時間は午後十一時になるところ。彼女だけ現れて、彩寧さんが来なければいいと思いながら、急いで着替えてそっと外へ飛び出した。質問攻めに遭うのが嫌で、両親には何も言わずに。
真夜中の公園に人影が見える。僕の自宅近くの公園だからまだ誰も来てないだろうと思ったら、一番乗りは彩寧さんだった。
「こうなる予感がして、すぐに出られる準備はしてあったんだ」
「ここにはタクシーで?」
「ううん、兄の車で。あらかじめお願いしておいたんだ。もしかしたら夜中に送迎をお願いするかもしれないって。優しい兄は理由も聞かずにOKしてくれた」
彼女も強引だが、彩寧さんも負けていないようだ。僕は強引な女性に好かれるのかもしれない。
彼女ももうすぐ来るだろう。彼女が現れると不利になると思ってか、彩寧さんはすぐに本題に入った。
「私を選ばないなら、残念だけどそれはあきらめる。でも霊山寺さんはいつかきっと君を不幸のどん底まで叩き落とす。出会ったばかりとはいえ、本気で好きになった君が不幸になるのは私には耐えられない」
「彩寧さんが映山紅さんと会ったのは過去に一度だけですよね。たった一度会っただけで、そこまで分かるものですか?」
「これを君に話すと霊山寺さんに恨まれそうだから、できれば話さずにすませたかった。でも君を救うためだから、私が知っていることを全部話すよ」
彩寧さんが知っている、というか陸に見せつけられたのは陸と彼女とのセックス。おもちゃを使っていたとかゴムなしだったとか最後は顔射だったとか昼間に聞かされたけど、それ以上に破壊力を持つ何かがまだあるようだ。