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「 木洩れ日の奥で 」

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「 木洩れ日の奥で 」

5 - #4.「 この手を離さない 」

♥

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2025年08月10日

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「 木洩れ日の奥で 」


もりょき



ふらつく足取りで、元貴はようやく保健室のベッドにたどり着いた。

朝から微熱はあった。でもそれを言えば また心配される。

涼架にまで、迷惑をかけたくなかった。

…でも、限界だったんだろう。


「 う、ぅっ……. 」


呼吸が浅くなる。

吐き気が込み上げ、体の芯がぐらつくような倦怠感。

布団の中で小さく丸まりながら 元貴は唇を噛んだ。


「 たいじょうぶ…..、僕は… 」


弱音を吐くことは、許されないと思っていた。

誰かに頼るなんて してはいけない事だと思っていた。

でもその時__


「 元貴 !! 」


ドアが勢いよく開いた。

息を切らせて、涼架が飛び込んできた。

先生に保健室に運ばれたと聞いた瞬間、授業を飛び出してきたのだ。


「 …..涼、ちゃ…….? 」


「 大丈夫!?熱は? 苦しい ? 」


焦るように、でも触れようとはせず

涼架はそっと元貴の顔を覗き込む。


「 大丈夫じゃ、ない…けど……. 」


絞り出すような声

それでも元貴はかすかに笑った。


「 …..来てくれて、ありがとう 」


「 来るに決まってるじゃん… 」


涼架は手を伸ばしかけて けれど止めた

代わりに、自分の手を元貴のすぐ近くの布団の上に置いた。


「 …..触れてもいい? 」


一瞬、元貴の体がびくっと震えた。

でもその後 ゆっくりと首を縦に振った。

そっと涼架の指が、元貴の手に重なる。

ひどく冷たい指先だった。

けれど それ以上にあたたかかった。


「 僕、ほんと心配で….. 」


震える声で、涼架が続ける。


「 元貴がまた自分を責めてるんじゃないかって思って…..っ 」


「 責めてるよ。….. 僕、いつも涼ちゃんに迷惑かけてばかりだし….. 」


「 迷惑なんかじゃない!! 」


感情が溢れるように、涼架が声を上げた。


「 僕が傍に居たいって思ってるんだ! それが迷惑なわけ 無いだろ!! 」


沈黙が落ちた。

静かな保健室に、2人の呼吸だけが響いていた。

それでも元貴の手はもう震えていなかった。


「 …….こんな僕でも、そばに居てくれるの?  」


「 うん。ずっと居る。離れない。どんなに体調を崩しても 嘔吐しても 泣いても…..全部、受け止める。 」


「 …..じゃあ 」


涙が一筋、頬に伝う。


「 もう少しだけ、頼っても…….いい? 」


「 もちろん 」


そう言って、元貴の手を優しく でもしっかりと握った。

この手を、もう離さない。____

#4.「 この手を離さない 」



ひぇー、これいつまで続くでしょうかね…。

多分10何話かくらいまでは続きそうです。


「 木洩れ日の奥で 」

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