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攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。
『君のせい〈上〉』の続き。
ご本人様たちとは全くの無関係。
ご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですがたくさんの愛はある、たぶん。
🐉×モブ女の描写がありますので注意。
最後にはハッピーエンド予定なのでこのモブ子たちは噛ませ犬。ごめんね。
想像以上に2人を乙女思考にしてしまってはいる。ごめんよ。
覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!
side.タプ
「お前のせいだよ」
俺が今、こんな想いをしてるのは。
「そういえばジヨンヒョン、最近彼女とはどうですか?」
もう何度目か分からない、空になったグラスを置いたとき、隣からそんな声が聞こえてきた。テソンは普段あまり自分のことを話さないのに、人から話を聞き出すのは上手い。俺もそう、彼には自然となんでも話してしまうのだ。
彼への想いを除いては。
「あー…この前別れた」
またか、と思いながらメニューを眺める。次は何を飲もうか。書かれている文字を必死に目で辿るのに、全く脳に届かない。それは彼たちの会話のせい。なんでジヨンがフラれるのか、その理由を勝手に考え勝手に盛り上がる3人。
(なんで、か…)
なんで、俺はこんな会話を聞かされなきゃならないのか。なんで俺は、こんな思いをしなければならないのか。考えたって仕方ないことが頭をぐるぐると巡った。あの日からそうだ、俺はそればかりを考えている。
ふと視線を感じてそちらを見る。その先にはこちらを見るジヨンの顔があって、俺はまたメニューに目を落とした。
(…わかってんのかよ)
俺がこんな思いをしているのは、お前のせいだってこと。
それは蒸し暑い日だった。8月も終わりに近いというのに、外を歩けば汗が滲むほどには気温が高い日だった。
探していた人物を見つけて軽く走る。暑そうにTシャツの襟元をパタパタさせながら歩く彼の背中に声をかけた。
「ジヨン!」
振り返る彼の額には少し汗が滲んでいる。
「なに?」
「これ、借りてたCD。返そうと思って」
「ああ、どうだった?」
「すげーよかった。特に2番目に入ってた曲の…」
彼とはよく聴く音楽の系統が似ていた。たまにこうしてCDの貸し借りをしては、感想を述べ合う。俺はそれを密かに楽しみにしていた。
「あ、そういえば……はい、これ」
言ってから、自然に言えたか不安になった。どのタイミングで渡そうかと思っていた誕生日プレゼント。差し出された小さな箱を受け取りもせず見つめる彼にそわそわする。誤魔化すように、持っている手の人差し指でトントンと箱を叩いた。
「なに、わざわざ買ってくれたの?」
「おう。なににしようかなーって考えてたときに偶然見つけてさ。すげージヨンに似合いそうって思って」
「うわーなんだろ。開けていい?」
まさか目の前で開けられるとは思わず少したじろぐ。そんな俺を気にもとめずにジヨンは箱を開けた。
「…ネックレスだ!」
シンプルなデザイン。シルバーの細めのチェーンに、小さなペンダントトップ。そこには綺麗なピンクの石が埋め込まれていた。
「なにこれ、すごい綺麗!かっこいい!」
「だろ?普段のジヨンの服の系統とか考えると似合うかなって。デザイン自体はシンプルだからどの服にも合いそうだし」
「え、そんなに考えてくれたの?」
心臓が跳ねた。しまった、と思った。少し喋りすぎたか?
「…当たり前だろ?プレゼントってそういうもんじゃん」
そんなの嘘。本当はすごい考えながら選んだ。本当は今、すごい緊張している。必死に顔の筋肉を動かさないように意識し、平穏を装った表情を心がけたが、ちゃんとできていただろうか。
「……ありがとう。すごい嬉しい」
正直に言おう。俺は彼のことが密かに気になっていた。目を細めて嬉しそうに笑う彼の顔に鼓動が速くなるほどには。
「大事にする」
それ、どういう意味で言ってんの?特に意味はないか。人に何かを貰ったら、そりゃそう返すよな。意識してるのなんて俺ばっかだ。
お前はわからないだろうけどね。
家に帰ったら力が抜けた。思わず大きなため息が漏れる。鏡に写った俺の耳は少し赤くなっていてそれがたまらなく恥ずかしかった。
ポケットに入れていた携帯が震える。
『本当にありがとう!』
そんな文面と共に添付されていた写真。嬉しそうにピースをしている彼の首元には、俺が渡したネックレス。
返信してから顔を上げると、緩んだ顔をした自分と目が合う。頬を軽く叩いてから、ベッドに倒れ込んでしばらく枕に顔を押し付けた。
これを見つけたのは偶然だった。休日にふらふらと特に目的もなくアクセサリーショップに入った際、これが目に止まったのだ。と同時に、ジヨンの顔が浮かんだ。彼に似合いそうだと思った。デザイン自体はシンプルだが、ペンダントトップのピンクがとても綺麗で。これをつけたジヨンを見たいと思ったら、気付けば購入していた。
「はぁー…変な顔してなかったかな、俺」
ゴロン、と仰向けに転がり直して、天井を見つめながら呟く。ちょうどこの前誕生日だったから、それを口実に自然と渡したつもりだったが、ちゃんと振る舞えていただろうか。そんなの後付けで買うときは全く意識してなかったが。ただただ、ジヨンにつけてほしいと思っただけで。
「あーーもう、」
これからジヨンがあのネックレスをつけてる姿を見たら、思わず頬が緩んでしまいそうで怖かった。
「タプヒョン!」
番組の撮影が終わり、楽屋についたタイミングでジヨンに声をかけられた。
「ちょっと話したいことがあって…時間、いいかな」
少し緊張した面持ちの彼に、思わずこちらも緊張する。先に用事のあったテソンに話しながらも、気持ちはジヨンの方向に向いてしまっていた。
(俺、なんかしたっけかな?)
