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孤独を隠す勇斗と、傷を抱える仁人。
屋上で出会った2人の、歪な青春。
*自/傷/行/為表現があります
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「勇斗って、本当に悩みなさそうだよな」
昼休み、友達にそう言われて、俺はいつものように笑った。
「そんなことないって」
そう返すのも、もう慣れていた。
明るく話して、誰にでも優しくして、いつも楽しそうにしている。
周りから見た俺は、きっと何も悩みなんてない人間なんだと思う。
でも、本当の俺は違う。
家に帰れば急に静かになる部屋が嫌だった。
誰かに必要とされたいと思うくせに、誰かに本当の自分を見られるのは怖かった。
笑っていれば、誰も離れていかない。
嫌われることもない。
そう思って、俺は毎日「大丈夫なふり」をしていた。
でも、その日は違った。
何をしていても息が詰まるような感じがして、教室にいることすら苦しくなった。
どこかへ逃げたくて気づいた時には、俺は誰にも見つからないように屋上へ向かっていた。
仁人「……また来たんだ」
扉を開けると、そこには仁人がいた。
いつも一人でいて、必要以上に誰かと関わろうとしないやつ。
勇斗「仁人こそ」
俺がそう言うと、仁人は少しだけ目を細めた。
仁人「俺はここが落ち着くから。」
その言葉を聞いた瞬間、不思議と安心した。
自分以外にも、ここに逃げてくる人がいるんだって思ったから。
・ ・ ・
それから俺たちは、放課後になると自然と屋上に集まるようになった。
特別な約束をしたわけじゃない。
でも、どちらかが先に来ていて、もう片方が後から来る。
そんな毎日が当たり前になっていった。
教室では笑っている俺も、屋上では無理に笑う必要がなかった。
仁人の前では、明るい自分を演じなくてもよかった。
仁人「勇斗ってさ」
ある日、仁人が突然口を開いた。
仁人「本当はずっと苦しいんじゃないの?」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
誰にも気づかれないように隠していた部分を、簡単に見つけられた気がした。
勇斗「……なんでそう思うの」
俺が聞くと、仁人は少し黙ってから答えた。
仁人「笑ってるのに、たまにすごく寂しそうな顔するから。」
何も言えなかった。
初めてだった。
俺の作った笑顔じゃなくて、その奥にいる俺を見てくれた人は。
勇斗「仁人だって同じじゃん」
俺がそう言うと、仁人は目を逸らした。
仁人「俺は違う」
勇斗「違わないよ」
そう言った瞬間、仁人の表情が少しだけ崩れた。
仁人「……俺さ」
しばらく沈黙したあと、仁人が小さな声で話し始めた。
仁人「家に帰りたくないんだ」
その一言だけで、今まで仁人が抱えてきたものの重さが伝わってきた。
仁人の家には、安心できる場所がなかった。
家族なのに、近い存在のはずなのに、そこにいることが苦しくなる。
何をしても否定される気がして、どれだけ我慢しても誰にも気づいてもらえない。
助けてほしいと思っても、そんなことを言える場所すらなかった。
仁人「家族なのにさ」
仁人は笑った。
でも、その笑顔は今まで見たどんな顔より悲しかった。
仁人「一番近いはずなのに、一番遠いんだよ」
俺は何も言えなかった。
仁人の腕には、今まで抱えてきた苦しさを感じさせる傷跡が残っていた。
それを見た瞬間、胸が締め付けられた。
仁人はずっと、誰にも言わずに抱え込んで、一人で耐えてきたんだ。
勇斗「……なんで俺に言わなかったの」
俺が聞くと、仁人は俯いた。
仁人「言ったって、何も変わらないと思ったから」
勇斗「変わるよ」
仁人「勇斗には分からない」
その言葉が、少しだけ痛かった。
勇斗「分からないよ」
俺は正直に答えた。
勇斗「仁人が感じてきた苦しさを、俺が全部理解できるわけじゃない」
勇斗「でも」
少し震える声で続けた。
勇斗「分かりたいって思ってる」
仁人は何も言わなかった。
でも、その表情は少しだけ寂しそうで、少しだけ安心したようにも見えた。
勇斗「俺だってさ」
今度は俺が話した。
勇斗「ずっと寂しかった」
勇斗「友達はいる。でも、本当の俺を見てる人はいない」
勇斗「笑ってる俺だけを好きになられても、それって本当の俺じゃない気がして苦しいんだよ」
仁人は静かに俺の話を聞いていた。
そして、小さな声で言った。
仁人「……俺たち、似てるね」
その言葉を聞いた瞬間、涙が出そうになった。
誰にも言えなかったこと。
誰にも見せられなかった弱い部分。
それを初めて、誰かと分け合えた気がした。
でも、同時に怖かった。
仁人がいなくなったら、また俺は一人になる。
でもそれはきっと仁人も同じで、
仁人「勇斗」
勇斗「なに」
仁人「俺のこと、置いていかないで」
その言葉は、お願いというより助けを求める声に聞こえた。
俺たちは、お互いを完璧に救えるほど強くない。
むしろ、お互いの痛みに引きずられて、もっと苦しくなることだってあるかもしれない。
それでも、屋上にいる時間だけは、本当の自分でいられた。
明るいふりをして孤独を隠す勇斗
家での苦しみを抱えたまま笑う仁人
誰にも見えない場所で、二人だけが分かる痛みを抱えていた。
勇斗「明日も来る?」
俺が聞くと、仁人は少しだけ間を空けた。
仁人「……勇斗がいるなら」
その答えが嬉しくて、同時に少し怖かった。
この関係が正しいのかなんて分からない。
でも、あの日屋上で出会った俺たちは、もう戻れない。