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燈華ーー!!😭めちゃ悲しい⋯次が気になるな⋯🤔
第四章:運命の太鼓
儀式の前日。町には、重く沈んだ空気が漂っていた。
太鼓は夜明け前から鳴り響き、それは祝福ではなく──別れを告げる音。
キヨは屋敷の廊下を走っていた。燈華の部屋へと。
胸が苦しい。昨日、家臣達の密談を聞いてしまった。
「紅月様は、明日で最後だ」「この町はあのお方の命で護られてきた」「覚悟はとっくに…」
聞きたくなかった。信じたくなかった。
襖を開けると、燈華が一人で座っていた。
彼女は白い儀式の衣を身にまとい、淡い笑みを浮かべていた。
「来てはいけませんでしたのに」
静かな声。
「ふざけるなよ…なんで言わないんだよ」
声が震える。
「命を捧げるとか…そんなの…!」
燈華はそっとキヨの手を取る。
「私は、この町と共に生き、この町と共に終わる者。それが生まれた時からの定めでした」
「定めなんてクソくらえだろ!」
叫んだ瞬間、燈華の瞳が揺れた。
「俺を助けたことだって定めじゃねぇだろ!?あんたは自分で俺を救ったんだ!自分の意思で…!」
「キヨ様…」
燈華は一瞬、涙をこぼし──優しく笑った。
「あなたに出会えたから。もう怖くありません」
「違うだろ…違う燈華。俺は…まだ何も返せてない」
燈華は手を離し、距離を取る。
「もう行かなければ。私は、皆の希望ですから」
そして襖の向こうへ進む──その背中は小さくて今にも壊れてしまいそうで。
「燈華!!」
キヨは追いかけようとした。
だが、家臣達に押さえつけられる。
「離せよ!燈華を…!」
怒鳴り声が屋敷に響く。
燈華は立ち止まり、振り返る。
「ありがとう、キヨ様」
まるで最後のように。全てを諦めた笑顔で。
「さようなら」
次の瞬間、外の太鼓が一段と強く鳴り響いた。
まもなく始まる。
命を代価に加護を与える、宿命の儀式が――。