楽屋を出ていく背中をチラッと見ながら、なんだかそわそわする。いつもならさっさと着替えて帰るのだが、ジヨンを待つため椅子に座った。
「ジヨンヒョン、どこいったか分かります?ちょっと聞きたいことがあったんですけど…」
「ジヨン?多分トイレに行ったと思うけど……あれ?」
スンリに声をかけられたヨンベが、彼の耳を触る。
「スンリこんなピアスもってたっけ?買ったの?」
「お!よく気づいてくれましたねヒョン!」
スンリは所謂ドヤ顔を披露しながら、右耳のピアスをヨンベとテソンに見せびらかした。
「これ、タプヒョンに買ってもらったんです〜!」
「え?そーなの?」
「ね、タプヒョン!」
「いやそうだが…」
スンリが、これが欲しいんだと携帯を見せてきたのはついこの前。画面に写るゴールドのピアス。彼はいつも俺に絡んでくることはあまり少ないくせに、こういったときは末っ子を活かして甘えてくる。みんなそんなスンリが可愛くて結局言うことを聞いてしまうのだが、まあ俺もそのうちの一人だった。
「買ってくれたっていうか…まあ買ったのは本当だけど、お前が買え買えうるさかったんだろ?」
「だって俺誕生日なにも貰ってなかったんですもん!たまにはいいでしょ!」
「誕生日まだ先だろ…喜んでくれたならいいけどよ」
嬉しそうに自慢するスンリに呆れながら、俺は小さく息を吐いた。たしかに彼にピアスをあげたが、それは俺が選んだり見つけたのではなく、強請られて買ったもの。そのことに対して特になにも思わないのだが、逆にジヨンにあげたときを思い出してなんだか恥ずかしくなってきた。あれは自分から見つけ、そして彼にあげたいと思って選んで買った。これをつけた彼を想像しながら。
(なんか…改めて考えるとすごい恥ずかしい、な…?)
別にスンリが嫌いとかそういうことじゃない。ヨンベもテソンもスンリも本当の家族だと思って好きだから。
だけど、ジヨンに対してはどうだろうか。それを考えると、なんだか恥ずかしくなってしまうのが答えなのか。
「てかスンリ、ジヨンヒョンのこと探してたんじゃないの?」
「あ!そうでした!ちょっとトイレ見てきます!」
騒がしく楽屋を出ていくスンリを見ていると、ふとテーブルに置いてあったカバンが目に入った。乱雑に置かれたそれは口があいていて、なんとなく中身が見えてしまった。そこにある小さい箱に思わずドキッとする。リボンで飾り付けてあるそれは、明らかに誰かにあげるもので。
(もしかして……)
そんなまさか。とは思うが、期待してしまう。
(俺に、かな…?)
正直に言おう。俺は彼のことが好きになっていた。これが俺あてへのプレゼントなんじゃないかと期待してしまうほどには。
お前は知らないだろうけどね。
ガチャ、とドアがあいてジヨンが入ってくる。なかなか戻らないなと思って心配してたが、なんだかすごく苦しい顔をしているのは気のせいか。
「ジヨン、大丈夫か…?」
「え?ああ、うん、大丈夫」
「ならいいが……それで、話ってなんだ?」
「あー……、」
彼はそう言いながら視線を下に落とした。なにか言おうと口を開いたり閉じたりしていたが、やがてふっと笑うと顔をあげた。
「……ごめん、忘れちゃった」
「ぇ…?ああ、そうなの、か…」
「待っててくれたのにごめんね。思い出したらまた話す」
嘘。じゃあなんでそんなに苦しそうな顔してるの。なんでそんなに泣きそうな顔しながら笑うの。
「帰ろっか」
じゃああの箱は、一体なんなの?
結局あのあと、ジヨンとは普通に別れて帰宅した。期待してしまっていただけに、少しガッカリした。ガッカリする資格なんてないのに。
そんなことがあった時期から、ジヨンの女性関係の話が浮上し始めた。今までそんなことほとんどなかった彼だったが、まるで箍が外れたように、誰かと付き合っては別れて、また付き合ってまた別れて、を繰り返していた。誰かがその話を聞く度に相手が変わっていて、またその話をしたころにはすでに別れている。
「………なにしてんだよ、ばか」
一人ベッドに転がりながら呟く。聞きたくないのに耳に入ってくる彼の恋愛の話にはうんざりだった。どこにぶつけていいかわからない苛立ちや怒りが心の中をぐるぐると渦巻いている。
「誰でもいいのかよ……誰でもいいなら、」
正直に言おう。俺は彼のことがかなり好きになっていた。胸が締め付けられるほどの切なさに、泣きたくなるほどには。
「ばーか。ばかジヨン」
なにしてんだよ。付き合ったと思ったらすぐ別れて、また違う人と付き合って。好きなんじゃないのかよ。それとも誰でもいいからそんなこと繰り返してんのかよ。誰でもいいなら俺でもいいだろ。
「お前のせいだよ」
今俺がこんなに苦しい思いをしてるのも。聞きたくもないお前の恋愛聞かされて嫌な気分になってるのも。全部全部。
「…………ちがうな」
違う。本当は違う。悪いのは俺。バカなのは俺。彼に本当の気持ちを言う勇気もないくせに、勝手に期待して勝手に裏切られた気になって、勝手に落ち込んでる。全部全部。
「俺のせいだ」
お前のせいじゃない。全部、俺が臆病者のせいだ。