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「…どうも」
葛西優樹…。なんか聞いたことがある気がする。
俺は疑問に思いながらもお父さんを呼んだ。
葛西さんは接客経験はあるらしく、少し教えただけで、すぐに覚えてくれた。
始業してからも特に困ったことはなく、スムーズに接客していた。
そして、いつもの時間に偉二さんが来た。おしぼりと水を持っていくと、注文の前に偉二さんは不思議そうに聞いた。
「バイト雇ったの?」
「うん。俺だけじゃ手回らなくてさ」
「なるほどね…じゃあ、いつもの」
偉二さんはそう言ってニコッと笑う。
「了解」
俺はそう返事して厨房へ伝票を渡した。ダイニングに戻ると、葛西さんに話しかけられた。
「あの人、配信に映ってた人ですよね。ここの常連さんでしたっけ?」
「あぁ…うん。そうだよ」
「なんか、仲良さそうでしたね」
「まぁ、友達だから」
さすがに付き合ってるとは言えず、そう誤魔化した。
「へぇ〜…常連さんと友達ですか。相当仲良くなったんですね」
「まぁね」
そんな話をしていると、お客さんが呼び鈴を鳴らした。
「俺行くよ」
「了解で〜す」
そして、特に問題はなく営業が終了した。片付けが終わると、お父さんに帰っていいと言われた葛西さんに話しかけられた。
「奏人さん、お疲れ様です」
「ん、お疲れ様」
俺がそう返すと、葛西さんは俺の顔をじっと見て言った。
「俺の事、覚えてませんか?」
そう言われ、俺は考える。確かに名前は聞き覚えがあるし、顔も見たことある気がする。
でも、どこで会ったかまでは覚えておらず、俺は正直に答える。
「ごめん、覚えてないかな。どこかで会った?」
俺がそう聞くと、葛西さんはニヤッとした。
「すごい。まだ効いてんだ」
「え?」
効いてる?何が。俺が疑問に思って居ると、葛西さんはニコッと笑う。
「どこで会ったか答え合わせしましょうか?」
「あ、うん」
俺がそう返事すると、葛西さんは俺の側まで寄ってきて!耳元で言った。
『これから俺の家、来てくれます?』
俺はその言葉に迷わず返事した。
「うん」
そしてカフェを出てしばらく歩き、とあるマンションの前に止まった。ここが葛西さんの家らしい。
部屋に入り、靴を脱ごうとした時、急に我に返る。
なんで俺は今、この人の家に来ているのだろうか。″俺の家に来て″と言われた時、何故か断ろうとは思わなかった。なんだか、偉二さんにドルの力を使われた時の感覚に似ている気がした。
「奏人さん」
その呼び掛けられ、俺は葛西さんの方を見た。
「上がってください」
「あ、うん」
俺が靴を脱ぎ、奥へ進もうとした時、葛西さんが近くに寄る。そして突然、俺の体を掴み、壁に押し付ける。
「っ…」
そしてそのまま自分の右手を俺の横の壁につき、俺の顔を覗き込んだ。
「俺の事、せっかく忘れさせたけど、思い出して欲しいんだよね」
忘れさせた?何の話だ。それに俺は今何をされてるんだ。
「やめろ」
俺が抵抗しようと手を上げると、その手をグッと掴まれ、壁に押し付けられた。
「抵抗しないでよ。答え合わせ、してあげるから」
そして俺に顔を近づけ、そのままキスをした。
「んっ…!」
抵抗しようにも抑える力が強く、俺はされるがままに舌を入れられる。
嫌だ。やめろ。そう思ったが、突然、頭の中から嫌だという感情が消えた。そして自然と抵抗するのもやめていた。そして、一瞬頭の中にある場面がチラつく。今みたいに壁に手を押し付けられ、キスをされている場面だ。なんだ今のは。そう思った時、俺の口から葛西さんの口が離れる。
「あれ?もしかして、嫌じゃないよねって言った効果、残ってるの?」
「なんの…」
話だ。そう言おうとした時、俺の頭にスっと言葉が浮かぶ。
″嫌じゃないよね?俺とのキス″
その言葉がよぎった瞬間、俺の頭に色んな記憶が流れ込んだ。
ーーー3年前ーーー
俺は高校生の頃、虐められていた。いじめて来た相手とは最初は友達だった。でも、ある日から俺はよく購買を買いに行かされたり、係の提出物を職員室に持って行かされたりしていた。もちろん嫌と言ったこともあったが、「いいじゃん。友達なんだから手助けしてよ」と圧力をかけられ、気の弱かった俺は断れずに従っていた。
そしてそんな時に現れたのが葛西優樹だ。授業中はよく寝ている人だった。優樹が助けてくれたのは、いじめが始まってからそんなに立たない頃だった。優樹は、提出物を運ぶのを手伝ってくれたり、雑用を一緒にやってくれたりした。優樹もいじめられてしまうと思ったが、幸いいじめっ子達が優樹に手を出すことは無かった。
そんなある日のこと。俺はいつも通り優樹と提出物を運び、職員室から出た。
「いつもありがと、優樹」
「全然いいよ。これくらい」
「なんか困ったこととかあったらいつでも言って。俺なんかじゃ何も出来ないかもしれないけど」
俺が苦笑いすると、優樹は少し考えた素振りを見せた後、ニコッと笑いながら言った。
「じゃあ、ちょっとついてきてよ」
「うん」
優樹についていくと、ある教室の前で止まった。優樹は扉を開け、俺に手招きした。
「こっち」
中に入ると、優樹は扉を閉めた。準備室みたいに狭い部屋だった。
「なに?ここ」
「なんか、あんまり使われてないらしいよ。部室らしいけど、ほぼ活動してないみたいだからね」
「へぇ〜。でも、なんでこんなとこに?」
「それは…」
優樹は俺に近づく。そして俺の頬に手を当てた。
「なに?」
俺がそう聞くと、優樹は俺の口に自分の口を近づけ、そのままキスをした。俺は驚いて思わず優樹を突き飛ばす。
「何すんだよ!」
突き飛ばされた反動で尻もちをついた優樹は立ち上がりながらいう。
「痛いなぁ…突き飛ばさないでよ」
「だって優樹が変なことするから」
声を荒らげてそういうと、優樹はこっちに歩いてくる。警戒して後ずさりしたが、後ろの壁にぶつかってしまう。それを見越して優樹は俺の手を掴み、壁に押えつけた。
「そんなに大きい声出さないでよ。せっかく人が来ないところに来たのに、誰か来ちゃうでしょ?」
「何言ってん…」
俺の言葉を遮るように、またキスをする。
「やめろってば」
「いいじゃん。俺、困ってるの。奏人にしか頼めないの」
そう言ってまたキスをする。今度は舌を入れてきた。俺が抵抗して力強く優樹を押すと、優樹は押さえる力を強くする。
「んっ…やらっ…」
「なに?今、ヤダっていった?」
「言ったよ。だからやめて」
「何言ってんの」
優樹はニコッと笑ってから耳元で言う。
『嫌じゃないよね?俺とのキス』