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「……さて。
次はジェラードさんのブレスレットをやりますか」
 「ジェラードさんのもあるんですね。
そういえば、アクセサリは4つ買っていましたっけ」
 「はい。これは昨日、少し練習で試してみたんですが……」
 そう言いながら、鑑定のウィンドウを出してエミリアさんに見せる。
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【ブレスレット(S+級)】
一般的な装身具
※錬金効果:魔力が1%増加する
※追加効果:素早さが1%増加する
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 「追加効果の方は、ジェラードさんに良さそうですね」
 「ですよね!
でも錬金効果の方が良いの付かなくて」
 「ルークさんのがびしっと決まりましたから、あの調子でガツンといっちゃいましょう!」
 「その前のドクロのネックレスは、10回もやりましたけどね……。
でも良い流れが来てそうですし、ちゃちゃっといきますか!」
 「はい!」
 そして意気込んで挑戦したものの――
……魔力、精神力、力、魔力、ダメージ減少、魔力、魔力、力、ダメージ増加……という結果に。
 「まさに爆死」
 「なかなか上手くいきませんね……。
あの、ちょっと気分転換しませんか?」
 「え? そうですね、それが良いかも」
 「それでですね、アイナさんにお渡ししたいものがあるんです」
 「私にですか? 何だろう?」
 そう言うと、エミリアさんはパジャマのポケットから紙包みを取り出した。
新しいお菓子かな?
 「えへへ、開けてみてください!」
 「うーん?」
 紙包みを受け取って開けてみると、中には金色のブレスレットが入っていた。
細い鎖で作られた、さり気ない感じのデザインが素晴らしい。
 「わぁ、素敵ですね。これにも錬金効果を付けるんですか?」
 「いえいえ、これはアイナさんへのプレゼントです」
 「え? 何でまた?」
 「イヤリングのお返しだと思ってください!
あんなオンリーワンなものには及びませんが、わたしの気持ちということで」
 「そんな、気にしないで良かったのに。
でも頂けるというのであれば、ありがたく頂きますね。ありがとうございます」
 自分で買うのも良いけど、誰かに贈ってもらうのはやっぱり嬉しいものだからね。
それがずっと使えるものであればなおさらだ。
……うん、私好みのデザインだし!
 それにしても、いつの間に買ってきたんだろう?
確かに、自由時間は少し取ったけど……。
 「折角ですので、それにも錬金効果を付けてみませんか?」
 「そうですね。
ジェラードさんの分で上手くいかなかったので、こっちはビシッと決めましょう!」
 「わたしもお祈りしますね。
……あ、ちょっと待っててください!」
 「え?」
 エミリアさんは慌てて部屋を出て行ったあと、少ししてから戻ってきた。
 「これこれ、これが無いと!」
 そう言いながら、エミリアさんはイヤリングを付け始める。
 「え? 急にどうしたんですか?」
 「いえ、形からも入ろうと思いまして」
 「形?」
 「いきますよー。
グロリアス・スターライト!!」
 「へ?」
 ――キラキラキラーッ!
 エミリアさんが魔法を唱えると、白く美しい輝きが部屋中を満たしていった。
イヤリングに付いたエコーの効果のおかげか、とても綺麗に目に映る。
 「おぉ……。
エミリアさん、これは何の魔法ですか?」
 「これはちょっとした光の領域を作る魔法なんです。
ほぼ見掛けだけの魔法なんですが、運が少し上がる効果もあるんですよ」
 「へー。こんな魔法もあったんですね」
 「最近覚えたんです!
でも使うタイミングが無かったので、この機会に是非と思いまして」
 「おお、勉強熱心な。それにしても、運が必要なときは良さそうですね」
 ゲームでも、製造系のスキルを使うときには運が影響する場合があるからね。
 「お役に立てれば幸いです!
それではアイナさん、いってみましょう!」
 「分かりました! それじゃ、れんきーんっ」
 バチッ
 そしてかんてーっ
 ──────────────────
【ブレスレット(S+級)】
一般的な装身具
※錬金効果:光魔法『バニッシュ・フェイト』使用可
※追加効果:魔力が1%増加する
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 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!?」
 「えっ!? エミリアさん!?」
 「す、すごいです! アイナさん! すごいっ!!!!」
 むぎゅ!
