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ヴィシー、、、!ナチにトラウマ植え付けられて絵が描けなくなったのか、、、可哀想だけどやっぱ愛着湧いちゃう、、、 次は何に挑戦するんかな?案外生け花とか似合いそうだし、、、 語彙力無さすぎてヤバい()とにかく好きです☆
( ᷄ᾥ ᷅ )ウグ ちょやばぁい 話が泣けてくる…
どうも皆様、サカナです!!!!
聞いてください、前回のヴィシーちゃんを絵にしてくださった方がおりました!!!!
ほぃっ・3号 というお名前の神絵師さんなのですが、その上いつもコメントをくださりまして…!!
確か以前も描いてくださっていました…よね?自惚れでなければライヒちゃんを…
最近神小説まで書かれることが判明いたしましたので、私の作品のコメント欄からでも探してください
あの方の絵柄ものごっつ刺さるんです、むしろ探し出しなさいと言いたいほどですよ!
あ、今回は「趣味」の続きです
「結局、僕は人の手を借りないと何もできないのでしょうか…」
食事はできる、散歩もできる、服を着替えたり、少しずつでも何かを運んだりすることもできる。
だが、あくまで自分のことだけだ。
自分のことしかできない使用人など、木偶の坊も同然。
拾ってもらった恩を返すことなく、また捨てられて、今度こそ死んでしまうのではないか。
動かない時間は嫌なことを考えてしまう。
ヴィシーはそんな思いでいっぱいになり、とにかく色々なことに挑戦しようと決めた。
「できることを増やしたい、ですか」
「はい…拾っていただいた恩があるというのに、仕事もろくにできず、ご迷惑をおかけしてしまっているので…せめて、自室で動かない時間を減らしたいと思ったのです…」
「ふむ…なるほど。その言葉、あなたの片割れにも聞かせてやりたいですね。私があなたを拾ったのはただの自己満足ですし、満足に動ける体ではないことも重々承知しています」
そう言ってイギリスは立ち上がり、ヴィシーの片手を取る。
「私はあなたが死ぬのを見ていられなかった、だからこの屋敷に招いただけなんですよ。仕事ができないからなんです?元々ウェールズたちで事足りていましたから、無理することはないのですよ」
「で、ですが、ただいるだけでは…」
「じっとしているのが嫌なら、仕事もいいですが、何か没頭できる趣味を探しましょう。料理とかいかがですか?あのスコーン、とても美味しかったですよ」
「ありがとうございます…でもあれは、スコットランドさんがいたから作れたものです。僕1人では、何もできません…」
「良いではないですか。彼はいつも昼間から飲んだくれてはイングランドと喧嘩しますからね…あなたと料理をしている方が有意義です」
柔く微笑むイギリスの言葉を反芻した。
ナチスの元にいた頃。
それはヴィシーのトラウマである。
彼の玩具として様々なことを無理強いさせられ、期待に応えられなければ無惨に捨てられてしまう。
とにかく動き続けていたあの頃と比べ、この屋敷ではなんと穏やかな日々を過ごせているのだろうか。
無意識のうちに「更に働かねば」と思い込んでいたが、もっと肩の力を抜いた方が良かったのかもしれない。
「でも、わざわざ浮浪しがちなあの人を探しに行くのは危ないですね。そうなると、やはり1人でできる趣味を探す方が良いのでしょうか…」
「…趣味…」
「ええ、料理以外でも、何かしたいことはありますか?」
ヴィシーの頭に、目の前で燃やされてしまった自身が描いた絵の数々が浮かんだ。
「…絵を、描いてみたいです」
一度全てを焼き払われて、その後に機会なんてものは一切なかった絵画とのふれあい。
筆を掴んで、大きなキャンパスを彩り、自分の世界を表現する。
無理矢理折られた筆を今、取ろうではないか。
ほとんど初めて自分を出したヴィシーに対し、イギリスは何故か子の成長を見たような気分になった。
「ほー、だからジュが呼ばれたんだね?久しぶり!ヴィシー!」
イギリスたちの屋敷に、絵について詳しい人物はいない。
貴族ではあるので鑑賞はできるのだが、描き方も画材もよく知っているわけではないのだ。
ヴィシーとて、描こうと思ったのすら何十年ぶりのこと。
何を用意したらいいのかはわかっても、今売られている絵の具の発色や筆の心地は何一つ知らない。
となれば、きちんとした画家であるフランスを呼ぼうということになったのだ。
「お久しぶりです、自由」
「急に画材持って来いなんて言われるもんだから、びっくりしちゃったよ。ようやくモデルになってくれる気になったのかと思ったのに」
「残念でしたね、私はそんなに安くはありませんので」
くすくすと嘲笑うイギリスに先程までの頼もしさはなく、忘れていたが同い年の青年だということを思い出す。
「まあいいよ、またヴィシーと絵が描けるならね」
パチッとウインクされて、別れる前と様子の変わらない自由の姿に安堵した。
「ヴィシーが描くってなら、やっぱり風景画かい?」
「そのつもりです」
「でしたら、庭で描かれてはいかがでしょう?雨も止んでいますし、たまには外もいいものですよ」
