テラーノベル
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「ん゛ー……飲みすぎた…」
上司に吐くほど飲まされフラフラ歩いていた時だった。
『お主、酒は好きか?』
突然背後から声をかけられた。
「んー…?さけぇ…?」
『そうじゃ』
「さけはぁ…すきじゃなぁい……」
『センスがないのぅ……』
声からしておそらく男だろう。
俺はあまりにも低すぎる声の正体が知りたくて後ろを振り向いた_____。
ピピピピッ ピピピピッ
「ん゛ー……」
目覚ましを止め起き上がる。
ブラックな会社で働く社畜の朝はいつもはやい。
パンを食べながらテレビをつける。
《近頃、突然背後から知らない男に「酒は好きか」と声をかけられる事件が多発しています。》
《今のところ暴行などの被害はございませんが、くれぐれもお気をつけ下さい。》
変なやつもいるんだなぁと思いつつ最後のひと口を口に詰め込んだ。
「おはよーございまーす…」
『おい古酒!なんだそのやる気のない挨拶は!』
「す、すみません…!おはようございます…!」
声が小さいとすぐ叱られてしまう。
〔上司の注ぐ酒は絶対飲め、0時で帰れると思うな。〕
これは常に言われてる事だ。
ザ・ブラック…
特に飲み会では古酒と言う名前のせいでよく酒を飲まされる。
『あっ、おい古酒』
「はい…!」
『今日は飲み会あるから、よろしく。』
ニヤッとして上司は言う。
「は、はいっ…!!」
また飲まされるのか……
『かんぱーい!!!!!』
地獄の飲み会が始まってしまった。
『おい古酒〜、全然飲んでねえじゃねえかよ〜。』
そう言うとコップいっぱいに酒を注ぐ。
「あっ、はは…ありがとうございます…。」
正直俺は酒は苦手だ。
だがブラック企業で働いている以上アルハラにも耐えなければならない…。
『いい飲みっぷりじゃねえかぁ!』
『次は日本酒だな〜!』
日本酒…。
酒嫌いの俺にとって日本酒はゴキブリの次に嫌いなのだ。
「あ、ありがとうございます…!あはは、、」
なんて愛想笑いをした後並々注がれた日本酒を飲む。
『よぉ〜しっ!かいさぁ〜ん!!』
「おつかれさまでしたぁ…」
胃がグルグルする…気持ち悪い…。
あの後結局トイレにこもって吐いてしまった。
「あー…もぅ……」
フラフラしながら居酒屋の喧騒が聞こえなくなるところまで歩いた時だった。
『お主、酒は好きか?』
突然背後から声をかけられた_____。
ピピピピッ ピピピピッ
アラームが鳴り響く。
(昨日無事に帰ってこれたのか…)
正直記憶が曖昧だった。
前みたいに道路で寝てなくて良かった…。
『うるさいぞ、そのやかましい物はなんじゃ』
「目覚まし時計だよ…」
ん…?待てよ…?
「誰お前…!?」
「お、おに…?ツノ…????」
そこには鬼の姿をしたヤツがいた。
『酒呑童子じゃ。』
「しゅてん…どうじ……??」
「酒呑童子ってあの酒呑童子…???」
『”あの”とはなんの事じゃ?』
「よ、妖怪の…」
『妖怪ィ?』
酒呑童子と言えば美少年でめっちゃモテてたとか、親に捨てられて鬼になったとかそういう噂のある妖怪じゃねえか……。
「な、なんでここにいんの…?」
『お主のセンスを磨きに来た』
「……は?」
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