 「むわっ!? エミリアさん! 柔らかい! じゃなくて苦しい!!」
 いきなり抱き着いてきたエミリアさんに、背中をぱしぱし叩いて即座にギブアップする。
昨日も抱き付かれていたので、心なしかスムーズにギブアップすることができた。
 「――……はっ!? す、すいません!!」
 しばらくすると、エミリアさんはようやく解放してくれた。
それにしても――
 「……突然どうしたんですか?」
 「アイナさん! この魔法! バニッシュ・フェイト!!」
 エミリアさんは引き続き興奮を続けた。
 「指輪のクローズ・スタンに続きまして、また魔法ですね。
これってすごい魔法なんですか?」
 「とにかく鑑定を!!」
 「は、はい!」
 それじゃ、かんてーっ
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【バニッシュ・フェイト】
光魔法。
すべての魔法効果を打ち消す
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 「……おぉ?」
 「この魔法、光魔法のずっと上位の方にあるんですよ!
わたしもいつか覚えたい魔法のひとつなんです!」
 「そ、そんなに良いものなんですか……?
それじゃ、エミリアさんが使います?」
 「いやいや! そのブレスレットは私がアイナさんにプレゼントしたものなので――
……それはダメです! アイナさんが使ってください!」
 「そ、そうですか?」
 「アイナさんも、わたしに言ってくれたじゃないですか。
『エミリアさんのプレゼント用に買って作ったものなので、エミリアさんが使ってくれると嬉しいです』って。
それと同じですよ!!」
 「むぅ、確かに……。それじゃありがたく使わせて頂きますね」
 そう言いながら、金色のブレスレットを左手首に付けてみる。
 うん、可愛い――
……のは良いとして、そういえばクローズ・スタンも含めて、魔法を使ったことがまだ無いんだよね。
 「魔法が使用可なのは良いんですけど、魔法ってどうやって使うんですか?」
 「え? そういった装備を使う場合は、普通にスキルを使う感じでやれば良いと思いますよ」
 「普通……に……?」
 そういえば錬金術も鑑定も『普通に』使ってるから、意識的なところでやればいける……ってことかな?
それじゃ――
 「バニッシュ・フェイト!」
 ――サアアアァッ……
 「「あ」」
 何となく使ってみると、周囲のキラキラ――
……エミリアさんが作り出していたグロリアス・スターライトの光が消えてしまった。
 「あぁ、せっかく作ってもらったのに……消しちゃいました」
 「ふえぇ……でも、普通に使えていますね……。
バニッシュ・フェイトって、本当だったらもう少し詠唱があったりとか大変なんですけど……」
 「やっぱり、エミリアさんが使いますか……?」
 「却下です! アイナさんが一生使い続けてくださいっ!」
 ……むぅ、分かりました。
死ぬまで使わせて頂きます。
 「でも、魔法を消したくなる場面って今まで無かったんですよね。
どういうときに使うんです?」
 「えぇっと……こう、人と戦うとき……とかですね……?」
 人と戦うシーンでは、攻撃手段として魔法も当然のように登場するのだろう。
そんなとき、魔法効果を打ち消せるのはかなり大きそうだ。
 「……エミリアさんって、優しいですね」
 「えぇ? 何で急にそんな話に!?」
 「戦場で泣いてる子供を守りながら、誰かと対峙しているエミリアさんが何故か思い浮かびました。
『いつか覚えたい魔法』っていうのを聞いて、そんな感じかなー……って」
 「わたし、どれだけ格好良いんですか!?」
 「あはは、そうですね。
でも、それくらい立派な人だって思ってますよ」
 「あぁ~、もう! アイナさんってば~!!」
 むぎゅ。
 何故か、左のほっぺをつねられた。
 「えぇっと、エミリアさん……。
これは一体なんでしょうか……」
 「いいから……ちょっと、このままでお願いします……」
 「えー?」
 
 エミリアさんは下を|俯《うつむ》きながら、私のほっぺをつねり続けた。
……何で私、つねられてるんだろう。