俺の頬をなぞる涼ちゃんの指先は少し震えている。
少し濡れたような瞳が俺を真っ直ぐ見つめていて、目が離せない。
「···僕ね、もし元貴が死んじゃったら生きていけないって思った···もし、もし、いなくなったらって思うだけで今も怖くて堪らない。お願いだからずっと僕のそばにいて···絶対に置いていかないで···」
溢れた涙がその柔らかい頬を伝って俺の手に落ちる。
あぁ、こんなにも俺はこの人に必要とされて、 こんなにも愛されていたのか。
こんなんもう、プロポーズじゃん。
頬を濡らす涙をそっと指で拭う。
バカだな、俺···いろんなことを考えて恐れて側にいられればそれだけでいいなんてカッコつけて。きっと涼ちゃんはそんなの望んでない。愛して愛されて側にいたいんだ、きっと。
「俺も涼ちゃんがいない世界にはいたくない。初めて出会った時から···涼ちゃんはきっと俺の運命の人なんだって思ってた···好き。大好き···ずっとそばにいる」
薄茶色の瞳が大きく見開かれて、たくさんたくさん涙が溢れて頬も俺の指もたくさん濡らして。
肩を震わせながら泣くその姿が愛おしい。
「僕も···元貴が好きだった···ずっとずっと好きだった···これからもずっと一緒にいて」
喉を詰まらせながら泣く涼ちゃんを抱きしめる。これからは恋人としてずっと隣にいられる···そっと横を向き、頬にキスする。
「ちゃんとしたキスして···」
涼ちゃんの顎に触れてこちらを向かせて、その唇にキスをする。
しっかりと唇を重ねて何度も長いキスを交わした。
「やっと元貴とキス出来た···いっつも寝てる時に頬にされるだけだったから···」
「えっ···知ってたの···?」
まさか、バレていたとは。
涼ちゃんはクスッと笑って俺の頬を軽くつつく。
「あんなに何回もされたら···ねぇ?」
「あ〜···ソウデスヨネ」
お互い顔を見合わせて、吹き出して笑ってしまう。しばらく笑って、またどちらかともなくキスを交わす。
「元貴、今日泊まってもいいでしょ?僕帰りたくない」
「もちろん、だって付き合ってるんだから···俺も帰したくないよ」
やったぁ、と喜ぶ涼ちゃんのお腹がぐぅ、となった。
「はっ、恥ずかしい···」
「可愛いなぁ···俺もなんかお腹すいちゃった···なんか頼もうか、まだまだ夜は長いしね」
照れて笑うその笑顔が最高に可愛い。
涼ちゃんはようやく俺の上から降りると隣に座って肩にもたれかかる。
あれこれと注文して届くのを待っている間テレビをつけると飛行機事故は乗客乗員全員無事だったとニュースでしていた。
「良かったね···。けど、本当に元貴が1つ早い飛行機で帰ってきてくれて良かった、僕もう少し遅かったら死んじゃうかと思うくらい辛かった···」
「涼ちゃんをひとりになんかしないからね、一生一緒にいるって決めてるから」
「うん、嬉しい···」
顔を見合わせて笑う。
いつも心の中で思っていたことを伝えるのは恥ずかしかったけど、涼ちゃんが喜んでくれることが嬉しかった。
頼んでいた食事が届いて、元貴お帰りって改めて涼ちゃんはジュースで乾杯してくれた。
「そういえば、元貴はいつから僕のこと好きだったの?」
「···そういうの聞いちゃう?」
可愛い恋人は目を輝かせてうんうんと頷いている。
「出会った時から人柄には惹かれてて···好きだなぁとは思ってたけどはっきりとわかったのは涼ちゃんから恋愛相談を受けてた時かも···ほら、同性でも恋愛対象みたいなこと言ってたから···嫉妬もしたけど、俺でもいいのかなみたいなさ」
「······その恋愛相談ほとんど嘘だったって言ったら怒る?」
「どういうこと??」
「あれは、元貴が好きだったから···それとなぁく、相談してたら意識してくれるかなぁって···」
「うそぉ···」
ごめんっ、けど効果あったってことかな?なんてえへへっと笑う涼ちゃんを目の前に俺は何とも言えない···本当、涼ちゃんにはいつもしてやられてるなぁ···。
「···じゃあそっちはいつから俺のこと好きなの?」
「んーっと、メンバーになってだんだんと···でも、恋人になりたいって強く思ったのは最近かも···元貴にこっそりキスされてることに気づいたけど好きって言ってくれないし、けど前にお泊りしたときに····えっと」
涼ちゃんの顔が赤くなって、もごもごと言葉尻を濁す。
「その時くらいからかなっ、そんな感じ!」
なんだか怪しいけど、ぱくぱくとピザやらパスタやらを食べている姿をみているとまた今度追求したらいいか、という気持ちになった。
それに涼ちゃんにあんまり恋愛遍歴がないこともわかったので、俺としては満足この上ない。
「涼ちゃん。これからさ、色々あるかもしれないけど···ずっと大好きだし、一緒にいてね?」
「うんっ、ずっと仲良しでいようね」
「俺ってたぶん、かなり嫉妬深いけど···涼ちゃんが大好き故だからね、許してね」
「う、うん···」
「あとさ、今まで散々涼ちゃんに煽られても色々我慢してたんだから···これから覚悟しててよ?」
俺がにやっと笑うと意味がわかったのか涼ちゃんは頬を赤らめて口もとをきゅっと結んだ。
「···優しくしてね?」
どこまで何を想像したのかは敢えて聞かないが、俺はその先の先まで考えてんふっと笑ってしまう。
「元貴の顔、えっちすぎるよ···」
「いいでしょ?ようやく恋人になれたんだから、それにこんな俺も好きでいてくれるよね?」
照れながら困惑する涼ちゃんに軽くキスして余裕を見せつける。
ますます照れる涼ちゃんが可愛くてドキドキと胸が高鳴った。
やっと運命の人を手に入れたんだ、もう離してやんないからね。
ね、涼ちゃん。
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