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夜も更けて身の回りのことも終わらせた頃、部屋のドアがノックされた。


「アイナさーん、こんばんわ!」


「はいはい、いらっしゃいませー」


ドアを開けて入って来たのは、パジャマ姿のエミリアさん。


アーティファクト系の錬金術――

……そういえばあのお婆さんは『アーティファクト錬金』っていってたけど、これからはそう呼ぶことにしようかな。

何だかそっちの方が正しいっぽいし。


で、そのアーティファクト錬金を見学したいということだったので、今晩約束をしていたのだ。


「それにしてもエミリアさん。

アーティファクト錬金といっても、いつもと変わりませんよ。バチッとやるだけですから」


「そうかもしれないですけど、途中経過を見たいんです!

アイナさんの錬金術って、基本的には全部が最高品質じゃないですか。

でもアクセサリの場合は錬金効果がいろいろ付くので、それが面白いなって」


なるほど、確かに。スマホアプリのガチャとかはこれの最たるものだしね。

そういった要素はこっちの世界では馴染みが無いだろうから、目新しく映るのかな。


「私もやりながら、ハラハラしますからね。

素材での数量制限もありますし、ちょっとしたギャンブル気分と言いますか」


「ギャンブル! そう言われるとドキドキ感が増しますね!」


「あはは。それじゃお茶の用意でもして、始めることにしましょう」


「はーい♪ あ、わたしが淹れますね」


「では私はお湯を作りますね」


私がお湯を作って、エミリアさんがお茶を淹れる。

いつもながらの分担である。


「……あ、そうそう。

今回はお土産に、お菓子を持ってきたんですよ」


「お菓子?」


「さっぱりしたものなので、夜でも大丈夫だと思います!

これです、じゃじゃーん!」


エミリアさんがどこかから取り出した紙の包みには、薄い円盤状のものが入っていた。


「おせんべい」


「はい、素朴な味わいが素敵な逸品です!

ここに甘いものをかけるのも良いのですが、今回は夜ですし自重しましょう!」


夜に甘いものは、太るからね。

いや、エミリアさんの場合は問題なさそうだけど、私に配慮してくれたのかな。


「なるほど、良さそうですね。

それじゃいただきまーす」


パリッ


――おお、この味、何か知ってる!

どこかのお土産で食べたことがあるような気がする!


……でも、正直それ以上のことは思い出せないな。


「これは懐かしい味ですね。シンプルで美味しい!」


「まさに素朴な味、というやつですよね。

ささ、これをパクつきながら錬金術の方、頑張ってください!」


「はい、それではいきますよー。

まずは今日依頼のあったお婆さんのドクロのネックレスからいきましょう。

あ、借りものですし、最初に鑑定をしておこうかな?」


かんてーっ!


──────────────────

【ドクロのネックレス(B+級)】

闇の力を秘めた装身具

※追加効果:魔力が0.4%増加する

──────────────────


鑑定結果をウィンドウに出したので、エミリアさんもそれを覗き込んだ。


「これでも十分に立派なものなんですが……。

アイナさんの作るものを見ていると、いまいちな感じがしますよね」


「いわゆる通常品がC級ですからね。

さて、じゃアイテムボックスに入れて……れんきーんっ」


バチッ


「そして、かんてーっ」


──────────────────

【ドクロのネックレス(S+級)】

闇の力を秘めた装身具

※錬金効果:力が1.0%増加する

※追加効果:魔力が1.0%増加する

──────────────────


「S+級になって、あとは追加効果も上がりましたね。

品質を上げると、単純にここも伸びるかな?」


「なるほど、それだけでもずいぶん変わりますよね」


「ですね。

さて、それにしても付いたステータスは……力、ですか」


「歳を取ると力も弱りますから、考えようによってはありなような気もしますが……」


「でも、あのお婆さんの弱くなった力が1%増えるだけですからね。

それなら魔力とかの方が良いのでは……」


「確かに……」


二人であれこれ話した結果、さすがにもう少し使えそうな効果を付けることにした。

これでも良いとは思ったけど、折角だしね。


そのあと試してみると――

……力、力、素早さ、力、力、力、素早さ、力……という結果に。


「アイナさん、何だかパターン化してませんか?」


「まったくです……。

どれだけあのお婆さんに力を付けさせたいのでしょう」


「これが運命……?」


「ちょっと意味が分からない運命ですね。

それにしてもずいぶん挑戦してしまったので、次で最後にしますか」


「そうですね、ルークさんのもオンリーワンにしなきゃいけませんし」


「そっちが本命ですからね。

それじゃ最後のれんきーんっ!」


バチッ


そしてかんてーっ


──────────────────

【ドクロのネックレス(S+級)】

闇の力を秘めた装身具

※錬金効果:カースLv1

※追加効果:魔力が1.0%増加する

──────────────────


「お?」


「むむ? オンリーワンっぽいのが付きましたよ!

何やらレベルも付いていますが」


「効果は何でしょうね? かんてーっ」


──────────────────

【カース】

攻撃時、低確率で対象に状態異常<呪い>を与える

──────────────────


「……ふむ。これは使えるんですかね?」


「どうでしょう?

でも、ドクロのネックレスに付く効果としてはそれっぽいですね」


「そうですね。それじゃこれでおしまいにしましょう。次はルークの分を!」


「はい、頑張ってください!」


それじゃドクロのネックレスは一旦しまって……。


「れんきーんっ」


バチッ


かんてーっ


──────────────────

【ネックレス(S+級)】

一般的な装身具

※錬金効果:ダメージを1%増加する

※追加効果:ダメージを1%軽減する

──────────────────


「ふむ、どうでしょうか」


「アイナさん、やり直しです」


「……まぁ、良さげな効果ではありますがオンリーワンではありませんからね」


「そうです。アイナ教はオンリーワンを目指すのです」


「何ですかその宗教は。ガルルン教でもないですし」


「アイナ教は、アイナさんを守護する信仰なのです。

選ばれし者のみがアイナさんを守護することができるのです」


「そういうのは創作でやってください。激しく却下します」


「ぎゃふん」


「それじゃやり直しですね。れんきーんっ」


バチッ


かんてーっ


──────────────────

【ネックレス(S+級)】

一般的な装身具

※錬金効果:属性統合

※追加効果:ダメージを1%軽減する

──────────────────


「ぞくせいとうごう」


「ふぇ……? 何ですか、これは」


「オンリーワンっぽいですね!

効果のほどは……かんてーっ」


──────────────────

【属性統合】

複数属性の競合を防ぎ、同一の装備上に統合する

──────────────────


「……これは、どういうことでしょう?」


「うーん……。

多分ですけど、いくつかの属性を魔法剣みたいに武器に乗せて攻撃できる……とか?」


「……強いんですかね、それ」


「さぁ……?」


「しかも、ルークは魔法を全然使えないわけですけど」


「これも魔法使い用なんでしょうか。

いや、『装備上に統合する』……だから、魔法では使えなさそう?」


「うーん……」


魔法剣を使えるならもしかしたら凄いかもしれないんだけど、ルークの場合は普通の剣術だからなぁ。


でもまぁそれはそれとして、効果の名前だけは凄そうだし……。

そのうち何かに使えるかもしれないから、ルークのネックレスはこれでおしまいにしておこうかな。

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