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「第三章 赤月の墜ちる星」
戦闘の余韻を残したまま、星舟は静かな宙域を進んでいた。
先ほどの巨人は完全に姿を消したが、空間には未だ赤い粒子が漂い続けている。
その粒子はゆっくりと流れ、まるで道しるべのようにひとつの方向へと伸びていた。
「……追うしかないわね」
セレスティアは操縦席に座り、視線を赤い流れへと向ける。
あなたも隣の席に腰を下ろし、計器を確認した。
目的地は、死んだ恒星の残骸が漂う暗黒宙域――オルド・ネビュラ。
やがて星舟は巨大な影の中に入った。
そこは光がほとんど届かず、音も存在しない。
しかし、赤い粒子だけが、まるで生き物の血流のように脈動しながら漂っていた。
突然、計器が警告音を鳴らす。
目の前の虚空に、巨大な球体が浮かび上がった。
それは星の死骸だった――だが、その表面には赤い結晶がびっしりと生えている。
結晶はゆっくりと呼吸するように膨張と収縮を繰り返し、まるで星そのものが生きているかのようだった。
「……ここ、知ってる」
セレスティアが小さく呟いた。
その声は震えていた。
「ずっと昔、私が……」
言葉が途切れると同時に、星の表面から光の柱が放たれ、船体を直撃した。
操縦不能になった星舟は、そのまま星の引力に引きずり込まれていく。
外の景色が、赤く染まった地表へと急速に近づいていった。
――落ちる。
あなたは反射的に星剣を握り、セレスティアの手を掴んだ。
だが、その瞬間、彼女の瞳が別人のような光を帯びる。
「……思い出した。ここは、私が……封印した場所」
星舟は赤い地表へと激突し、視界は閃光に包まれた。