-過去-
放課後の教室は、
窓から差し込む夕日で赤く染まっていた。
チャイムが鳴り終わってからしばらく経つのに、
まだ教科書やノートをまとめきれずにいる私を、
ya君は不思議そうに見つめていた。
ya「 … ま だ 片 付 け 終 わ ら な い の ?
低くて、少しぶっきらぼうな声。
でも、
その声音にはほんのわずかに照れが混じっているのを、
私は知っていた。
et「 う ん 。
et「 ノ ー ト に 書 き 足 し た い こ と あ る ん だ 。
et「 先 に 行 っ て い い よ ?
そう言って笑いかけると、
ya君は机に肘をついて、窓の外に視線を投げた。
行く気なんて、最初からないような顔。
ya「 待 っ て る 。
短いその言葉に、心臓が跳ねる。
たったそれだけなのに、
嬉しくて、どうしようもなく愛しくなる。
ya君と同じクラスになったのは、
高校一年の春。
それまで特に話したこともなかったのに、
席が隣になった瞬間から、不思議と自然に会話をするようになった。
ya「 お 前 の 字 ち っ ち ゃ い な 。
俺 、見 え な い ん だ け ど 。
et「 え っ 、こ れ 普 通 で し ょ ?
et「 む し ろ y a 君 が 目 悪 い ん じ ゃ な い ?
ya「 悪 く ね ぇ し 。
口ではそんなふうに反論しながら、
私のノートを覗き込み、
勝手に線を引いたり落書きしたりする。
最初は鬱陶しいと思ったけど、
それがだんだんと楽しくなっていった。
ur「 … 。
そんな私の気持ちを、
幼馴染のurはすぐに見抜いた。
ur「 e t さ ん さ ぁ 、
et「 う ん ?
ur「 最 近 さ 、よ く 笑 っ て る よ な 。
私は生徒会。urはサッカー部終わりに、
二人で並んで歩きながら、
urはふとそんなことを口にしていた。
et「 え 、そ う か な __ ?
ur「 y a と 話 し て る と き と か 、特 に 。
ドキリとする。
誤魔化そうと笑ってみても、
urの目は逃れられない。
昔から私の全部を知っているみたいに、
真っ直ぐ射抜いてくる。
et「 … べ つ に っ 、
そう言って下を向く私に、
urは苦笑して肩をすくめた。
それ以上は何も言わなかったけれど、
彼の表情にほんの少しだけ影が落ちた気がした。
それからの日々は、
色濃く胸に焼き付いている。
放課後の帰り道、
二人で並んで歩いたこと。
部活で疲れて机に突っ伏すと、
yaが「大丈夫?」と不器用に声をかけてくれたこと。
文化祭の準備で遅くまで残ったとき、
コンビニのおにぎりを半分こしたこと。
そのどれもが、私にとっては宝物だった。
ya「 な ぁ 、e t さ ん 。
ある日、
教室でya君が突然話しかけてきた。
休み時間、
周りは友達同士でわいわいしているのに、
ya君はやけに真剣な顔をしていた。
ya「 今 度 の テ ス ト 、一 緒 に 勉 強 し な い ?
et「 え っ 、珍 し い 。
et「 y a 君 か ら そ ん な こ と 言 う な ん て 。
ya「 … う る さ い 。
ya「 言 わ な き ゃ 絶 対 赤 点 だ し 。
頬を掻きながら視線を逸らす仕草が、
妙に可愛くて笑いがこみ上げる。
et「 い い よ 。
じ ゃ あ 、う ち に 来 る ?
ya「 は ? お 前 ん ち ?
et「 だ っ て 、そ の 方 が 集 中 で き る で し ょ 。
ya「 … ま 、ま ぁ い い け ど 。
耳まで赤くなっている彼を見て、胸が熱くなった。
そのとき、
心のどこかで「これはきっと特別なんだ」と気づいていたのかもしれない。
勉強会の日。
机の上には参考書とノートが広がり、
けれど集中できるはずもなく、私の心臓はドキドキとうるさかった。
ya「 e t さ ん 、数 学 得 意 だ よ ね ?
et「 う ん 、ま ぁ …
ya「 こ こ 、教 え て ?
近づいてきたyaの肩が触れる。
鉛筆を持つ手が震えて、まともに説明できない。
ya「 … 顔 赤 い 。
et「 え っ !?
et「 そ 、そ ん な こ と な い し !
慌てて否定すると、
ya君は少しだけ笑った。
その笑顔が、胸を貫く。
___そして、気づけば視線が絡んでいた。
距離が、
息が、
近い。
何か言おうとした瞬間、
彼の顔がすっと近づき、唇が触れた。
一瞬だった。
でも、世界が止まったように長く感じた。
et「 … ぇ
ya「 … ご め ん 。
小さな声で呟いた彼の頬は真っ赤で、
視線を逸らそうとする。
でも私の胸の奥では、謝罪なんていらない。
だけど確かに、
この瞬間の私にとって___
彼こそが、最初で最後の恋だった。
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き ゃ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ( ( (
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