気温が少し下がり爽やかな風が流れ込む季節
しかし、そんな爽やかさとは正反対な
重苦しいギスギスした空気が神聖なる協会のとある一室から漂っていた。
「何故こうして私が貴方如きに紅茶を…」
紅茶を淹れながらフォイが心底不快そうに舌打ちをしながら
誰に言う訳でもなく告げると
メルマはため息混じりに「わかっているわ」とだけ返し
ソファに座って落ち着かない様子で足を組みなおす。
自他ともに認める程超絶不仲なこの2人だ
こうしてごく稀に。本当で異常気象並の信じられない確率だが、
メルマがフォイの紅茶を飲みにフォイの自室に訪れることがあるそうだ
実際、フォイの紅茶の腕はかなり凄く、
紅茶嫌いの人を紅茶好きに落としこんだ経験もあるとかないとか…
コポコポとカップに紅茶を注ぎ、不機嫌そうにメルマの前にカップを置き
「飲んだらさっさと帰ってください。空気が腐ります」
と普段の微笑みを歪めてメルマを睨みながらフォイが言うと
メルマはため息を吐いて「言われなくとも」と言い
カップを持ち上げ紅茶の甘く上品な香りを嗅ぐ。
するとその時、ほんの少し
ミリ単位、いや、それよりももっと小さい単位だろう。
メルマの口角が上がり、少しだけ微笑む。
メルマの冷たく無機質な印象な薄い金色の瞳が少し揺れると
フォイは指先で机を忙しなく叩きながら
「何ニヤニヤしているんですか、気色悪い」と、
常人には気が付かないような変化を一瞬にして察知したのか
睨みつけながら言うと、
メルマは紅茶を飲みながらフォイ絡めを少し逸らし
「ニヤついてなんかいない」とだけ言い紅茶を飲む。
数秒間、無言の時間が続いたが
その沈黙を破ったのは意外にもメルマだった。
彼女は飲み干した紅茶のカップを机に置くと、
フォイの顔を見ずにただ「美味しい」とだけ言う。
フォイはそれに対してうんともすんとも言わずに壁にもたれかかったまま
不機嫌そうに、しかし何処か複雑そうな瞳を向けたまま黙っており
数回瞬きをした後に「次はお茶菓子くらい持ってきたらどうです?不躾ですね。」とだけ言って、ティーポットを片付ける。
メルマはそんなフォイを見ながら、
少しなにか言いたげに口を開くが結局声を出す前に黙りこみ
目線を泳がせて口を噤んだりを繰り返したあと
「昔、よく食べていたものを持ってくるわ」
と、珍しく(フォイに対しての)優しさが微かに感じられる声で言い
部屋を後にする。
そんなメルマを見る為に振り返ったりすることもせず
フォイはただ、紅茶を淹れたポットの手入れをしている。
彼女に普段から張り付いている仮面のような微笑みが、
微かに昔の純粋差が残っているた頃の
そんな面影を感じさせるのは偶然だろうか。
コメント
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あれお前ら仲良くね????気の所為????