テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「第四章 赤月の魔女」 ―プロローグ
赤い星の地表は、死のように静かだった。
空は濃い血色の雲で覆われ、遠くで稲光が走るたび、赤い結晶の塔が一瞬だけ影を落とす。
星舟は半ば地中に埋まり、煙を上げていた。
あなたとセレスティアは残骸から這い出し、足を取られながらも進む。
空気は重く、呼吸するたびに胸の奥が灼けるようだ。
「……感じる?」
セレスティアが足を止め、耳を澄ませる。
次の瞬間――地面が低く震え、前方の結晶塔が崩れた。
崩れた瓦礫の奥から、ゆっくりと人影が現れる。
それは背丈こそ人間と変わらなかったが、全身を覆う漆黒のドレスと、流れるような赤い髪が異様な存在感を放っていた。
彼女の瞳は、赤月そのものの色を宿している。
「……やっと来たのね、星を食べる娘」
女の声は甘く、それでいて刃のように冷たい。
セレスティアは一歩も動かず、その視線を正面から受け止めた。
「……アンタ、生きてたの」
「ええ。あなたが私を“封印した”あの日から、ずっとここで待っていたわ」
赤月の魔女は微笑み、あなたに目を向ける。
その瞬間、背筋に氷のような寒気が走った。
言葉もなく、彼女はただ右手をかざし、地面から赤い結晶の槍を生み出す。
「さあ――始めましょう。終わらなかった戦いを」
次の瞬間、結晶の嵐があなたたちを襲った。