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彗奈の参加型に出してるメルマとフォイの妄想でーす
自衛おねしゃす
いつも着丈に振る舞っていても実際はただハリボテを固めているだけで
大した信仰心もない癖にあのお方の傍に立つことを許されて
私がこの身に替えてでも手にしたいものを当たり前かのようにもっている”アイツ”
私はそんなアイツのことが嫌いで、憎くて、死んでほしくて…そして……
アイツとの出会いは20年以上前に遡り、
当時10にも満たない私とアイツ、メルマ・ノアは出会いました。
「メルマです。はじめまして」
「…私はフォイ、よろしくね」
教会に元々入信していたアイツの両親と私の両親は顔見知りだったようで
「仲良くしろ」と言われていたのもあって、
アイツとは幼少の頃から一緒に居たのです。
今は只々憎く、控えめに言って死んでほしいアイツも、
子供の頃は多少は可愛げがあったと思います。本当に少しだけですが。
一緒に奉仕活動やお祈りをしたりしていました。
当時教会には私と同年代の子供は少なく、
おまけに居たとしてもほぼ全てが愚かな者だったので
真面目にお祈りや奉仕活動、その度諸々の頼まれ事をこなしていたアイツは、
私の中ではそこそこ評価が高く、一緒に居て心地の良い対象でした。
今思えば有り得ませんがね。あの頃は私も愚かだったのでご了承下さい。
アイツが10歳程度になった頃、私は紅茶の淹れ方を教え始めました。
私が紅茶を淹れるのが好きなのもあったのですが、
教会の方々から褒められる程度には紅茶を淹れるのは昔から上手く
私の数少ない長所のひとつでした。
だからか、何となくアイツに教えてみたくなって、
紅茶を淹れる時は大抵傍で実演して見せていました。
「紅茶を淹れる時は汲みたてのお水を使うんだよ?」
「ポットを温めるために使った水はちゃんと捨てないとね、わかった?」
「茶葉を蒸らしたりする、こういうちょっとした手間が大切なの」
「わかった?」
紅茶に関することを、
お祈りの後に紅茶を飲むという今にも続く私の日課である時間に
何度も何度も繰り返し教えました。
その度にアイツは聞いているのか聞いていないのか曖昧な様子で
「そう」「へぇ」「わかったわ」「なるほどね」
くらいしか応えませんでした。
最低ですよね?
知ってます。
そんなアイツの一番最初の紅茶は
全然ダメで私の人生史上最も最悪な紅茶でした。
濁っているし渋みがあるし風味も悪い。
私が手本として淹れた紅茶と茶葉が一緒なのに。
そして、「え、どうして…?」と、言おうとしました。
ですが
「…ご、ごめんなさい…」
普段の無愛想さとは全く違いオロオロした様子で
私の方を不安げに見つめるアイツのことを見たら、
何故か叱ることが出来ず、ティーカップの中にまだ沢山残っている
渋くて風味も悪い。濁った紅茶を一気に飲んで
カップを置き、ぽかんとした表情のアイツに目をやり
「私の好みでは無いけど、悪くは無いよ」
と、口の中に広がる苦味に耐えながら
微笑みを崩さずに言うのが当時10代の私にとっての精一杯でした。
そんなアイツとは成長するにつれて
いつの日か呼び捨てで呼び合い
すれ違いにより溝や亀裂が生まれていきました
しかし、何よりも大きな理由は
アイツが私の願うものを、全て手に入れていったからです。
私がこの身を焦がす程思っているあのあのお方の傍に立つ権利
尽くすことが出来る権利
名を呼んでいただける権利
視界に入ることの出来る権利
承認される権利
他にも沢山
「私の方が祈って信じているのに」
「私の方が知っているのに」
「私の方が尽くせるのに」
「私の方が…私の方が……」そんな言葉が常に脳を巡り、
いつの日かアイツのことを心の底から殺してやりたいと
消してしまいたい…成り代わりたい。
そう、思っていました。
でも出来ませんでした。
勇者一行と女王。そんなグズ共により
私の全てがこの世から奪われた日
私は断頭台の光景を目にしてその場に崩れこみ、
言葉にならない叫びをあげていました。
正常者から見ては
私のような狂信者は間違いなく異質でした。
まぁ、そう見られるのは別に構いませんでしたし、慣れていました。
誰かと分かち合うよりも一人で絶望していく方が私にはあっていますし。
…しかし、叫んで頭を掻きむしっていた時のほんの一瞬
隣に目をやって、私は少し息を飲みました。
だって、そこには唇を噛み締めて
今にも泣きそうな表情で断頭台を見上げていたアイツがいたのです。
背丈が180cmはある私より少し高く、
それに加え服や立ち振る舞いで一見すると男性的なアイツの中に
妙に、幼い頃の、少女の面影を感じてしまい、
そんなアイツが目を伏せそうになるのを必死に堪えて
あのお方の最期を見届けようとしている姿を見て、
私も、嗚咽を吐きながらもどうにか叫ぶのを止めて
アイツの横顔を少し見たあと、断頭台に目をやり
断頭台に登るあのあのお方の凛々しさや軽やかさ、崇高さ、気高さ
全てを目に焼き付けていた時
