あれから自分の部屋に籠り、2人の会話を思い出す。
私が来る前、きっと何かがあったってことだよね。劉磨さんが口にしていた柚さん…以前ここにいた女性の名前だと思う。抱きつくだなんて…きっとそれほどまでに仲が良かったんだ。
いきなり抱きつかれたのは驚いた。でも、一番気になるのは彼の言葉…
≪どこ行ってたんだよ。探したんだぞ…。≫
ここに来た女性は命を落としてしまったと悠夜さんが言っていた。きっと、彼女も…
コンコンッ
「はい!」
「私です。先ほど渡し忘れた教科書と鞄を届けに来ました。」
「いま、開けます。」
ガチャ
「わざわざ届けていただいてありがとうございます。」
「貴女が私を気遣う必要はありません。」
「はい…。」
悠夜さんから教科書と鞄を受け取る。
そうだ…もしかしたら悠夜さんなら何か知っているかもしれない…柚さんについて。
「あの、悠夜さん…!」
「何ですか?」
「私が来る前にここにいた柚さん…ご存知ですか?」
「え…?」
彼が顔をしかめた。聞いてはいけないことだったのか、静かな時間が過ぎていく。
「誰から聞きましたか?その名前…。」
みるみるうちに彼の目つきが鋭くなっていく。
「さっき、劉磨さんに柚と呼ばれて…もしかしたら前にここにいた人と私を間違えたのではないかと…それで。」
「そうですか…貴女は知らなくていいことですよ。では荷物はお渡ししましたので私は戻ります。」
そういって彼は部屋を出て行ってしまった。
でも、これで確信した。何かあったんだ…私が来る前に。柚さんに関する何かが…
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