ばす。
その瞬間。
涼架が小さく笑った。
「……大丈夫」
少し苦しそうだったけれど。
ちゃんと笑っていた。
モトキの目に涙が浮かぶ。
「馬鹿」
「うん」
「ほんとに馬鹿」
涼架は少しだけ笑う。
「知ってる」
その時。
レイも。
ヒロトも。
F-01も駆け寄ってきた。
全員無事だった。
研究所は崩れていく。
でも。
みんな生きている。
⸻
「帰ろう」
モトキが言った。
涼架は少し驚いた顔をする。
そして。
優しく笑った。
「そうだねぇ」
山奥の家。
焦げた鹿肉。
騒がしい毎日。
帰る場所。
みんな待っている。
研究所の外では、夜明けが始まっていた。
長かった夜が。
ようやく終わろうとしていた。
コメント
1件
いやあ…23話、めっちゃ熱かったっすね。涼架が榊に向かって「生きてるんだ」って言い放つシーン、痺れたわ。数字とかデータじゃなくて、命そのものを守ろうとする姿勢がカッコよすぎる。それに涼架が榊を庇って瓦礫の下敷きになった時は心臓止まるかと思ったけど…全員無事で本当に良かった。モトキの「馬鹿」に「知ってる」って笑う涼架、あの距離感がたまらん。「帰ろう」って言える場所があるって、めちゃくちゃ尊いな。長かった夜明け、ようやく終わりが見えた感じがする🔥