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「藤村くんの布団用意するわね」
母親の方が楽しそうだ。
「いや、大丈夫です。本当にお構いなく」
「奏ちゃん、俺のベッドで一緒に寝るから平気」
母よ、早く二人きりにしてくれ。
「そう?本当に親御さんが大丈夫ならうちは泊まっていって大丈夫だからね。ごゆっくり〜」
と、母が麦茶を置いて部屋から出て行った。
奏ちゃんがスマホを取り出す。
あ、親にメールしてんのか。大丈夫かな。
「奏ちゃん、用事終わったら来て♡」
俺はベッドに寝転んで奏ちゃんを誘う。
「響、なに企んでるの?」
「初めてのお泊りだよ?」
「何もしないよ、静かに寝よ」
「はあっ?!」
「響、声大きい」
奏ちゃんが笑う。
「はあっ?!じゃなくて、下に響のお母さんいるんだから静かに寝よ」
「つまんねぇ…」
「昼間もしたでしょ…」
「俺だけじゃん。奏ちゃんのこと気持ちよくしてあげたいの」
「それはまた今度お願いするよ」
「奏ちゃん、したくないの?俺とえっちなこと」
「したいよ。男だもん」
「じゃあ、しよ?」
「うーん…」
奏ちゃんが悩んでいる。
理性と本能の間で揺れ動いている…。
頑張れ、本能。
「響の可愛い顔で言われると負けそうだけど、今日はダメ」
はい、本能のヘタレめ。
でも可愛いだって…俺のこと。
「俺、そんなに可愛い?」
「あざと可愛い」
「…褒められてる?」
「うん。可愛いから悩んじゃうけど、響のお母さんの手前そんなこと出来ないよ」
そういえば奏ちゃん、元彼とキスしてるとこ相手の親に見られて別れてるんだった…。
「じゃあ、手繋いで寝る」
奏ちゃんが微笑んで頷いた。
大切なものを見るように俺を見つめてくる奏ちゃんの目。
俺の思い違いじゃないといいな。
奏ちゃんが俺のベッドに入ってくる。
「お邪魔します」
「奏ちゃん、俺やっぱ我慢出来ないかも…」
だってこんな近くにいるんだよ?
「響、手つなご」
俺と奏ちゃんは二人で仰向けになって手を繋ぐ。
奏ちゃんの手が温かい。
夏なのに、暑いけど、離したくない。
「奏ちゃん、ギュッてして…」
「うん」
奏ちゃんは俺の背中に手を回し、自分の方に引き寄せた。
奏ちゃんの胸に顔を埋める。
互いの足りない何かを埋め合うように抱きしめ合うと安心した。
空虚な部分に蓋をされるような。
奏ちゃんはどう感じているのかな。
突然、俺のスマホが鳴った。
「誰だよ…」
スマホを見ると、あさ美からメールがきていた。
「あさ美からだわ」
「なんて?」
「夏休み空いてる日にあ…」
「なに?」
夏休み空いてる日に遊べない?
話聞いて欲しい。
とあさ美から送られてきた。
本当にあさ美はただの友達だけど、奏ちゃんに言うのは気まずいわ。
「あ〜何でもない。宿題のことー夏休みの」
「ふーん」
無理があったか?
いや、そもそもそこまであさ美と俺のことなんて気にしてないか。悲しいけど。
「今日、終業式だったのにもう宿題とかするんだ」
「あーあさ美はね、優等生だから…俺は全くやる気しないけどね!」
「じゃあ何で、あさ美ちゃんは響に聞いてくるの?」
鋭い。えっ、追跡がすごいな。どうしたの奏ちゃん。
「うーん、他に聞く友達がいないんじゃん?」
「そんなことないでしょ」
「えっ、奏ちゃん怒ってる?」
「怒ってないよ…」
こうゆう時に、怒ってないよって言う人はだいたい怒ってんだよ。
「ごめんね、奏ちゃんが嫉妬しちゃうといけないと思って嘘ついた」
俺はスマホの文面を奏ちゃんに見せる。
「二人で会うの?」
奏ちゃんの表情は変わらないけど口調が冷たい気がした。
え。これマジ嫉妬!?
「奏ちゃん、嫉妬してんの?」
「だってさぁ、響はあさ美ちゃんに告白されたんでしょ」
「断ったけどね」
「それでも会おうって、まだ響に気持ちがあるんじゃないの?」
えー何、ガチ嫉妬じゃん。
「奏ちゃんが嫌なら会わないよ…それより…ヤキモチ焼いちゃったの?奏ちゃん」
「会っちゃダメとか言う権利は俺に無いよ」
あぁ、怒っていらっしゃる。
嫉妬されるのたまらん。
「奏ちゃん、大好き」
「響…」
奏ちゃんが俺を抱き締めると、俺のシャツの中に手を入れて背中に手を回す。
そして首筋にキスをすると強く吸った。
「奏ちゃん…えっちなことしないんじゃなかったの?」
奏ちゃんは黙って俺にキスをする。
何度も何度も唇を重ねる。
「気が変わった」
そう言った奏ちゃんの瞳からいつもとは違う「男」を感じた。
ハイ、理性が白旗を揚げた。
あさ美をだしに使ったようで申し訳なかったが、奏ちゃんと抱き合える幸福感が罪悪感を消し去っていった。