無限城の歪んだ空間に、場違いなまでの熱気が走る。上弦の弐・童磨の冷気によって凍てついた空気の中、一般隊士の村雨雄大は、震える手で自らの腰に現れた鈍色(にびいろ)のベルト「アークル」を見つめていた。目の前では、毒を使い果たし、力尽きようとしている胡蝶しのぶが童磨の腕に捕らえられている。しのぶの瞳に絶望の色が宿ったその瞬間、村雨は魂の底から叫んだ。
「変身!」
溢れ出した超古代のエネルギーが村雨の肉体を瞬時に再構成し、深紅の装甲を纏う「仮面ライダークウガ」へと姿を変える。その凄まじい威圧感に、童磨でさえも扇の手を止めた。
「おや、妙な格好だね。鬼とは違うようだけど……」
童磨が言葉を終える前に、クウガ(マイティフォーム)の拳が空を切り裂いた。音速を凌駕する一撃。童磨の顔面が弾け飛び、しのぶはその隙に腕から転げ落ちる。クウガは優しく彼女を抱きかかえ、後方の安全な場所へと着地させた。
「……村雨、さん……? その姿は……」
困惑するしのぶに対し、クウガは言葉を交わさず、ただ力強くサムズアップ(親指を立てる仕草)を見せた。それは「ここは任せて、生きてください」という無言の誓いだった。
再び童磨へと向き直るクウガ。童磨は瞬時に顔を再生させ、冷ややかな笑みを浮かべながら「血鬼術・凍て曇(いてぐもり)」を放つ。肺を壊死させる極低温の霧がクウガを包み込むが、アマダムの霊石から生み出される炎のような生体エネルギーが、その冷気を無効化した。
クウガの右足に、封印のエネルギーが収束し始める。
助走と共に高く跳躍し、宙を舞うクウガ。童磨が術を重ねようとした瞬間、その右足が童磨の胸板に突き刺さった。
「マイティキック!」
童磨の体に黄金の封印紋章が浮かび上がる。鬼の再生能力を根本から否定する超古代の破壊エネルギーが、童磨の肉体を内側から崩壊させていく。上弦の弐は、自らが喰らってきた犠牲者たちの声を聞く余裕すらなく、塵となって消滅した。
静まり返った無限城の一角。変身を解いた村雨は、肩で息をしながら、呆然と座り込むしのぶに再び歩み寄る。
「胡蝶さん。あなたの命を、自分の代わりにする必要はもうありません」
しのぶの目から、初めて「怒り」ではない涙が溢れた。その隣で、村雨はただ静かに、いつもの不器用な笑顔でサムズアップを掲げていた。