ふと、片手に何かが当たり
それがアイツの手だと見ずに気がつくと、
無意識のうちに初めて出会ったあの日のように握ってしまい
それに気が付いたのか否か不明ですが、
ギロチンの刃が落ちる瞬間
アイツが強く握り返してきて、私も唇をかみ締め断頭台から目を離さず
負けじと握り返しました。
勇者一行に連れられ旧都に行く日の前日の夜
私の自室にアイツが尋ねて来て
「紅茶を淹れに来たわ」なんて言って
私の了承を得る前にズカズカと上がり込み、
慣れた手つきでティーカップとポットを用意し始めたのです。
意味がわかりませんよね。私もです。
「何故こんなこんな時間に?」
「普段は近寄りもしない癖に何故?」
「遂に狂ったか?いや、元々か」
そんな事を思いながら不快げに睨みつける私の視線に気付いてか
ポットを温める用のお湯を沸かしながらアイツは私に背を向けながら口を開く
「…フォイ、貴方、昔よく私に紅茶の淹れ方を教えていたわよね」
「…それが何か?」
予熱用のお湯をポットに注ぎながらアイツは話す
「一番最初に私が淹れた紅茶のこと、覚えてるかしら?」
「は?当たり前ですよ。あんな渋くて風味の欠けらも無い紅茶。忘れる方が無理です」
これは事実ですし、実際あの紅茶の味は忘れられないくらい壊滅的でしたので
嘘偽りの無い言葉です。しかし、アイツは一瞬の間をあける
「そんなに酷い紅茶を、一気飲みして「悪くはないよ」と言った癖によく言うわ。」
痛いところをつかれた。
「正直あの時、少しだけ見直したのよ。まぁ今は死んでほしいんだけど」
「一言、いや、存在ごと余計ですね」
「そのまま返すわ」
予熱用のお湯を捨て、茶葉をポットの中に入れて
お湯を勢いよく注ぐアイツの背中を見て、
「随分図体が大きくなったな」と思ったものの
口には出さずただ少しの間見つめたあと
何故か会話を続けなければならないと思い口を開く。
「…で、なんですかいきなり押しかけて。
紅茶を淹れたければ私の部屋じゃなくても良いではないですか」
そう私が言った時
アイツの動きが一瞬止まり、私は少し疑問に思った
動きを取り戻した様子のアイツは何か言葉を探す素振りを見せたものの
途端に諦めた様子になり「リリーベル様にいつも淹れていたのよ。だからこうして誰かに紅茶を淹れないと、気が狂いそうになるの」と、ティーポットを見つめながら言った。
私の中では色々な感情が巡り、アイツに掴みかかって殴りそうになった。
けど、どうしてか身体は動かず掠れた声で「死んでしまえ」としか言えなかった
アイツはその言葉に対して何も返さずに、ポットを見ている。
アイツが紅茶を注ぎ、私の前に置いた。飲めということでしょう。
私はカップを持ち、一口啜る。
フラワリーでほのかに甘みのある温かさが口の中に広がり、嚥下する。
「…悪くはないです」素直な感想だ。
その感想を聞いて、アイツはただ「そう」と応える。
私が紅茶の淹れ方を教えた時と同じ反応で、うざったい。
ため息を吐きそうになると、アイツが遮るように話し始める
「成長したでしょう。私」
「…飲める程度にはなりましたね」
私のことをちらりと見下ろしたあと、アイツは荷物をまとめる
もう帰るのか、と思い少しモヤついて、そんな自分に困惑していると
荷物を持って扉の方に向かう時、アイツが振り返り、
アイツの綺麗な薄い黄金色の瞳に私が映ったと思えばアイツは口を開け
「…紅茶に関しては、フォイ。貴方のお陰だと思ってる。ありがとう」
「ありがとう」の部分だけ妙に小さく告げたかと思えば、
扉を閉めて足早にアイツは立ち去りました。
「…生意気」
部屋の窓辺に座ったまま、
私はアイツの淹れた紅茶を見つめた後また、一口啜る。
すると、先程と同じその味は改めて飲むと気色が悪いくらい
私の淹れる紅茶と似ていて、なのに少しだけ甘みが強くて
アイツらしい紅茶だった。
私は少し紅茶の揺れる水面を眺めたあとカップを置いて、窓から外を見る。
嫌いで、憎くて、死んでほしい。
そんな…アイツにあって
私に無いもの。それが私にはわからないのです。
「聖女様…私は一体、どうすればいいのですか?」
窓から小さく見える月光を浴びる塔を眺めた後
昔の渋くてお世辞にも美味しいとは言えない濁った紅茶から成長した
カップの中に少し残っている深い赤色の紅茶に視線を残し
残りを一気飲みして、紅茶の風味を感じるように目を瞑り
「…流石は私が教えただけありますね、メルマ」
なんて、誰にも聞こえない声を
一人きりの夜の部屋で囁き
今は亡き聖女様と、
今すぐにでも殺してやりたいくらい大嫌いで恨めしくて……
アイツのことを思い出すのです。
せめて、この夜だけは自分に素直でいたい。そんな 心の中で呟きながら。
コメント
2件
完全妄想なんだけどフォイのイメソンは「邪魔」でメルマは「三日月ステップ」だと思う。 あとこの2人は「ミザン」「ダイダイダイダイダイキライ」みたいなどこか愛情を感じさせる曲も良いけどOliver Treeの「Fuck」みたいなバチバチにやり合う感じの曲も良い()