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手を繋いだまま、スクリーンを見つめる。映像の中で、三島先輩が音楽室の前で立ち止まっている。
「白鳥さんの演奏、また聴きに来たんですね」
後ろから声をかけたのは生徒会の書記、佐々木さん。
「違う。これは生徒会の…」
その時だった。俺たちが送った赤い光が三島先輩を包み込む。
「…いや、その通りです」
三島先輩の表情が柔らかくなる。
「白鳥さんの演奏には、心を奪われてしまうんです。フルートの音色が、まるで天使の声のように…」
普段は絶対に口にしないような素直な言葉。赤い糸の力で、本心が零れ出ている。
「効いてる…!」
沙耶が小さく声を上げた。その時、映像が音楽室の中に切り替わる。
白鳥先輩は演奏の手を止め、独り言を呟いていた。
「もう、あの堅物。どうして素直じゃないのよ」
そこに俺たちの赤い光が届く。
「…ああ、でも、それも三島くんらしいのよね。真面目で、優しくて、ちょっとドジで」
照れたような笑みを浮かべる白鳥先輩。
「私、こんなに三島くんのこと考えてたのね」
「おー、これは効果てきめん」
俺が呟くと、映像はまた切り替わった。今度は翌日の様子。
昼休み、三島先輩が音楽室の前で深いため息をついている。と、
「あら、珍しいわね。昼休みに生徒会長が音楽室に?」
後ろから声をかけてきたのは白鳥先輩だった。
「白鳥さん…あの、実は」
「ん?」
「僕の気持ちを、話してもいいですか?」
白鳥先輩は目を丸くした。いつもの三島先輩なら、絶対に言い出せない言葉のはず。
「白鳥さんの演奏には、いつも心を奪われています。フルートの音が、まるで天使の…いや、白鳥さんご本人が、僕にとっては天使のような…」
「ちょ、ちょっと、三島くん?」
白鳥先輩の頬が赤くなっていく。
「好きです。白鳥さんのことが」
「…!」
廊下に静寂が流れる。
「もう…どうしてそんな、急に」
白鳥先輩が俯く。
「だって、私のことを天使なんて…その、嬉しいじゃない」
「え?」
「私も、三島くんのこと…好き、よ」
照れくさそうに告白する白鳥先輩。その瞬間、二人の間に赤い光が満ちる。
『カップル成立です。おめでとうございます』
「やったー!」
思わず沙耶が飛び上がって喜ぶ。その勢いで、また手を強く握られた。今度は、俺も自然と握り返していた。
「二組目、成功だね」
「うん!予想以上にトントン拍子かも」
沙耶の笑顔を見ていると、なんだか胸が温かくなる。
「あのさ」
「うん?」
「手、まだ繋いでるよ?」
「あ…」
慌てて手を離す。けど、なんだか名残惜しい感じがした。
「ごめん。癖になりそう」
「え?」
「あ、いや、その…なんでもない」
慌てて誤魔化す。沙耶の方も、何か言いかけて止めたような表情。
そんな気まずい空気の中、スクリーンが再び光を放つ。
『残り時間は40時間です。最後のカップルをお見せしましょう』
映し出された映像に、俺たちは息を呑んだ。
「これは…」
映っていたのは、見覚えのある学校の屋上。そこには一人の男子生徒がいた。
「この後ろ姿…」
沙耶の声が震える。そりゃそうだ。だって、映っているのは―
「俺だ」