「そりゃいいね!こんな陰湿野郎がいる屋敷の中じゃ、気も滅入るだろ?外の空気吸って、綺麗な花でも描いてこよう!」
「あなたはいつも一言多いですね。少しはヴィシーを見習っては?」
「そういう君こそ、ヴィシーの素直さを見習えば?わざわざ遠回しに言ってくるの、本当陰湿って感じ!」
相変わらず仲が悪いようだが、これは彼らのコミュニケーションであることをヴィシーは知っている。
お互いに素直でなく、余計な一言で喧嘩になっても、気がつけば仲良く笑い合っているのだ。
これは誰も間に入れるようなものでなく、幾度となく喧嘩になっては仲直りして、そうして築いてきた2人の間柄。
別に本気の喧嘩をしているわけではないので、ヴィシーもその他の国々も黙って見守っている。
「はぁ…ったく。行こう、ヴィシー!こんなやつ放っといて、いっぱい描こ!」
ふん!と子供のようにイギリスにそっぽを向いて、自由はヴィシーの手を引いて庭へ向かう。
苦笑しながらついて行くものの、自由は自由なりにヴィシーのことを気遣っていることくらいわかっているのだ。
下手な心配なんてされず、ありのままで接してくれることが、ヴィシーはとても嬉しかった。
丁寧に整えられた芝生を踏み、新鮮な空気が肺を満たす。
「ん〜♪良い天気!ここにしちゃあ、絶好のお絵描き日和なんじゃないの?」
普段降っている雨が止めば、そこにはただ美しい景色が広がっている。
「久々に描きますが…上手く、できるでしょうか…」
「大丈夫だって!ジュは、どんなヴィシーの絵も好きだよ。スコットと北アイルから聞いてたんだよ、君のこと」
「スコットランドさんたちから?」
「そうさ、無気力なのに何かに焦っているような様子だって言われてて、すごく 不安だった。2人も悩んでたみたいだし、イギリスやイングランドに虐待されてたらどうしようって」
キャンパスを置いたり、絵の具を取り出したり、自由は準備をしながら話をしてくれた。
正直言えば、北アイルランドやスコットランドが普段何を考えているのか、よくわからない。
2人とも望んで屋敷にいるわけではないし、その上家事に雑事にと大変な仕事もあり、更には隻腕で介助が必要な自分まで。
嫌われていたら…と不安だったが、まさか心配されているとは思いもよらなかった。
「でもよかった!また絵が描きたいって言えるくらい元気になってくれて!」
突然ぎゅーっと抱きしめられ、危うく転倒しそうになる。
自由は随分と背が伸びたらしい、以前は同じくらいだったはずなのに、今では自由の方が高くなっていた。
旧国になったその時から、自分の体は何も変わっていない。
でも、こうして2人で抱き合って、絵が描きたいと思えた。
体は変わっていなくても、ちゃんと変われている証だ。
「じ、自由、少し苦しいです…」
「んふふ、ごめんね」
離れていく熱に寂しさを覚える。
また遠くに行ってしまいそうで、けれど確かにそこにいてくれた。
にこにこと微笑む自由に見守られながら、何十年ぶりかに絵を描く。
慣れない左手、懐かしい感覚。
太陽に照らされた薔薇を正確に表し、ヴィシーに見える世界をキャンパスに閉じ込めていった。
今目の前にあるものを、ほんの少し、一部分でも残すために。
一陣の風が吹く。
草木がサラサラと音を立て、穏やかな午後は色彩豊かに過ぎていった。
何時間かが経過し、休みなく動いていた腕がようやく停止する。
「んんーーッ…ッはぁ…」
体を伸ばして息を吐き、筆を置いた。
「あ、描き終わった?」
「はい…まだ手直しはありますが、大方」
「どれどれ〜…おお!やっぱり上手いね、ヴィシーは。ジュは風景画より人物画の方が得意だからなぁ…」
「…でもやっぱり、何かが違います」
「?何かって、どういうこと?綺麗に描けてるじゃん」
「ありがとうございます。でも、やっぱり違うんです」
ヴィシーは立ち上がり、震える手で空っぽの右袖を掴む。
感触は布だけで、あったはずのそれはどこにもない。
「…以前、絵を燃やされた時のあの感覚が、忘れられません。僕から右腕を奪い取ったあの人は、いつも顔だけはニコニコしていて…なのに、僕たちの絵を焼くときは真顔でした。灰も残さないとでも言い出しそうなあの顔が、脳裏に残ってしまっているんです…また奪われてしまいそうで、楽しいのに、怖い…」
「ヴィシー…」
「ごめんなさい、自由。折角あなたの画材をお借りしたのに…」
「…そんなこといいの、これは君の趣味を見つけるための手段の一つ。絵だけか全てじゃないし、あのレイシストに植え付けられた恐怖心は、中々消えるものじゃないよね」
微かに震えるヴィシーを抱きしめ、自由は力強く、優しく囁いた。
「ジュたちは無理をさせてまで君に何かをさせようとは思ってない。休んだっていいし、ジュやスコットや北アイル、ちょっと嫌だけどイングランドにイギリスたちに甘えたっていい。ただ、君らしく生きてほしいんだ」
弱々しく左腕を伸ばし、自由の背に手を回して抱き返す。
その後、自由か帰る前に庭の絵は完成させたものの、また絵を描きたいという意思は薄くなってしまったようだ。
描きあげた絵は自由に托し、ヴィシーは丁寧に自由を見送る。
破損すれば残らず、絵に関してトラウマを抱えていると判明したヴィシーは、またできることを考えるのだった。