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めっちゃ良かったです!
続きです
久しぶりに登校する日。
その日は、雨が降っていた。
夏がくれた黒い傘を片手にいつもの山道をバスストップまで歩いていく。
今日は雨だし、歩く気力もないのでバスにすることにした。
誰もいない自宅。
日向は今家に帰っても誰もいない。
お金は叔母さんが出してくれることになったけれど、それも大学までで、大学へ行くお金は貰えない。
本当は一緒に住む予定だった。
けれど、叔母さんは俺のことが嫌いだ。
だって、叔母さんはアイツのことが好きだったから。
アイツのことが好きなのに母さんにとられて。
子供が出来た、といわれ誕生したのが俺。
許せないだろう。俺のせいで叔母さんはアイツと結婚出来なかったのだから。
それでもアイツの面影はあるみたいだ。
だから金を出してくれることになった。
アイツと同じ血が流れているという事実に吐き気がした。
何度も何度も暗くて1人の家で吐いた。
運転手 次はー次はー烏野高校前ー
ああ、おりなきゃ。
いくらでも飛べて、軽かったはずの体はもう死体のように重い。
会いたくないな、と思う。
未来がある、あいつら。
全国優勝という夢がある烏野バレー部に会いたくない。
もう俺には夢がない。
たった一つ、やりたいとするならば。
全てを失ってもいい。
だから、だから。
俺はアイツを殺したい。
菅 ひ……ひなた?
俺の声に皆が反応してこちらを向く。
澤 日向って……本当か、スガ
菅 うん。外通ったの見えたと思う。オレンジの髪だったし間違いないと思うけど
影 日向なんで休んでんすか。下手くそなのに
俺らの大事な部員である日向翔陽は、3週間ほど前から休んでいる。
武ちゃんや鵜養監督に聞いたけれど個人情報だと、家も休んでいる事情も教えてくれなかった。
山 でもなんか……元気なさそうだった、けど
俺たちが見ていた日向はいつもぴょんぴょんとんでいて、笑顔に満ち溢れていた。
でも今俺が見た日向に笑顔はなく、そして暗いオーラがただよっていた。
東 大丈夫かな……
月 おチビのことですよ、きっとくだらない事です
東 そうだといいけどな……
日向が去った方向をみんなで見つめる。
その目には心配の色が浮かんでいた。
教頭 しばらく休学?
日 ……はい。すみません、勝手なことはわかってるんですけど自分を見つめ直したくて
教頭 いいけど……大丈夫かね?
珍しく教頭が心配そうな顔で見てくる。
日 ほら、その……
教頭 他殺、ですか
今だ犯人は見つかっていないため、俺が殺される可能性もあるのだ。
それに今は家族もいない。そんな中で1人になることを心配してくれているのだろう。
日 大丈夫ですよ、多分!
そう無理やり笑ってみせる。
校長は困ったような顔をして休学届にサインをした。
教頭 何か困ったことがあったらなんでもいいから直ぐに言うんだよ。大人はいるから
大人はいるのにどうして家族は殺されたのか。
あなたたち大人が無能だからじゃないのか。
そんな言葉をぐっとおしこめ、にっこり笑ってみせる。
自分はいつの間に作り笑いが上手くなったのだろう。
ああ、この世界は残酷だ。
校門をでるとき。
影 日向!
聞き覚えのある声がした。
バレー部の、同輩だ。
影 おい日向なんで休んでんだよ
月 ちょっと、学校まで休んで君勉強大丈夫なの?
山 日向、大丈夫……?
ああ、この3人ともそろそろお別れか、と思う。
日 おう!大丈夫だ!またすぐここには来るよ!
いつも通りの日向翔陽を演じれば、騙されてくれる。
月 ねえ、ほんとに?作り笑いでしょ?
ちぇっ、月島は鋭い。
日 ほんとに大丈夫だよ!また会えるからさ
またすぐにここに来るというのは本当だ。
その前に俺は、終わらせなければならない。
日 ここにいたんだ
自宅に帰ればアイツが叔母さんといた。
行為中だったのだろう。
ところどころはだけている。
??? あん?ああ、翔陽かよ
日 なんで俺んちいんだよ
??? お前ん家母さんが残した金ねえの?使えねえなぁ!
