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「 木洩れ日の奥で 」
もりょき
ふらつく足取りで、元貴はようやく保健室のベッドにたどり着いた。
朝から微熱はあった。でもそれを言えば また心配される。
涼架にまで、迷惑をかけたくなかった。
…でも、限界だったんだろう。
「 う、ぅっ……. 」
呼吸が浅くなる。
吐き気が込み上げ、体の芯がぐらつくような倦怠感。
布団の中で小さく丸まりながら 元貴は唇を噛んだ。
「 たいじょうぶ…..、僕は… 」
弱音を吐くことは、許されないと思っていた。
誰かに頼るなんて してはいけない事だと思っていた。
でもその時__
「 元貴 !! 」
ドアが勢いよく開いた。
息を切らせて、涼架が飛び込んできた。
先生に保健室に運ばれたと聞いた瞬間、授業を飛び出してきたのだ。
「 …..涼、ちゃ…….? 」
「 大丈夫!?熱は? 苦しい ? 」
焦るように、でも触れようとはせず
涼架はそっと元貴の顔を覗き込む。
「 大丈夫じゃ、ない…けど……. 」
絞り出すような声
それでも元貴はかすかに笑った。
「 …..来てくれて、ありがとう 」
「 来るに決まってるじゃん… 」
涼架は手を伸ばしかけて けれど止めた
代わりに、自分の手を元貴のすぐ近くの布団の上に置いた。
「 …..触れてもいい? 」
一瞬、元貴の体がびくっと震えた。
でもその後 ゆっくりと首を縦に振った。
そっと涼架の指が、元貴の手に重なる。
ひどく冷たい指先だった。
けれど それ以上にあたたかかった。
「 僕、ほんと心配で….. 」
震える声で、涼架が続ける。
「 元貴がまた自分を責めてるんじゃないかって思って…..っ 」
「 責めてるよ。….. 僕、いつも涼ちゃんに迷惑かけてばかりだし….. 」
「 迷惑なんかじゃない!! 」
感情が溢れるように、涼架が声を上げた。
「 僕が傍に居たいって思ってるんだ! それが迷惑なわけ 無いだろ!! 」
沈黙が落ちた。
静かな保健室に、2人の呼吸だけが響いていた。
それでも元貴の手はもう震えていなかった。
「 …….こんな僕でも、そばに居てくれるの? 」
「 うん。ずっと居る。離れない。どんなに体調を崩しても 嘔吐しても 泣いても…..全部、受け止める。 」
「 …..じゃあ 」
涙が一筋、頬に伝う。
「 もう少しだけ、頼っても…….いい? 」
「 もちろん 」
そう言って、元貴の手を優しく でもしっかりと握った。
この手を、もう離さない。____
#4.「 この手を離さない 」
ひぇー、これいつまで続くでしょうかね…。
多分10何話かくらいまでは続きそうです。
コメント
2件
えぇ、まだ4話なのにめっちゃ感動🥺 ほんとにこのお話でもりょき克服しちゃったかも…笑、 もう一個一個の表現が心に響くんですけど…😭 なんでそんな語彙力高いなのぉ😭😭 続き楽しみにしてる!!毎回長文コメになっちゃってごめんね💦