俺とおなじ、オレンジ色の髪をかきむしる。
叔母 こいつ私からもお金とってるのよ。こいつの生活費私が出さないといけないの
??? ありがとね、クミちゃん。でもさ、こいつなんて殺せばいいのよ。なんのために俺が2人殺したと思ってんの
そういっていつもの指輪をはめる、俺の父さん。
ああ、こいつの血が流れているのか。
消したい、消したい、消したい。
夏、母さん。
俺、やるからね。
日 お前なんて死ね!二度と顔みせんなよ、、、夏と母さん返せよ!!!!
力の限りナイフをアイツの腹にさす。
叔母 きゃああああ!
耳障りな声がする。
すぐにナイフを引き抜いて叔母さんもさした。
胸を滅多刺しにし、
目を刺す。
身体中にナイフをさして、俺の家はどんどん血だらけになっていく。
日 うあああああああ!うああああああ!返せよ!!!返せよっつってんだよ!あっあぁぁ!!
もう死んでる。
分かっているのに。
奇声を上げながらさしていく。
俺の声は山に溶けていく。
ずるり、ずるり。
血だらけの体で。
血だらけのモノを。
家から遠い山に埋めていく。
これは作業だ。
辛いともなんとも思わない。
ああこれで、これでクズがへったんだ。
もう夏と母さんは、帰ってこないのに。
日 うっ……うう、うっ、
もうこの家の扉が開けられることはない。
翔陽と、呼ばれることもない。
あの卵かけご飯と味噌汁を食べることも、ない。
日 ごめん……ごめんな、兄ちゃん守ってやれなくて……ごめん、なっ……
夏と母さんの遺骨を抱きしめながら、日向翔陽は一晩中泣いた。
最後に、烏野バレー部に会いにいくことにした。
叔母さんが行方不明になって、警察に届けられた。
そして、遺体が見つかった。
自分が捕まるのも時間の問題だ。
軽いからだで、いつもの山道を走っていく。
体育館につくと、烏野バレー部が揃っていた。
澤 ……!日向!
皆が驚いたような顔でこっちを向く。
菅 どうしたんだよ日向……今まで何が
日 母さんと、妹が死にました
淡々と日向は答えた。
影 は?
菅 え、どういう…?
月 ドッキリ?
東 その嘘、は、
東 嘘じゃないです。1か月前に死にました。ああ、ちょうど今日が月命日ですね。
まあ俺はもうバレーできないんで
影 どういうことだボケェ!!
日 おれ、人殺したんだ
あたりの空気が静まりかえる。
体育館の温度が下がった気がした。
日 大丈夫です、皆さんを殺したりしないし……。別に俺は後悔してません
山 日向、それってどういう
日 夏と母さん殺したやつ殺したんだ。ほら、今話題になってるだろ。滅多刺しの2人が見つかったって
菅 ひ……日向が、それを?
日 はい。殺しました。
俺は今から捕まります。その前に大好きなバレー部の皆に会いたかったんです。
もう俺はバレーできないし……普通の世界に帰ってくることもできない。
でも、でも。俺はずっとクズみたいな自分の父親のことで苦しんでた。
その苦しみをなくしてくれたのは、皆だから。お礼、言いたくて
深深とお辞儀をする。
パトカーの音が聞こえる。
日 ありがとう、ございました
パトカーの音が増えていく。
警察がはいってくる。
警察 日向くん。7時58分。殺害と死体遺棄の容疑で君を逮捕するよ
日 はい
両手をさしだす。
かちゃり、と手錠がかけられる。
皆が泣いている音がする。
背中を警察の人に押され、俺はゆっくり歩き出した。
影 日向!!!
影山の声がして、俺は思わず立ち止まって振り返った。
影 また、またバレーしよう。俺の相棒はお前だけだ。待ってるから!!
影山の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
俺の事を待っていてくれるのか。
日 ……またな
それだけ残し、歩いていく。
そうだな、影山。
罪を償って、また、バレーできたらいいな。
でも、、、本当に、、、償えるかな?、、、
end